今回取材させていただいたのは、特定非営利活動法人さざなみ会が運営する障害者就労支援事業所『森の庭』。
こちらでは、
- 就労移行支援
- 就労継続支援B型
この2つの事業を中心に障害のある方の就労をサポートしています。
その活動の軸となるのは菓子製造&カフェ事業。
美味しそうな香り漂う事業所内を見学、カフェにもお邪魔してちゃっかりケーキを頂きながら、就労移行への仕組みづくりについてもお話を伺ってきました。
どうぞご覧ください!
庭カフェ┃就労継続支援B型
まず目に飛び込んでくるのはたくさんの植物に囲まれたガーデンテラス。
実はここがカフェスペースになっているんです!
▲カウンター席とテーブル席があり、天気がいい日はとても気持ちよさそう!
▲営業時間は平日の午前10:30~16:00。ドリンクや焼菓子は季節によっていろいろ!
▲庭でレモンを育てています!
作っているところにお邪魔しました!
庭を抜けて事業所内に入ると、甘い香りが。
▲こちらはクランベリーケーキの仕上げ中。
▲トッピングされたドライクランベリーが鮮やか。他にも日替わりでいろいろな種類のケーキを焼いています。
▲計量や生地づくり、ミキサーやオーブンなど、工程を細かく分けて作業しています。
▲シフト表や連絡事項などはホワイトボードを活用。
▲販売の売り上げを日ごとに集計して書いておくことで、商品づくりの意欲もUP!
磯子区役所内『こすもすショップ』
こちらの『こすもすショップ』は、磯子区内複数の障害者支援事業所が出品しているアンテナショップ。
- 磯子区役所ホールにて、
毎月第3水曜日と木曜日の10:00~15:00まで販売しています。 - 違う事業所の商品でも会計は一緒でOK!
▲『森の庭』のブースではパウンドケーキやクッキーなど、10種類以上の焼菓子が並びます。
『カフェ ル・シエール』
『こすもすショップ』と同じ磯子区役所には、『森の庭』が事務局として運営しているカフェがあります。
▲営業時間は火曜日から金曜日の9:30-16:00。スイーツだけでなくお食事メニューも充実!
▲店内では他事業所の手作り小物も販売しています。
▲ドーナツをモチーフにした可愛らしいマグネットも発見!
▲明るく見晴らしのいい店内。ソファー席・テーブル席・カウンター席があります。
▲こちらで働くのは『森の庭』就労移行支援と就労継続支援B型の利用者さん。接客スキルを学びながら、カフェの売り上げからお給料をもらっています。
▲ブレンドコーヒーとスライスケーキ(チョコマロン)をいただきました!
森の庭┃就労移行支援
就労移行支援『森の庭』の拠点となるのがこちらの事務所。
▲中では利用者さんたちが軽作業やパソコンの作業中。
『森の庭』1日のスケジュール
▲利用者さんはこちらの基本スケジュールに沿って、それぞれのプログラムで活動していきます。
午前中は主に実務訓練で、パソコン・製造作業・カフェ・販売などに分かれます。
interview
┃『森の庭』就労支援員・田村さん
▲就労支援員の田村さんにお話を聞きました。
田村さん 『森の庭』の母体である精神保健を考える市民団体『さざなみ会』は、18歳以降の居場所を作りたいという親御さんの思いから生まれました。
▲『さざなみ会』の発足から30年。もともとあった地域活動支援センターに就労継続支援B型の事業を加えて『森の庭』を開設し、2015年7月より就労移行支援事業がスタートしました。
一般的な「就労移行」との違いは…
田村さん 最近は就労移行支援というと株式会社が多くなりました。その特徴として、事業所は模擬オフィスとしているところが多いです。スーツで通所し、MOSや簿記などの資格取得、PCスキルを身につけることを中心としています。
またリワーク、つまり仕事の経験があって、何らかの原因で仕事ができなくなってしまった人に対して、再就職をサポートすることに強みがあると思います。
その点、『森の庭』の特徴は実体験やコミュニケーションを大切にしているところです。
森の庭では、法人内にある3つの就労B型の作業(菓子製造・配達・販売・軽作業など)、区役所のカフェ業務を実際に経験する事が出来ます。入院やひきこもり、何らかの理由で働く機会がなかった方に働くイメージを持って頂くには、実際に仕事を体験することが大切です。B型での経験を通して、まずは仕事で必要なコミュニケーション、チームワーク、生活リズムや体力を身につけて欲しいと思っています。作業を通してコミュニケーションを取るべきところはスタッフが見本を提示してサポート、休み時間や外でのイベント、スポーツの時の会話も大切にしています。またメンバーさんが希望すればいつでも面談・相談を行います。スーツ着用に関しては就活に入るまでは、利用者さんにお任せしています。
このように就労移行支援事業所といっても、再就職をサポートするのと、働いた経験の無い方の就労をサポートするのではアプローチが違うと思っています。
第一線から退いた方がリワークする場合や専門的なスキルを習得したいという方には『森の庭』では物足りないでしょうから、他の事業所をお勧めするようにしています。
移行の利用を検討している方には、いろいろな事業所を見学・体験すると良いと思います。
コミュニケーションを多くする理由、それは…
田村さん 『森の庭』では、スキルを学ぶよりまずはコミュニケーションをとれるようになることを目標にしています。
例えば仕事をする上で、
- わからなくて困った時に「教えてください」と言えること
- 体調が悪くなったら「少しやすませてください」と伝えられること
がとても大事。
コミュニケーションに慣れていないと周りにうまく伝えられず、我慢したり、孤立したり、体調が悪くなって仕事を続けられなくなるケースって実は多いんです。
言葉にすることが苦手であれば紙に書いて伝えるなどなんでもいいので、どうやって思いを相手に伝えるかをスタッフと一緒に考えて、身につけていけたらと思います。
大盛り上がり!コミュニケーションが自然と生まれる「アイスブレイク」とは?
