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【取材file】逗子市の療育事業とこどもセクションを教育委員会に一元化した構造改革に注目!0歳から18歳まで切れ目なくサポートする『こども発達支援センター』が新スタート!/逗子市療育教育総合センター


今回取材させていただいたのは、逗子市の療育・教育事業の中心となる施設、『逗子市療育教育総合センター』。

もともと市の青少年会館だったというこの建物。3階建てのうち1・2階を大幅リフォームし、2016年12月に新しく『こども発達支援センター』がスタートしました。

現在は

『こども発達支援センター』(1-2F)
1F「ひなた」
・0~18歳までの療育相談
2F「くろーばー」
・児童発達支援
・放課後等デイサービス

教育研究相談センター』(3F)
・教育相談
・適応指導教室「なぎさ」
・市民講座や教員研修

この2本柱で運営しています。

逗子市ならではの療育事業の試みに私たちも興味深々!見学の様子とともにご覧ください。

2016年に支援対象を18歳まで拡大!新しくなった『こども発達支援センター』を見学


▲エントランスは2重の自動扉。開ボタンはお子さんの手が届きにくい位置に。


▲すっきりと広い下駄箱。1つ目の自動扉を入ってすぐ、ここでスリッパに履き替えます。

こども発達支援センター 療育相談部門『ひなた』[1F]

2016(H28)年4月から市の直営に!0歳から18歳まで切れ目のないサポートを実現

2015(H27)年度までは、社会福祉協議会に全面委託していた療育事業。主に学齢前までの子どもが対象でしたが、小学校就学後も学校と連携し継続してサポートができるよう、対象を18歳まで拡大しました。愛称は一般公募で『ひなた』に。

ここでは

  • 療育に関する相談(来所・電話・巡回)
  • 発達検査や行動観察(心理・保健師・保育士)
  • 機能訓練(ST・PT・OT)

などの支援が行われています。

▲事務室


▲こちらの作品は職員の方が逗子海岸をイメージしてデザイン。こども発達支援センターのモチーフとして、パンフレットや『ひなたファイル』の表紙にもなっています。


▲職員配置はこんな感じ。

  • 学校の教員経験者を常勤の学齢期相談担当として配置しています
  • 上の一覧の療育相談員-保育士までの専門職は非常勤で、1日6~10人くらいで対応しています。
  • 診療所がないため、嘱託医として市大や県立こども医療センターから児童精神科の先生、そのほかリハビリテーション科の先生に来てもらっています。

相談室は8部屋。相談員のほか、心理士や言語聴覚士などさまざまな専門職が相談に応じます


相談室のタイプもいろいろ。それぞれ個室になっているので、ゆっくり安心して相談できます。

聴覚検査室


▲外の音を遮断するため二重扉になっています。


▲ここで聴力検査を行うことができます。

未就学児対象の経過観察グループ『こぐまグループ』

ここでは保健師や保育士が中心となって、主に乳幼児健診などをきっかけに来るお子さんのフォローを行っています。


▲プレイルーム1がこぐまグループのお部屋


▲家族で参加する小グループの活動です。遊びを通してお子さんの様子を把握し、適切な支援を一緒に考えます。

思いっきり走り回れる体育館/プレイルーム2


▲明るくて広い体育館。トランポリンや…


▲三輪車などの乗り物も!


▲そして真ん中には定番・ボールプール!

  • 余計なものが置かれておらず、走り回りやすい!
  • 冬でも裸足で気持ちよく遊べるように、床暖房がついています

身体の動きや手先の動きを楽しく練習/PT・OT室


▲PT(理学療法)とOT(作業療法)の機能訓練のお部屋


▲パーテーションで区切られた手前側がPTエリア、奥側がOTエリアに設定されています


▲横須賀市療育相談センターでもおなじみの階段を発見!


▲OTエリアには座って作業するためのテーブルと椅子があります。練習に使うおもちゃなどの教材は壁側にうまく収納されているためすっきり!


▲こちらのファイル庫には、ひとりひとりの相談内容や発達検査結果、成長記録などが保管されています。

こども発達支援センター 児童発達支援・放課後等デイサービス『くろーばー』[2F]

『くろーばー』は社会福祉法人 県央福祉会が運営

相談事業を市が行っているのに対し、通園事業は県央福祉会という社会福祉法人が運営しています。ここを開設するにあたり、利用者からのアンケートで『くろーばー』となりました。


▲『くろーばー』園長・宇山さんに案内していただきます!


