横浜市のJR根岸線の港南台駅から徒歩10分という好立地にて2016年6月にオープンしたばかりのこちらの横浜医療福祉センター港南は、重心(重症心身障害児者)の入所施設と障害児者の医療機関としてリハビリテーション科を含む各種外来診療を提供する医療福祉施設。
敷地面積はなんと延床約13,000㎡!それが駅から徒歩10分にあるのですから驚きです。さらに、驚くべきはこの広大な土地が横浜市の無償貸与であること、そしてこちらの建設・開設に係る費用のほとんど、約50億円もの資金を横浜市が負担していることです。
横浜市にあって横須賀市にないもの、地域に根差した福祉医療施設の実現に何が必要なのか、我々、当事者の家族はなにを求めていけばよいのか、今回の取材では本当に多くのことを考えされられました。
盛りだくさんの取材となりましたので、【第1部】では利用者目線で横浜医療福祉センター港南をご紹介。外来やリハビリなどは横浜市民でなくても利用できるとのことなので、横須賀市民にとっても身近な話題としてご覧いただければと思います。【第2部】ではさらに踏み込んで、土地や資金、行政の話など、横浜市と横須賀市の違いに焦点を当てたお話を対談形式でご紹介します。
視察の同行という形での取材。声を掛けてくださった小幡議員と記事作成にご協力いただいた生田目さんに感謝
そう、実は今回のこの取材。横須賀市議会議員の小幡議員の視察に同行させていただいて実現したもの。障害児を育てる保護者であるわたしたちはまだまだ知らないことばかり。取材先を見つけるのも手探りという私たちに声を掛けていただき、また市議としての視点から投げかけられる鋭い質問など、同行させていただいたことで大変勉強になりました。
また、今回の見学は本当に学ぶところが多く、建築にかかる費用や土地の問題、行政のお話まで広く、そして深く記事に盛り込むことができたのも、横浜医療福祉センター港南の生活支援部長の生田目さんの一方ならぬご協力によるものです。
この場をお借りして、お2人にはお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
【第1部】驚きのセンター見学。重心の入所施設に各種外来、特別支援学校の分校まで!?
▲とにかく広い敷地、とてもじゃないけど全体を撮影することはできないので、俯瞰イラストをパチリ。
▲入口が見えてきました
車椅子から視線が合うオブジェ『樹誕』がお出迎え/エントランス
先代の理事長が注文し、制作に2年程かかったというこちらの巨大なオブジェは、静岡の彫刻家・前島秀章氏の手によるもので、タイトルは『樹誕』。
生田目さん ここが重心施設だということで、真ん中にこの母子像を置いたのですが、宗教色は一切なくて、一見、マリア様のようなんですが和風というか、顔が違いますよね。「いのち」をテーマに考えたら、母親と子どもだよね、というとこから始まったので、動物も雌雄になっているんです。対のフクロウもいます。
▲実は、上に乗っている子どもたちも周りにある子どもたちも、全てが車椅子からの視線で目が合うように作られています。彫刻家の先生が、みんなの車椅子の高さとかを考えて、ちょっと首かしげてくれたりして作ってくれたからなんです。作者にも、ここの意図がきちんと伝わってるんですよね。
そして、真ん中がほこらみたいになっていますが、これはくりぬいたわけじゃなくてそのままなんです。もともと自然木で、たぶん雷にやられたんだろうと言われています。だから虫食いの痕もそのままだったり、この樹自体は塗らずに磨いただけで仕上げています。
胴部に大きな亀裂を持ち、中が空洞の巨木。
大きな障害を抱えながらも岐阜県徳山の地に、生き続けた栃(トチ)の木の奇跡的な強い生命力。
たくさんの子供の笑顔、昆虫、鳥、魚、動物たち。
雌雄一対の命を主題にして、巨樹のパワーには、明るく和やかな笑顔があふれています。
(フランスでは、栃の木をマロニエと呼び、愛されています。・西洋トチの木—マロニエ・)彫刻家・前島秀章氏の公式ホームページより(外部リンク)>>http://maejima-hideaki.com/
▲手前の木肌に色がついているように見えるのは手垢です。もともとは白かったんですが、みんなに触られることでこのように色がついてしまっています。でも作者の意図としては、『触って色が変わってくほうがいいだろう』と。
確かに大人も子どもも、みんながこのオブジェを見ていきますし、これがなかったら殺風景な場所になったのかなと想像します。
ホールは広々!貸出もしています。
▲うちも使うんですけど、貸し出しができるスペースとして活用してもらっています。
まずは横浜市民限定の重心(重症心身障害児者)の入所施設
日中活動室は、ベッドから離れて出かけられる大切な場所
生田目さん 重心(重症心身障害児者)の施設は、お部屋とリビングだけというところが多いのですが、在宅の方が通所施設などに通うイメージで、ベッドから離れて出かけられる場所として作られたのがこの日中活動室。入所しているからといってベッドの中にいなければいけない理由はありませんし、お部屋から出たらみなさんそれなりに良い顔をされます。
日中活動
- 1コマを1時間程度とし、ひとり週2回(月8回)ペースです。
- 参加人数6人程度という少人数での活動ですが、1週間で2コマに参加できます。
- この日中活動のために、専任スタッフを7名配置しています。
▲この日は13コマを予定。見学時は『太鼓の達人』をやっていました。人がやっているのを見ても楽しいし、もちろん自分でやってみるのも楽しいですよね。
