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【取材file】「みんないっしょ」でいいじゃない!知的も身体も同じ空間で過ごす生活介護事業所『茜洋舎』、自慢の漬物は守り続けてきた伝統の味/久里浜


▲鮮やかな赤色が印象的なこちらの建物は、実は社会福祉法人誠心会が運営する生活介護事業所 『茜洋舎(せんようしゃ)』。

外観からまずインパクトがありますが、建物内に一歩入って驚くのは漬物の香り!
ここ『茜洋舎』では、販売用の自主製品として開所当時から梅干し・らっきょうなどの漬物を手作りしています。

そしてもうひとつの驚きは、どの作業場でも身体・精神・知的とさまざまな障害種の方たちが一緒になって過ごしていらっしゃること!創設者である浜田幸生さんの「みんないっしょ」という理念から、このようなスタイルが生まれました。

ということで、今回も新しい発見がたくさんの取材となりました。
ユニークなアイデア溢れる内装にもご注目!どうぞ最後までご覧ください。

まずは建物内を見学!

ここ『茜洋舎』は2階建てになっていて、

  • 1F… 作業室や食堂、調理室、事務室など
  • 2F… 食品加工室(つけもの工房)、多目的室、休憩室など

があります。

定員は40名。いろんな障害種の方が一緒に活動しています

主な生産的活動としては、

  • 自主製品として、漬物(らっきょう漬け、梅干し、白菜漬け)・布製品・フラワーアレンジメントなど
  • 業者からの下請け作業
  • 郵便局の委託業務
  • 外部販売(漬物・駄菓子・ほか自主製品)

とさまざま。

障害の種別や程度でグループ分けはしていないので、同じ部屋の中でいろんな方がそれぞれに合った作業をしているという形。

[1F]作業室&食堂


▲こちらは作業スペースであり食堂でもある場所。


▲奥にはステージがあり、レクリエーションも行うことができます。隣には調理室。


▲車椅子の方がいらっしゃったり、元気にお話してくださる方もいらっしゃったり。みなさんそれぞれ作業中!


▲こちらの方はマグネットシートを片方のボードに移す作業


▲指先を使う練習になるんですね!


▲こちらの方は布に刺繍をしています。アジサイとてるてる坊主でしょうか。


▲販売用のらっきょう漬けにタグをつける作業です


▲案内してくださっているのはサービス管理責任者の山田さん。

世界に先駆けて料理にオキアミを使用したお話をしてくださいました。以前は保育園の給食の焼きそばやチャーハンなどによく使われるそうです。

[1F]作業室2

こちらでも数名の方が作業中でした。


▲こちらの方が刺繍しているのはスカリン。かわいいですね!


▲奥の棚に並んでいるのは駄菓子。花火大会などで屋台風に販売したり、近くの学童の子どもたちが買いに来たりします。


▲並んでいる駄菓子になんだか大人もわくわく!


▲こちらのテーブルでは袋をたたむ作業をしていました。

なんの袋かというと…


▲出前の配達で商品と一緒に渡す袋だったんですね!もしかしたら皆さんも見かけたことあるかもしれませんよ。

外には新しくできた活動室が!

作業スペースを増やすため、もともとプレハブの倉庫だったものをリフォームして、昨年の4月から活動室として使えるようにしました。(2017.04)


▲中はとってもきれいでおしゃれ!

ここで皆さんがやっていたのは、先ほど1F作業室でたたんでいた袋にしゃもじや割りばしを合わせて一緒に袋に詰めるお仕事。業者からの下請けでやっています。


▲手慣れた様子で袋詰めがされていきます。


▲こんなふうに壁際に机を寄せてることで集中して取り組める利用者さんもいらっしゃいます。


▲手元に置いているのは袋の中に入れるものをわかりやすく配置した写真。利用者さんに合わせたやり方で、みんなで同じ作業ができるように工夫しています。ちなみに、この利用者さんはちょうど看護師さんのバイタルチェックを受けている最中です。


▲こちらの男性は紐通しで指先の訓練中!


▲テレビの上を見ると、かわいく整列した人形たち。まだ未完成のものもあり、できあがりが楽しみです。


▲外にあるもうひとつの建物。こちらは何かというと…


▲トイレでした!

こちらも新しく作られたもので、車椅子ごと入れる広さ。なんとエアコン付きで快適なため、入った利用者さんはなかなか出てこないなんてこともあるそうです。

2階へ上がると…そこには子どもが喜ぶ空間が!?

施設内に戻って、今度は階段で2階ヘ上がります。


▲エレベーターがないので、階段には昇降機を設置しています


▲昇降機を取り付ける前は、職員さんが利用者さんを抱えて上り下りしていたというから驚きです。


▲上がった先には何とも可愛らしい壁紙が!

[2F]食品加工室、通称「つけもの工房」に潜入!

いよいよやってきました!「つけもの工房」です。


▲食品を扱う場所なので、衛生管理は徹底!


▲入ったら長靴に履き替え、白衣を着て作業します。


▲らっきょうの袋詰めの作業中!


▲袋の水滴をひとつひとつ拭きとっていくのも大事な作業。


▲こちらの利用者さんは洗い物をされていました。

どんな重度の方にも、作業は提供しようというのが茜洋舎のスタンス。

工程が細かくいろいろあるので、袋詰めができなくてもらっきょうの薄皮1枚ペロンとむく作業ならできるとか、衛生面で心配な方は洗い物やゴミ処理をしてもらうなどしています。

下の作業室ではなかなか落ちついて作業できなくても、ここへ来て白衣を着ると切り替えができる、という利用者さんもいらっしゃるそうです。


▲冷蔵庫内の巨大タンクには漬け込み中のらっきょう!