田村さん コミュニケーション力を育てるため、プログラム前に「アイスブレイク」をやっています。この回は「みんなで詩を作る」というワークで、お題を出してそれぞれに思った感想を4つ書いてもらいました。それをみんなで相談してつなげ、1つの文章にするというものなのですが、面白い作品になったり、意外と奥の深い詩になったりして盛り上がりました。
こういったワークを積み重ね、同じ課題に取り組むことによって、コミュニケーションの練習になるんです。
みんなにとって「大切なこと」が集まった!その名も『元気に役立つ道具箱』
田村さん これは「いい感じの自分を保つ」ための、みんなの元気のみなもとをポストイットで貼ってシェアしたものです。調子が悪くなったときに活用すると役立ちます。
田村さん 自分を好きになること、楽しむことなど、気持ちをプラスの方向にもっていけるようなプログラムを用意するように意識しています。
福祉の商品でも、商品力があれば売れるはず
田村さん 仕事で頑張っても評価されなければ、誰でもやる気が上がらない。それは福祉でも同じことです。商品が売れることで工賃が上がり、働く意欲も上がっていく。
そのためには福祉だからではなく、売れるものをとことん意識して商品力をあげていくことが必要だと思います。
スポーツなどのレクリエーションは毎月開催!
田村さん 森の庭では毎月体育館を借りてスポーツをしています。2か月に一度、他事業所と試合をしています。
またイベントとしてカラオケやバーベキューなどのイベントも毎月企画しています。イベント内容はメンバーが発案し、メンバーさん自身が考え実行します。自分が動くことで変わるということを知ってもらいたい、受け身ではなく主体性を育みたいと思っています。
田村さん 知的や身体の障害のスポーツは盛んですが、精神障害者の方のスポーツは多くないんです。それなので地域交流を目的に月に3回程度、地元のスポーツセンターでバスケを開催しています。地元の障害者、支援者、健常者ごちゃまぜで楽しんでいます。
多機能型事業所『森の庭』の基本情報
■就労移行支援
所在地/横浜市磯子区森3丁目3-17
TEL/045-374-3003
■就労継続支援B型
所在地/横浜市磯子区森3丁目7-20
TEL/045-752-3989
運営/特定非営利活動法人さざなみ会
sukasuka-ippo代表・五本木 愛の視点
就労移行支援とは、障害者が仕事をするために必要な知識とスキルを身につけ、就労を継続できるように支援をする事業です。
支援の内容は大きく分けて3つ。
就労移行支援
・一般就労を希望する方に必要な知識、職場体験などを提供しサポートします。
具体的には、サービスマナー講座を受けたり、質疑応答や履歴書の書き方を練習したりします。
就労継続支援A型
・実際に仕事をしながら経験を積み、就労を目指します。
・具体的には、事業所と雇用契約を結び、給与をもらいながら、一般就労を目指します。
就労継続支援B型
・雇用契約はなく、通所して作業をしながら工賃をもらい、A型や一般就労を目指します。
・まずは作業に慣れることから始め、その先に繋げることを目的としています。
そして、就労を目指す当事者は、B型→A型→就労移行というように、ステップアップしながらスキルと経験を身につけ、就労を目指す仕組みになっています。
事業所の多くは、これら上記3種類の支援を
・就労移行支援/就労継続支援A型
・就労移行支援/就労継続支援B型
・就労移行支援/就労継続支援A型/B型
のように組み合わせて運営しています。
私は、取材や各種会議への参加を通して障害者の就労の仕組みを知り、幼少期の障害児の親としてできることはなんだろうと考えてきました。例えば、
・事業所まで自力で通えるようにする
・こだわりを持たせすぎないようにする
など、就労に向けてできることは、少しずつ増やしていかなければいけないんだなと。
今回の取材では、就労を目指すには技能的なことばかりではなく、内面的な部分やコミュニケーション力をつけていくことも大切で、そこをしっかり支援することが、結果的に就労の継続に繋がることを学びました。
そう考えると、私たち保護者が子どもたちの将来にできることは少なくありません。子どもたちに挨拶の習慣を教え、色々な方たちと関わるチャンスを作ることも、コミニュケーションの力を育てる第一歩であり、こうした日頃の積み重ねが、我が子の将来につながっているのだなと思います。
・・・
取材日/2018.3.22
取材・撮影/五本木愛・がらっぱち
写真加工/ゆっぴー
文・構成/Kaneko Yuka
sukasuka-ippo
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