生田目さん こうした活動を充実させることで、個別にお出かけをするだけでなく、仲間と楽しむことができます。そして、専任スタッフを7人置いていることに対して、国からは色々な費用が出ますが、残念ながらこのような活動については考えられていません。でも、24時間衣食住ができるだけでは足りないですよね。生活というのは潤いが必要だし、自分が参加するというのも必要だし、そういうところにもう少し陽を当てていただき、スタッフの人件費などを出してもらえるとありがたいと思います。
・・・
ちなみに、公的に考慮されない人件費については相談室も同じ。相談室では診療の受付をはじめ、短期入所の受付、調整他、様々な相談を受け、在宅支援・地域支援を行っています。
スヌーズレンルーム
- 有線をいれてある。
- アロマを焚けるようになっている。
- 周りから特別な電気がつくようになっています。
- 総じて、癒し系のお部屋になっています。
生田目さん ウォーターベッドは、1台100万円前後と高い、温度調整が難しい、藻が生えてしまうので精製水でなければいけないなど、メンテナンスが結構大変だという理由であえて置いていません。スヌーズレンについては、やはり日本国内での需要が少ないためか国産の用具はなく、すべて輸入になるので揃えるのは大変です。なので、みなさんお金を掛けないように手作りで頑張っていらっしゃるところが多いです。
地域交流ラウンジとして誰もが自由に来られる喫茶スペース
- こちらの喫茶は、知的障害の施設さんにお願いして運営してもらっています。
- 誰もが自由に利用できる地域交流ラウンジとして、平日は10時から16時まで開放しています。
- 職員・スタッフのお弁当も販売。
職員の食堂でも昼食を40食のみ用意してありますが、職員が常時約200人いるので全然足りないそうです。
ボランティア室も完備
ボランティア室では、自由に飲んでもらえるように冷蔵庫にお茶も入っています。
トイレはあえて1階だけ。施設内感染を防ぐために接触しない造りを意識
生田目さん トイレはこちらと外来側の2か所にしかありません。このように、一般の方が利用できるトイレを1階にしか設置していないので、入居者のご家族の方にも居住区になっている2、3階に上がる前にこちらでトイレを済ませてほしいとお願いしています。
▲広いですね!
▲もちろんベッドもしっかり完備。
- トイレのスイッチは一番汚れるところなので全て人感センサー式にしてあります。
- 水道もほとんど蛇口は自動水洗にしてあります。
生田目さん 感染については、私たちのように外から来る人間が一番うつす可能性を持っていますよね。施設内感染を起こさないように、なるべく外部の人が設備に接触しない作りにしておく必要があります。
太陽光パネル
小幡さん 太陽光パネルがついていますね!
生田目さん そうなんです。たかだかこの面積なんですが、意外に発電力があって私もびっくりしているんです。これだけ使っているのに電気代は安いんです。
入院棟はユニットケア/まずは黄色で色分けされたエリアを見学
▲壁には素敵なステッカー。これは入居者さんが選んだものだそうです。
入室するとまず黄色で色分けされた4人部屋とリビングがあります。奥にはオレンジとさらに奥に緑があります。
一部、居室化されていない入院エリアがあって、6人部屋に加えて感染症用の個室がふたつあります。個室は2重ドアになっているので、重症化しても対応できます。
*こちらは完全に病院と同じ造りになっていますが、2016年現在は今後移転予定の横浜療育医療センター(横療)が同居しているので短期利用の方4名、入院4名が利用されています。
発熱やインフルエンザ等での隔離対策を見据えて4人部屋に2つの個室を用意
- 各フロアには感染対策等に利用できる個室が2つ用意してあります。
- 発熱やインフルエンザなどの症状が出た入居者には、個室に入ってもらいます。
- 3人目に症状が出た場合は、症状の出ている3人を4人部屋に戻し、症状のない1人を個室に移します。
このように個室が2つあれば、感染が予想される症状にもなんとか対応することができます。
・・・
3階も同じ造りで、ワンフロア32名の定員です。同様に各フロアに2つずつ個室があるので、予備室は10人分あることになります。つまり定員は160床ですが、ベッドは170あるということになります。
・・・
職員配置については、この1eastというエリアだけは入居者32名に対して生活支援員を12名、看護師を28名配置しています。傾斜配置もしているので、夜中でも入院利用を採れるようになっています。「こうした体制を整えておかないと、家族の不安は拭えませんよね」と生田目さん。
子どもたちは4人ユニット、同様にリビングを設定
- 10人まではユニット加算がとれるので、子どもはこの4人部屋2つで加算を取るというようにしています。
- 基本的にお部屋も色分けによってリビングを分けているので、いつもは部屋にいていいけど、このリビングにも出てこようと!呼びかけています
- 3歳になったばかりの子もいます。
- 医療ガス等の配管アウトレットは一応、扉が閉まるようになっています。
▲高柵のベッドは私(生田目さん)は個人的にはあまり好きではないのですが、結構動ける子もいるので使っています。もっと動くようになったら逆に超低床ベッドに替えようと思っています。柵を上げる必要はなくて、本人が出たいなら出ればいいのであって、柵があるから乗り越えたくなって転落事故が起こるんですよね。
なお超低床ベッドについては、マットがなくて11センチ、マットが入ると15~16センチ。専用のマットを加えることで傾斜もつけられます。
トイレにも配慮。寝便器まで!?