▲カギは子どもたちの手の届かない高さに設置。大人も施錠を忘れないよう「かちゃ!」のメッセージ。

『くろーばー』事務室

職員は事務員を入れて13名。看護師は1名。

  • 基準のほぼ倍のスタッフを配置することで、一人ひとりのお子さんとご家族に丁寧に関われるような体制をとっています。
  • 医療的ケアが必要なお子さんへの対応には、看護師があたっています。

通園のクラスは年齢や特性で分けて3クラス


▲『ほし』は2、3歳のお子さんが親御さんと一緒に通う、親子通園クラス。
2歳児は午前中のみ、3歳児はご飯を食べてから帰るというかたちになっています。


▲『にじ』『おひさま』は4、5歳のお子さんの単独通園クラス。
お子さんの様子に合わせて2クラスに分かれて療育を行っています。

通っているお子さんは併行通園がほとんど。これは市の巡回相談が充実しているからこそ

逗子は、「ひなた」と「くろーばー」による巡回相談が充実している関係もあり、週2日こちらに通い、あとの3日は他の幼稚園・保育園という併行通園の利用が多いです。

単独通園でも、親御さんとお話できる機会はしっかり作ります

療育の時間は10:00~13:00。

その前の30分もしくは後の30分に、個別活動の時間をつくっています。このときは単独通園のお子さんの親御さんも来てもらい、一緒に活動に取り組みながらお子さんの成長の様子を見てもらったり、ご家庭の話を伺う時間にしています。


▲1人1人のロッカー。


▲子どもたちが自分でわかるように、それぞれが好きなものやキャラクターのイラストを目印に!


▲壁に取り付けられたホワイトボードはマグネット仕様。「きょうのよてい」「おともだち」などを写真や絵で貼ることで視覚的にわかりやすくしています。

ココに注目!

  • 「とって」(ボード左・黄色い枠)
    子どもたちの中には、「あれしたい」「これしたい」と言えるお子さんもいれば、おしゃべりはできても何が欲しいかを伝えることが難しいお子さんもいます。ここから選んでとって、先生に渡すことで、欲しいものをもらえる。これが、ひとつのやり取り、コミュニケーションになります。ここにないものは今日使わない、という提示にもなります。
  • 「おしまい」(ボード左上・黒いボックス)
    終わりの概念がわからず、切り替えの難しさがあるお子さんたちが視覚的にわかりやすいよう、終わった活動は剥がしてここへ入れます。


▲年中長になると、朝の会で「おとうばん」の役割も任されます!


▲子どもたちの高さに合った手洗い場。お部屋に合わせた木目のデザインがかわいい!


▲天井に取り付けられたポールは、スイングホースなどのブランコ器具を吊るしたり、色々なことに使えて便利です。


▲おもちゃ類は、使うとき以外は見えないように収納しています。


▲1Fの体育館同様、保育室も含め全室、床暖房がついています。冬でも裸足でのびのび気持ちいい!


▲ヘルメットや避難グッズなども、各部屋にきちんと用意されています。避難訓練はセンター全体で年2回、法人として年2回、事業所で年2回の計年6回行っています。

トイレはクラスの外に配置。各クラスのお子さんたちが順番に使います


▲明るくてとても綺麗なトイレ。タイルやカラフルなサンダルでより親しみやすい空間になっています。こちらも床暖房あり。


▲男の子も女の子も使うので、カーテンの仕切りをつけています


▲男の子用立ち便器


▲洋式便器


▲クラスと同じ手洗い場がここにも!

  • 子どもたちの様子に合わせて掲示物を変えたり、子どもたちが安心して使えるよう工夫を心がけています。

目が届きにくい死角対策にも工夫あり!