トイレはユニットごとに必ず1ヵ所ついています。
▲こちらは一見すると普通のベッドですが…
▲ベッドの下に埋め込みの便器が入れてあり、一応女性の方用になっています。
ベッドサイドだとゴム便器だとか差し込み便器を使いますが、外でやる場合はこうした埋め込み型の寝便器というものを使ってやったりします。まだうちでは使っている子がいないんですが、オムツじゃなくて便器でできたらいいねということで準備してあります。
▲トイレは自動水洗ですが、センサーを隠して利用しています。量と形状の確認をするためです。
お風呂は浴槽が上に上がるタイプを採用!だって沈んでいくのって怖いじゃない?
お風呂は週3回。月水金か火木土で入ります。
・・・
ストレッチャーが横にずれて、浴槽が上に上がってくるタイプのものを使っています。(入浴中のため、写真はとれませんでした!)
「私も実際にやってみてわかったんですが、浴槽に沈んでいくのって、なんだか沈められる感じがしてやっぱり怖かったです。だったら浴槽が上がってくるほうがいい。そういうちょっとしたことでも自分も1回やってみないとわかりませんよね。柵ベッドもあの間からテレビを見ている人がいますけど、自分でも寝てみると柵が縞々になって視界に入って邪魔ですもん。」(生田目さん)
カラオケも完備!
▲毎日演歌で大変ですよ!雪国が…(スタッフ談)
大人の居室エリアは男女別
▲ここにも素敵なウォールステッカー。センスの良さに驚かされます。
お部屋の造りは先述の黄色で色分けされたユニットと同じですが、定員は4×3の12名。
大人は4人部屋で男性と女性とで分かれています。
中村特別支援学校の港南分教室
こちらの分校は30人規模を想定。小・中・高と入るのでスペースは広く確保しています。
さんぽ道。ここはみんながフロアから出て気晴らしができる場所
- センターの敷地の向こう港南台西公園があることによってこの敷地が緑に囲まれているみたいに見えます。
- 常時ここにいることは想定していなくて、フロアからちょっと出て日に当たる、風に当たるというように、気が向いたり気晴らしにみんなが気軽に来られる場所にしています。
- 車いすでも通れるように木造ではなく人工のウッドデッキで作ってあるので腐りません。
- 親子で一緒に過ごしてもらう場所としても活用されています。
このさんぽ道を造るにあたって参考にしたのは、他の社会福祉法人が川崎の廃校した学校を使って造ったビオトープです。
【トークメモ】家族は何ができるのか。家族と事業者と行政、それぞれのビジョンが必要
五本木 わたしの6歳の娘はアンジェルマン症候群という遺伝子疾患を持っていて、知的と身体の障害があるんですが、ライフゆうさんやこちらを見学してまず思うのが、子どもの自立についてで、大きくなって親の手を離れた時にどこでどんな生活をするのか色々と勉強になります。まだ子どもが小さいので、ずっと一緒に!という気持ちが強くて、なかなか将来のイメージが描けないところもあるんですが、こうやって多くの人の手があって、みんなが助けてくれて、毎日、幸せに暮らせれば親としてはとても安心かなと思うんですよね。
生田目さん 横浜市青葉区に『地域療育センターあおば』というところを私どもの法人で持っているんですが、年明けにそこの保護者の方に私が話をしに行きます。そこでお話したいのは、将来の不安だけを抱えて生きていくのか、それとも、どんな希望を持っていくのかということ。そのために、若いお母さんたちに、今まで歩んできたこの障害福祉の現状を見てもらったり聞いてもらったりして、
- 家族は何ができるのか
- 我々事業者は何ができるのか
- 行政は何ができるのか
この3つがそれぞれビジョンを持っていた方がいいと常々私が思っていることをお伝えしたいんです。必要がある時はそれぞれがタッグを組めばいいんです。親には親にしかできないことがあると思いますし、私たちはあくまでも第三者。それでも親の一番そばにいるというスタンスを取り続けないと、本人たちが安心できないのかなと思います。
医療保険(外来扱い)のリハビリテーション部門、他市他県からの利用も歓迎!?
医療棟の3階は全てがリハビリテーション!
- 横浜市民に利用が限定されている居住エリアと違い、こちらのリハビリテーションは医療保険(外来扱い)なので、居住地による制限がありません。横須賀市はもちろん他市他県の利用も可能です。平塚、大磯、千葉などからも利用されています。
- 午後の方が学校が終わってこられる方が多いです。
- 一度、センター内の内科受診をして、カルテを作ってもらってからリハをご利用いただくという流れになります。
▲こちらの感覚のお部屋にはボルダリングがあって、昔でいうと感覚統合ということでしょうか。
▲ロボットスーツHAL(ハル)もあります。「リハビリも楽しくできるものがいいですよね」と生田目さん。
▲『レッドコード』というリハビリ治療器具。あおむけに寝て足を直角に上げた状態でバンドを引き上げていくことで腰が少し浮く。そうすることで、余計な負荷をかけずに効率的に行えます。
▲業者が毎週木曜日に来てくれるので、車椅子や補装具などひと通りの装具が作れるようになっています。
作業療法室では日常の生活空間を再現!あえてバリアフリーにしていません。
ADL室ということでこちらでは日常の動作訓練をするので、例えばお風呂もあえてバリアフリーではない普通のお風呂を設置して、自宅でのお風呂の入り方を練習します。
・・・
「自分でどうやるのかを練習します。シャワーも最初は水が出て冷たいよ、すぐには温かくならないよ、というようなことも、結局、自分で経験しないとわかりませんよね。
トイレもそう、リモコンでお尻を洗う方法を練習します。
キッチンでも、焼きそばを作ってみたり、IHを使ってみるというように、将来のその人の生活に対して、どうしたらいいのかを考えて訓練をできるようにしています。
みなさん、テレビのリモコンとか自分の興味のあることはすぐに覚えるんですよね。だから電子レンジやオーブンも置いておいて、使ってみる。
OTの人からもこういう練習がしたいとオーダーが多かったようです。泊まりはなくて日帰りだけなんですが、利用のニーズは結構あるようです。まずは自分で興味を持ってくれる子ができてくれるといいですよね。」
オーダーが多いST(言語療法)と心理には最大限対応したい
ST(言語療法)と心理の部屋は2016.11現在は4つ。2つの部屋の間に観察室があって、こちらからマジックミラーでSTの様子を見たり、ヘッドホンで音も聞こえるようになっています。
生田目さん STと心理のオーダーはやはり多く、地域療育センターでは再診が3~4か月待ち、年に3回程度しか受けられない状態だそうなので、このセンターも何とかお役に立ちたいと思い、今後も必要があれば観察室もSTや心理の部屋として使えるようにするなどして対応していきたいと思っています。
充実の外来。内科はもちろんボトックス外来や障害児者歯科外来部門まで
▲1階にある外来は全部で4部屋。その奥には授乳室や救急外来があります。
▲待合スペースも広々!
▲障害児者歯科もあります。麻酔もできるので、ほとんどの治療に対応できます。横須賀には神奈川歯科大に障害者歯科があります。センターの歯科医師も週1回行っています。こちらはまず内科を一度受診して、カルテを作ってもらってからのご利用となります。
▲Kは手術室ですが、このセンターには外科はありません。では、ここで何をするのかというと、ボトックス外来として、医師とPTと看護師が手術室で処置を行います。実は国内トップクラスの腕を持つこちらのセンター長・根津先生。「普段の体の状態をみて筋緊張が出いている箇所にボトックス注射を打っていくんですが、15分から20分くらいかかります。」と生田目さん。
・・・
その他、CT、レントゲン、透視、脳波、心電図にも対応。救急外来から出て、外来の待合を通らないで検査ができるようになっています。
【第2部】センターを支えるのは横浜市?土地、資金、ここまで違う横浜市と横須賀市
生活支援部長と『ライフゆう(みなと舎)』の意外なつながり
今回、お話を伺ったのは社会福祉法人十愛療育会、センターの生活支援部の部長でもある生田目さん。聞けば、『ライフゆう』運営のみなと舎の現理事長・飯野氏との関係は深く、かつては上司と部下の関係だったのだとか。
生田目さん 私は元々、栄区にある「朋(とも)」というところにずっといました。横須賀の重症心身障害児者向けの入所施設というと「ライフゆう」が有名ですよね。そこのみなと舎の飯野さんは「朋」の初代の課長で、私のもともとの上司で、お互い、重心は長いんです。
五本木 先日、みなと舎のライフゆうさんには取材に行かせていただきました。
生田目さん 重心の施設の概念をひっくり返したのはライフゆうですよね。床を絨毯張りにするなんて、医者から言わせたらとんでもない。でも生活感はあるよなって…私もできあがってすぐ、入居者が入る前に見に行ったんですよ。
関連記事>>【取材File】我が家のような施設でありたい!重症心身障害児者が安心して暮らせる入所施設『みなと舎 ライフゆう』/横須賀
どういうこと??駅から徒歩10分、この広大な土地は横浜市から無償貸与!?
この広いロビーにも驚かされましたが、このセンターは延べ床面積13,000㎡というとんでもない規模。もともとはどこの土地だったかを尋ねると…
小幡さん この建物が立っている土地は、もともとはどこのものだったんですか?
生田目さん 横浜市です。
小幡さん・五本木 あ~~!!!市なんだ!
生田目さん 横須賀は市で貸してくれないみたいですね。「ライフゆう」を作るときに飯野さんから、土地を買わなくてはいけないし、湘南国際村という立地も職員がなかなか集まらなくて大変だという話を聞いています。
もともとは学校用地、そこにセンターを建てるまでの経緯
生田目さん もともとここは学校用地でした。
小幡さん 廃校ということですか?
生田目さん いいえ。横浜市の教育委員会の所有地で、学校を建て替えるときに仮校舎を置いて使うスペースであったり、普段はサッカーや野球ができるスペースとして使われたりもしました。なので、それがなくなるということで、当初は反対がありました。そして、やはり障害児者向けの施設を作るとなると、地域に向けた説明が必要でした。地域の方にしたら重心のことはわからない、どんな障害の人?怖くないの?とか不安がありますよね。なので、「重心とは」ということをこの辺りの団地の方々に説明しに来ていました。
短期・長期合わせて入所受け入れ規模は160!規模が違う横浜の事情
五本木 でも、本当にすごいですよね。ひとつの建物のなかに、こんなに全部入ってるっていうのが。
生田目さん まあ、日本全国からすると「逆行じゃない?」という声も聞かれます。最近の流れでは、こんな巨大なのは作らないというのが基本原則ですよね。ところが、うちは長期の入所が136、短期と入院で24、合計すると160のベッドなんて、神奈川県でも今までないんですよね。
でも、横浜の在宅の重心について考えると、800人ぐらいいます。横浜市の人口が376万人いますので。
小幡さん 横須賀の10倍ですよね。横浜市の1区が、大きいところで33万とか。
五本木 33万人というと横須賀の人口と同じ規模ですよね!