▲それぞれのクラスから走って出てきた子どもたちが衝突!なんてことのないよう、必要箇所にミラーをつけて、先生たちが目視で確認し、適切に声かけできるように工夫しています。


▲体が汚れた時などに使えるシャワー室


▲2Fからベランダに出られます。夏にはここにプールを出して水遊びもできます。

通園『おひさま・にじ・ほし』の活動スケジュール

  • 送迎は、グループにより市が運行しているシャトルバスや定点運行バスをご利用いただけます。
  • 昼食はお弁当を持参していただいています。

通園のほか、グループ活動も行っています


▲隔週で開催しているグループもあります。年長・年中少と年齢ごとに分け、6グループで活動しています。

この2017年5月から放課後等デイサービスもスタート!預かるだけでなく専門的な療育の目線があるのが強み

相談支援が18歳までとなったこともあり、『くろーばー』でも小学生から高校生を対象とした放課後等デイサービスが始まりました。

その特徴は

  • ただ預かるだけではなく、専門的な療育としてサービスを提供する
  • なるべく多くのお子さんに利用していただきたいという思いから、基本的に1人あたりの利用は月2回程度(年間20回)
  • グループを1-2学年ごとに編成して活動


▲これはイメージですが、このような感じでグループごとに日程を振り分けています


▲活動内容は、調理・運動・工作・外出などいろいろ!

将来、社会生活に必要になってくるであろうことを活動を通して楽しみながら経験していきます。


▲調理を例にとると、写真で手順を示し、課題に取り組みやすいように工夫しています。


▲外出の予定も流れを写真つきで整理。こうすることで予定の見通しがたち、安心して参加できるようになります。


▲カラフルな布などを使ったムーブメントも活動に取り入れています。

家族向けの勉強会や支援者向けの研修会も!


▲センター内の掲示板には、勉強会のお知らせなどが貼られていました。

気になったのは「第2回 パパ飲み開催しました」という貼り紙。スタッフやお父さん同士が交流できる有意義な会もあるそうです!

支援・成長の記録がこれ1冊に!?家族と支援者を繋げる『ひなたファイル』がスゴイ!

逗子市では、お子さんの成長を応援するすべての人たちの共通理解のもと、一貫した支援ができるよう『ひなたファイル』を配布しています。


▲逗子らしさ満点のポップなデザインが目を引きます!


▲ご家族が書きやすく、また支援者が読みやすいよう、項目が細かくなりすぎないよう配慮されています


▲うしろには母子手帳や福祉サービス冊子などを入れられるファイルつき。

教育研究相談センター[3F]

こちらは従来からの教育研究所を残し、

  • 学校および家庭内での教育に関するさまざまな相談
  • 市民講座の開催や、教員・支援者向けの研修
  • 不登校児をケアする適応指導教室

を行っています。

▼パンフレットを参照!


▲電話相談を受け付けているコールセンターがこちら。


▲相談室


▲プレイルームがあるので、小さいお子さん連れでも大丈夫。

不登校で悩む子どもたちを受け入れる適応指導教室『なぎさ』

「教室に入れない」
「学校に行けなくなった」

など、不登校で悩む子どもたちを受け入れる教室がここ『なぎさ』です。

役割としては、

  • 生活のリズムを整えながら、自分のことをゆっくり考えることができる場所を提供
  • 自分で進路を選択し、それに向かって行動するためのお手伝い
  • 体験学習を通し、対人関係・コミュニケーションの方法などの小さな体験を重ね、自信を持って活動する力を向上させる

など。(冊子:適応指導教室「なぎさ」について  より抜粋)


▲1日の流れはこんな感じ。

ちなみに・・・

  • お昼ごはんは在籍する学校が給食を実施している時は同じものが提供されます。
  • お弁当の場合は家庭から持参。
  • 『なぎさ』での活動参加は、学校の出席扱いとなります。

『こども発達支援センター』の相談から利用までの主な流れ


▲相談があってからだいたい2週間以内にインテーク(面談)をし、必要に応じて発達検査、その後療育方針の検討をし、サービスに繋げていくという一連の流れができています。


▲学齢期の子どもたちには学校との支援の連携が不可欠。学校の教育相談コーディネーターや学級担任、通級指導教室の先生たちと連絡を取り合って、お子さんを取り巻く支援者が同じ方向を向いて指導していけるようにみんなで情報共有します。学校が居心地のいい場所になることが一番!