生田目さん でも、横須賀も中核になって、児相(児童相談所)ができたというところでは、結構、近くで障害児者の相談ができるようになったんじゃないですか?それまで鎌倉と一緒だったりしてましたから。そして、横須賀には横須賀らしさがありますからね。
小幡さん 仕切っているのは市ですか?区ごとになるのですか?
生田目さん いや、区役所はあくまでも出先ですから、音頭を取るのはやはり市になります。で、横浜市内には現在、4つの児相(児童相談所)がありますが、その児相は今、子どもの虐待のケースに追われていて、障害のことは対応できなくなっています。加えて、重心(重症心身障害)は長期入所以外は児童も区対応、区の福祉保健センターが担当しています。子ども家庭支援課と障害が一緒になったり、障害と高齢が一緒になっていたり…、単独で扱うのではなく、どこかと併せて扱われます。
つまり、重症心身障害は主たるものではない、どこかマイナーな扱いなんですよね。でも肢体不自由とか知的、精神とかを入れると障害を抱えている人数はものすごい数になると思うんですが、それでも単独で扱われないというのが現状です。「重心」という言葉をご存知ない方もまだまだ多いですよね。
横浜市の場合は健康福祉局の中に障害福祉課、こども青少年局の中にこども障害支援部
生田目さん つまり、横浜市の場合、障害はこども青少年局と健康福祉局の2本柱で支えています。健康福祉局は療養介護の部分、こども青少年局が医療型障害児入所施設を所管しています。ここは本来、重心施設。医療型障害児入所施設ということに重きをおいて作っているので子ども青少年局の管轄になるのですが、実際に入っているのは大人の方が圧倒的に多い。
というのも、子どもについては横浜市にはサルビアとこども医療センターがあります。こども医療センターは、4割くらいは横浜市民、6割が県民と聞いていますが、そちらの利用が多いです。
ただ、もともとベッド数もそれほど数が多くないので、病床のほうも圧迫しているという現状があります。
加齢児を引き受けられるように。遠方からの呼び戻しにも尽力
生田目さん このセンターでも加齢児を受け入れていますが、来年も加齢児をとってほしいという要請があります。待ってる人がいるので、このセンターでも基本3歳からとるようにして、実際に3歳の子もいるのですが、あまりに小さい子だったり、Nタイプの(NICUからの)子だと受け入れが難しいという現実はあります。
そうした中でも、1期目は、どうしてもご家族が看ることができないケースなど、養護性の高いお子さんを数人引き受けていいます。
2期目についても、35人くらいの申し込みから24名くらいは入れるように予定しています。
その他、結構、これまで横浜市内にベッドがないということで、遠いところに送ってしまっているケースもあるので、呼び戻す必要もあります。一番遠いところで南は佐賀、北は仙台など。
生活って苦しいことがいっぱいだけど、やっぱり楽しいものであってほしい
生田目さん 横須賀の『ライフゆう』さんは、ハワイに行っていますよね。呼吸器つけてもみんなで離着陸の10分だけ座位姿勢がとれるように練習しているんだとか。でもそうやって少しでも楽しい時間を過ごしてもらいたいですよね。そういう楽しい気持ちは見ててもわかるし、明るいですよね。
生活って苦しいこといっぱいありますけど、そうじゃなくてみんなにとって生活は楽しいものであってほしいですよね。
横須賀の『ライフゆう』のこだわりに学ぶところ
生田目さん 外来がなくて入所部門だけのライフゆうは、やはり理事をされている飯野さんのコンセプトやこだわりがあって、とてもいいですよね。絨毯張りだったり、リハの部分やベッドが木であったりとか…。
ただ、こちらがそうはいかないのは、もともと横浜市からの依頼のようなものがあったりという事情もあります。特に外来に関しては市からの委託でやらなくてはいけない部分があるのですが、居住の部分はあまり窮屈にしたくない。だから、外来と居住とでは、きちんと分けたいなと思っています。
圧倒的に多い在宅にどう応えるか。外来機能の在り方を考えないと!
生田目さん こちらの施設はセンターという名前がついていて、センター長、副センター長が両方とも医師。その下にいる私が、居住部分の統括をさせてもらっています。
あえて看護部長ではなくて生活支援部長が居住部門の統括をやるというかたちにしていますが、看護部長は私の横にいて常に相談ができる位置にいるというのが大切。ただ、どうしても医療サイドの見方が強くなってしまいがちなので、誰が主体で動くのかは難しいところがあります。
医師・看護師はもちろん欠かすことはできませんが、生活を支える医療という部分を考えると、一般の町医者や総合病院と違う視点で外来の機能の在り方を考えていかないといけないなと思います。そのためには、ここに外来を構えて「いつでも歓迎します!」とするだけは不十分で、ここにいる医師・看護師が外に出て行かないといけない、在宅の方が圧倒的に多いのだからアウトリーチしていかなければいけないと思うんです。
私も30年近く通所の方でやってきているので在宅のことはわかるんですが、やはり在宅と入所の違いはまだまだあって、かつて「こんなんじゃ自分は入所に入れたくないな」って思ったことも正直ありました。だからこそ、だれが来ても「ここで生活させたいね」と思えるものを作らないといけないなと思っていますが、まだまだです。
土地の貸与や建築費等、お金の話をズバリお聞きします!
小幡さん ちなみに横浜市は土地の貸与のこともそうですが、その他についてはどのようになっているんですか?
生田目さん 建物自体も国庫補助を含めて横浜市が大半を出しています。金額的には約50億円です。法人負担は約1億5000万円です。ただ、建物費よりも設備費の方がかかっています。
横浜市は市の単独で加算が付きます。超重症児で月約25万円、準超重症児で約6万円が入ります。療養介護費または医療型障害児入所施設費としての費用に加え、病院としての届け出をしていますので、入院費も入ります。
合計すると1ヵ月に100万円以上になります。標準看護体制や医療費の請求をすることもできます。入居者1人当たり年間1200万円くらいです。それが人数分ですから金額は言わなくてもお分かりですよね。
実際のところ、その金額を人件費やその他の費用で割り込んでいくと、トントンになればよいほうです。
小幡さん 法人の中での会計というのはありますか?複数の視閲を運営していらっしゃるので施設ごとの会計というのはもちろんあると思うのですが、トータル的にはひとつの会計にしてるのですか?
生田目さん 法人会計はありますが、現状では事業所間で調達することができませんので、事業所ごとの単位で会計をしています。それぞれの事業所ごとに収支のバランスを考えた運営を求められています。法人としては、地域療育センター1か所、障害者支援施設(旧身体障害者療護施設)1か所、療養介護&医療型障害児入所施設2か所が主な事業所です。他にも保育園や病児保育事業、訪問介護事業、訪問看護事業を運営しています。すべての事業所が黒字化すればよいのですが、必ずそうなるとは言えません。法人が全体の状態を見ながら、今後の運営方針や現状改善を求めていくのです。余剰金のようなお金はないのが現状です。
常勤の医者を11人抱えるということ。かかる費用と求められる役割
生田目さん 医師の給料は常勤で月100万円という人はいないということです。それ以上ということになりますから。当センターでは11人の常勤医がいます。非常勤医と合わせて16人ですから、外来の空いている曜日を埋めていただき、患者さんのニーズに応えられる体制作りを進めていかなければいけないと思います。
小幡さん こちらの先生はみなさん掛け持ちですか?
生田目さん 非常勤の先生も5人ほどいますが、常勤医は専任です。特殊外来を行っている医師は別の病院に勤めている方が多いです。
2017年5月1日に横療は元の場所へ。港南とは分離します
生田目さん 現在改修中で2017年5月に引っ越しする予定の横浜療育医療センター(横療)は、こちらのようなユニットにはできず、8人部屋を6人部屋にして、6人部屋を4人部屋にして、4人部屋をさらに2つ追加しているので居心地は今までよりもよくなるし、お風呂もA棟とB棟とつなげたので、両方から使えるようにしたのでそれがうまくいくとよいなと思っています。
改修前は本当にボロボロでした。改修にあたり、特にエアコンは集中管理方式ではなく、個別方式にしてもらうように伝えてあります。利用者さんは暑がりの人も寒がりの人もいますのでそちらのほうが良いと思われます。今は、「そよ」という敷布団のように敷いて風が送られてくるものを使われている方もいます。
横浜だから別格?
生田目さん 他市からの研修などを受ける際に「横浜だからできたよね。同じ神奈川県内なのにこんなに格差があって良いのか」ということはよく言われます。他施設の方が神奈川県に問い合わせると「政令市だから」「所管が違うから」ということが多いとのことです。
外来は、病院の分野ですので、全国からの患者さんを受け入れ可能です。実態としては、他市町村からの方も来られています。
小幡さん 政令市なので横浜・川崎は別格なんですよね。となると、横須賀のような中核市ってなんだろう、と思ってしまいますね。
生田目さん お金の振り方、もらい方もいろいろありますからね。横須賀って、やっぱりでかいですからね。
小幡さん そうそう!横須賀も別の県にあって40万人の規模だったら大きいほうですけどね。横浜・川崎があっての横須賀だと小さい都市みたいになってしまっているけど、人口40万人っていったら実は全然小さくないし、自力でやらなくちゃいけないことはたくさんあるんですよね。
横浜のような土地の無償貸与、横須賀市では望めない?
五本木 施設の在り方として何がいいって、まずは利便性の良い土地を市が提供するというところ。横須賀市では望めないのでしょうか。
小幡さん 今の横須賀市は廃止になった施設跡地等は基本売却の方針です。
生田目さん 横須賀にも市有地ありますよね?
小幡さん あります。
生田目さん ここにも土地使用の制限、ありますよ。もともと学校用地でしたから。だから、そのままでは使えないということでした。
小幡さん そうですよね!?学校用地は閉校した後の土地などあるのですが、市の中で使用する部署がない場合、基本は売却です。
生田目さん でも売っちゃったら終わりですからね。
小幡さん そうなんですよね、だから、横須賀市は売りすぎだなと思います。
生田目さん 市有地はもともと市民のもの。公共用地にしても、もともと市民のものなんだから、よっぽど使いみちのない土地以外は売ってはいけないと私は思います。
小幡さん そうですよね。避難場所がなくなっちゃいますもんね。そういうことを総合的に見る人がいないのが横須賀の問題なのかなと思いますよね。俯瞰して仕切ってくれる人がいればいいんですけどね。
行政と議員がタッグを組めたら強い!