やはり学齢期のニーズの増加が顕著!各種相談・訓練の件数推移


▲全体的に増加傾向にあるものの、相談事業を18歳まで拡大した2016(H28)年に、学齢期の相談件数がぐんと増えているのがわかります

逗子市の機構改革!こどもセクションを教育委員会に一元化することでワンストップサービスが実現

従来は

  • 子育て支援課
  • 保育課
  • 教育委員会

この3つの組織は、福祉と教育に分かれ、連携が進みにくいところもありました。

このうち[ 子育て支援課+保育課 ]いわゆる【こどもセクション】を教育委員会に集約することで、市民の方々にもわかりやすく、利便性も向上しました。

こども発達支援センターの職員が福祉部と併任!子育てファイルの活用もスムーズに

教育委員会にはこれまで、子育てや保育・療育に関わる業務経験がありませんでした。
そこで、福祉部で働いていた職員が教育委員会に異動し、こども発達支援センターの職員が障がい福祉課職員として併任することで、

  • サービス利用に関わる情報提供
  • 利用者を継続的に支援するための子育てファイルを活用する

など、専門知識を共有しながらよりスムーズにサービスを提供することができるようになりました。

・・・

センター内全体の案内と、スライドショーでの丁寧な説明をしていただいたこども発達支援センター長 雲林さん、ありがとうございました!


(写真左より)小幡沙央里市議・雲林センター長・sukasuka-ippo代表 五本木愛・sukasukaメンバーmisa&ゆかねこ

逗子市療育教育総合センターの基本情報

所在地/逗子市桜山5-20-29
療育教育総合センターHP(逗子市公式サイト)>>http://www.city.zushi.kanagawa.jp/syokan/hinata/ryouikukyouiku.html

こども発達支援センター

ひなた(療育相談)
TEL/046-872-2523
受付時間/月~金曜日 9:30-17:00
E-mail/hinata@city.zushi.lg.jp

くろーばー(児童発達支援・放課後等デイサービス)
TEL/046-876-5831
E-Mail/zushi-clover@tomoni.or.jp
社会福祉法人 県央福祉会 のHPはこちら!>>http://www.tomoni.or.jp/index.html

教育研究相談センター

TEL/046-873-1111 内線567
開所時間/月~金曜日 8:30-17:00
教育相談専用電話 046-872-2898/046-872-9498
(月~金曜日 9:00-16:00)

sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点

数年前から逗子に療育相談センターができるというお話を聞いており、とても関心がありました。

元々青少年会館だったところをリフォームしているので、設備が新しいのはもちろんのこと、安全面や防犯面などに配慮しながら細部まで工夫をされていました。

そして何よりすばらしいと思ったのは、その名の通り療育と教育が連携した施設ということ!横須賀ではなかなか課題が多いと議論されている療育と教育の連携がうまくできていて、当事者がより良い環境で支援を受けられるこのシステムは、私も「こうだったら良いのに…」とまさに思っていること。当事者サイドの率直な希望を言わせてもらうと、この療育と教育の連携はなくてはならないものだと思います。

横須賀は市の規模も大きいので、全く同じシステムを新たに取り入れるのは難しいかもしれませんが、ヒントとして活用できることはたくさんあるはず

私たち当事者も受け身でいるだけではなく、他市の取り組みを知り、主体的に捉え、必要なことを考え求めていくことが絶対に必要だと思いました。

視察として同行してくださった小幡議員にも感想をいただきました

既存の建物を改修して使っているそうですが、中へ入ると明るく、建物の古さは感じませんでした。部屋の入口に手作りのカードを貼って、何の部屋かわかりやすくするなどの工夫が随所に見られ、雰囲気もとても良かったです。

“ひなたファイル”は大変参考になりました。
ファイルは作って終わり、ではなく、活用しなければ意味がありません。その点でも参考になりました。

また、横須賀市でいうところの教育委員会とこども育成部が機構改革で一緒になっているというのが印象的でした。
教育委員会、こども育成部、福祉部の連携の必要性は強く感じています。逗子市は機構改革をしたばかりですが、実際に年度が始まってどうなのか、今後更に話を聞いてみたいところです。

2016.05.19
取材/五本木愛・misa・ゆかねこ
写真・加工/ misa・ゆっぴー
テープ起こし/ reiko・うさぎのめろん・がらっぱち・kayoko・misa・ゆっぴー
文・構成/ Yuka Kaneko

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『自分たちが足りないと思うこと、欲しいと思うものを自分たちで作り上げていく』を現実に!夢を1つずつ叶えるために!
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