生田目さん こういう市有地の扱いについて、わたしなんかも自分の担当の場所についてしか言わないですけど、それでもちゃんと言い続けないといけませんよね。私、いつも言うのが、「ここにいる障害をもっている人も横浜市民ですよね」って。税金払ってる払ってないじゃないんです。同じ市民のひとりとしてここにいる人たちをどうしていくんですかということ。
小幡さん 困っていることはこちらにはなかなかわからないので、言ってもらって「ああ!そうか!」と動けることは多いですよね。
生田目さん そういうふうに行政の人と議員さんとがタッグを組んでくれるのが一番強いんですけど、タッグを組める相手を見つけるのは意外と大変だと思います。
小幡さん そうですね。
財政・予算を動かすのは誰?訴える力
小幡さん ちなみに、横浜の市長の位置ってどうですか?
生田目さん そりゃ大きいですよ。市長が「うん」って言わなきゃこのセンターもできなかったですしね。これだけ財政がひっ迫している中で約50億円を市に出してもらっているんですから。
横浜療育医療センター(横療)の改修でさらに10億円、その金を引っ張ってくるのも大変だけど、県の福祉予算とかはまたひとつ桁が違って、おそらく福祉系の予算が何百億って額になるんじゃないかな。それは政府も含めてだから色々な金額が入ってきてるんだろうけど、そういうところではパイは一緒なんだけどどうやって分配するかですよね。
自分たちだけのことを言うのではなくて、これをやったらこっちが抜けるよね。この抜けた分はどうするの?というバランスも一方で考えておかないといけない。だから、入居に関しては重心に特化してやりますが、外来部門では、重心も発達系も知的もやれるようにしておく必要がある。だから横須賀の人に外来やリハで横浜医療福祉センター港南を利用してもらうのは全然かまいませんし、それと合わせて、みんなで横須賀をなんとかしないといけないってことを言い続けていかないといけないですよね。
五本木 結局、私たち保護者目線で言うと、市外にこういうところがあることすら横須賀の当事者や家族はあまり知らないので、まずは情報として多くの人に知ってもらって、まず横須賀と比べる→横須賀に足りないところが見えてくる→横須賀にもこういう場所が必要だ訴える、ということをやっていかないといけない。求めているところがわからないとなかなか行政にも伝わらないと思うので、だからまずは私たちが頑張らないと。
構想から7年。身近であること、使い勝手が良いことが大事!
生田目さん このセンターを建てるのに構想から7年かかっています。だからまず調査費をつけてもらう、そこからじゃないですか?栄区役所なんてもともと学校ですからね。だから柱の位置とかを見ると、当時の様子を察することができると思います。
とにかく、身近であること使い勝手が良いこと。それは誰しもが思っているので、そこがクリアできるといいですよね。あと20~30年持つかなっていう建物があればまずそれでバンとやってみるかですよね。
小幡さん あるんですよね、廃校になった若い学校が…。来年売りに出されちゃいますが…
生田目さん 全部をそれにするのが大変だったら、一部をコミュニティーセンターにするとか、NPOに1部屋貸したりとかでもいいし…。そういう人たちって最初に投資をできるだけのものを持っていないから、そこで羽ばたいたら横須賀に落としてねというような、縛りじゃなくて取り決めみたいなものをしておくと面白いのかなって思いますね。彼らもきっといろんなアイデアを持っていると思うんですが、そういうのを広く公募してあげるといいですよね。
小幡さん 横浜は街づくりの市民協働みたいなものでも、横須賀とは桁が違って普通のNPOに500万とか出るようですからね。500万あるから改修とかもできて地域の交流スペースとかできる、という話も聞いたことがあります。横須賀は最大50万、この差はやっぱり大きい!
生田目さん 横須賀ならどうやってやるのか。小分けにしてばらまくのではなく、100万単位でちゃんと選定して出すとか。そして、それが継続してできるものなのかという見極めもしてもらってね。どうしても単年度単発的なものが多いから、きちんと予算化できるように。
小幡さん そうそう!イベントだけに打ってもというところはありますよね。
生田目さん 結局、ずっと住んでいけるように市民生活をバックアップしていくのが行政の役割だと思うんで
五本木 私たちは一保護者に過ぎませんが、最終的には自分の子どもたちが大きくなった時に総合福祉施設みたいなものを作りたくて、そのためにサイトで少しずつお金を貯めて、10年、15年とコツコツお金を貯めて、我が子の成長に間に合うくらいまでには作りたいなという思いがあります。でも本当に市民協働とかでもばさばさ切られてしまうので、こうやって障害児の親たちが住みやすく、その先が明るいものであるものを作りたいのになかなか理解してもらえないですよね、今は。
生田目さん 横浜がいいからと、みんな転居していってしまったら横須賀は市としては成り立たないですよね。そうはならないにしても、格差を埋める方法については、市だけではなく県でも考えていかないといけませんよね。特に当事者の親ですから、逆を言ったら、なかなか住んでいる場所から逃げられないんですよね。動きがとりにくいことが多いので。
五本木 そうなんですよね、だからそこにいなくちゃいけないことが多くて。だから地域に根差して生活していこうと思っているんだから、大きくなってもこんなふうに子どもたちが楽しそうに生活できるというものを作ってあげないと、みんな横須賀にいるのが嫌になってしまうし、横須賀でよかったねというふうにしないと、親として安心して死んでいけないので。
生田目さん 横浜ではずいぶん前から親亡き後も安心して地域生活を送れる仕組みの構築を目指す『将来にわたるあんしん施策』http://www.city.yokohama.lg.jp/kenko/shogai/suishinkyo/ansinpt/について議論が進められ、親がいなくなっても横浜市が全面的に…というところを目指していますが、実態はまだまだですね。
五本木 本当にそういうところですよね。必要なのは。
小幡さん 今、空き家とかを使って小さい施設がたくさんできてはいますが、地域に根差しているかというとまちまちで、昔からある施設のほうが住民の方もよく理解しているケースが多い。
五本木 だから結局、数撃てばいいっていうのではなくて、質的な問題はありますよね。
小幡さん 各々の施設には頑張っている人はもちろんいるけれども、その人がいなくなったらどうなるのかっていう問題もあるので、やはり行政がある程度の担保をもってあげるのは必要だと思います。
生田目さん そのあたりをどこまで行政がわかっていて、今の現状を良しとしているのか。それが次のステップなのかもしれないですね。別に贅沢を言っているのではなく、この生活を続けていくための安心材料がどこにあるのかなって考えること。そこを見失わないように。
横浜医療福祉センター港南の基本情報
社会福祉法人 十愛療育会
所在地/ 〒234-0054 横浜市港南区港南台4丁目6番20号
Tel/ 045-830-5757
Fax/ 045-830-5767
開設日/ 平成28年(2016年6月1日
定員/ 160人(長期入所136人、短期入所(入院含む)24人)
構造/ 鉄骨造 一部鉄筋コンクリート造 地上3階建 (延床約13,000㎡)
事業/ 長期入所(医療型障害児入所事業、療養介護事業)・短期入所・外来診療(神経小児科、神経内科、耳鼻咽喉科、整形外科、歯科、精神科(思春期外来)、リハビリテーション科、その他特殊外来(摂食嚥下外来、脳性麻痺のボツリヌス治療外来、てんかん外来)・相談支援事業
【診療時間】
平日/ 9:00~17:00
第2・4土曜日/ 9:00〜17:00
※診療は紹介予約制になっております。
診療予約/045-830-5759(平日のみ)
初診・相談/045-830-5762(平日のみ/医療福祉相談室直通)
詳しくはHPで!(外部リンク)>>http://10ai-konan.jp/
sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点
今回、見学させていただいた横浜医療福祉センター港南は、横須賀から高速を使えば30分で着く距離にあります。
重症心身障害児者の入所施設であるのみならず、医療機関(外来診療、リハビリテーション科)も併設され、院内に特別支援学校の分教室もあるという、横須賀にはない驚きの規模の施設でした。施設内の設備等はもちろん、隅々まで配慮が行き届き、明るく気持ちの良い空間。
そして何より驚いたのは職員(スタッフ)の多さでした。利用者さんがより快適に、より安全に生活をするために必要な人数だと伺い、なるほどと納得する一方で、その職員(スタッフ)の数が足りないというのが状態化している横須賀の現状と比べることで横須賀市の問題が浮き彫りになったように受け止めました。
しかし、このような施設の存在、その施設環境等を目の当たりにして、「横浜市だからできるんだ、横須賀には無理」と捉えるのではなく、横須賀もそうあるべきでそのために何が必要かという意識を持たなければならないのだと痛感しました。
私たちのような幼少期の障害児を育てる保護者にとっては、まだまだ知らないことだらけ。市外のことはもちろん、市内のことですら知っていること見えていることはわずかです。しかし、これから先のことを考え、障害を抱える子どもたちの将来を思うならば、まず私たち保護者がもっとたくさんの情報を集めていかなえれば、比較することも、未来を描くこともできません。
今回は、小幡さんからのお誘いによって横浜市で新しくできたこのセンターの存在を知り、視察に同行させていただくことで、横須賀市と横浜市の行政の在り方の違いについても新たな視点で切り込むことができました。
そして、生田目さんには見学時のみならず、こちらを記事にまとめる段階で大変なお手間をとらせてしまいましたが、丁寧に加筆・修正等の指示をいただき、わたくしどもも大変勉強になりました。ほんとうにありがとうございました。
今後も各方面の方々にこのようにお力をお借りして、ますます広く情報を集め、深く視点を掘り下げていけるよう努力しますので、取材のお申込み・そしてお誘いも含めて、sukasuka-ippoをどうぞよろしくお願いいたします。
・・・
取材・写真/ 五本木愛
テープ起こし/ takeshima satoko・ゆかねこ
編集/ takeshima satoko
sukasuka-ippo
最新記事 by sukasuka-ippo (全て見る)
- 【イベントお知らせ】~障がい児とその家族の交流の場~2024年度『すてっぷ』活動のご案内 - 2024-05-09
- \今年も販売やります!/『令和5年度障害者週間キャンペーンYOKOSUKA』のお知らせ - 2023-11-28