▲ちなみに今年は、450キロあります。全職員、利用者で2日間かけてらっきょうを洗いました!


▲去年漬けた梅干しです。白梅干しと赤しそ梅干しの2種類。

そのこだわりはというと、

  • 国産・無添加!
  • 生協から仕入れた南高梅を使っています。
  • 塩分18%、昔ながらのすっぱ~い梅干しだから日持ちもします。
  • 作り方は昔から変わらず、すべて手作業!

仕入れから納品、販売まで、全工程を利用者さんと一緒にやっています

こういう自主製品は作るだけではなくて、材料を仕入れるところから、製品としてできたものを納品に行くまで全部利用者さんが担当します。

どこで買える?

茜洋舎内ではもちろん、らっきょは久里浜と武の京急ストアさんで販売してくれています。梅干しは生協の梅を使っているので、できた梅干しはまた鴨居や浦賀の生協店舗に卸させてもらっています。

冬場は白菜漬けを作りますが、これは注文を受けて年末に配達するという形です。毎年すぐ売り切れてしまいます。


▲ぬか床です。まだ製品化はできていませんが、お昼にみんなで食べる分を漬けています。とても美味しいので、販売できる形を検討中です!


▲こちらは荷物を運ぶ用のエレベーター。
(人が乗れるやつが欲しいよね、と山田さんから本音がぽろり…)

[2F]子ども心をくすぐるおもちゃがいっぱい!?わくわく多目的室


▲こちらの多目的室は会議などに使われたり、親子が集まる交流の場になったりします。

クオリティの高すぎる手作りおもちゃに感激


▲「天井からぶら下がっているこれは、なんですか!?」

なんとこれ手作りのレール。汽車を走らせて遊ぶことができるんだそう。


▲ミニトンネルや鉄橋まで細かく作られています。すごい!


▲こんな手作りおもちゃも置いてありました。ボールが転がって鉄琴を通って音が鳴り、最後は点数が書かれた穴に落ちるという仕組み。


▲こんなおもしろ玩具や…


▲開けたら何か入ってる!?いろんな方向に開くドアが楽しい『ヒミツの小箱』。

とにかく興味を惹かれるおもちゃがたくさん!

実はこれも浜田理事長の案で、当時の職員の中でプロの大工をしていた方に作ってもらったのだとか。納得のクオリティです!


▲レトロな置物にもセンスあり!


▲職員さんが休憩したり、利用者さんの具合が悪いときに休んでもらえる和室

創設者・浜田さんの思いって?/サービス管理責任者・山田さんにお話を聞きました

始まりは『しらかば保育園』での統合保育

ここ『茜洋舎』を運営しているのは社会福祉法人誠心会。

その母体となっているのは、1970年の法人立ち上げ直後に開設された『しらかば保育園』です。

当時はまだ統合保育という言葉すらなかった時代ですが、創設者・浜田理事長の考えで「みんないっしょ」という理念のもと、開所当時から障害を持ったお子さんも一緒に預かるということをしていました。

卒園後、大きくなっていく子どもたち。受け皿がない!そこで…

しらかば保育園を卒園した子どもたちが中等部、高等部と上がっていくときに、そこから先の障害者の受け皿になるような場所がないということで、当時の浜田理事長が開設したのが地域作業所『働く家しらかば』でした。

その当時は横須賀・三浦地区では1、2番にできた古い作業所だったと思います。

1982年に『茜洋舎』開所。はじめはなかなか定員が埋まらなかった

身体障害者の授産施設として、定員25名で開所した『茜洋舎』

しかし当時は身体障害者手帳を持っていないと利用できないという形だったので、なかなか定員が埋まらず運営面でも大変だったと聞いています。

障害福祉課の方から「こんな方どうですか?」と紹介していただくんですが、やはり身体障害の方ですから車椅子の方が多かったり、木工とか漬物などの作業をするにはちょっと厳しいかなという方がほとんどでした。

「利用したいという人はとにかく受け入れなさい」浜田理事長の言葉

”障害があるということだけで世間で差別を受けてきた人たちに対して、受け入れる側の施設が「あなたはこの仕事ができます。でもこれはできません」と決めつけるのは二重の差別をすることになる。利用したいという人はとにかく受け入れなさい”

というのが理事長の方針でした。

ただやっぱり実際に仕事ができる方はわずかだったので、最初の何年かは職員が主に作業をしていました。

2007年、自立支援法によって福祉の体系が変わり、3障害の生活介護事業へ移行

開所当時は身体障害というくくりでしたが、ほとんどの方は知的な障害を重複されてますので、実質、いろんな障害の方を受け入れていたという感覚です。

なので法律が変わって精神・知的・身体の3障害を受け入れていいですよとなった時も、茜洋舎としてはそれまでと変わらずやってきました。

2008年には『働く家しらかば』と統合して、現在は

[主たる事業所]茜洋舎
[従たる事業所]働く家しらかば

という形で運営しています。

いろんな障害の方が”ごちゃまぜ”、それが強みであり魅力!

本当にいろんな種別の方がいますし、毎年何人か受け入れもしていますが、最近では発達障害や高次脳機能障害の方も入ってきています。

視覚障害の方もいます。もう本当にごちゃまぜで、いろんな方がいるっていうのがうちの特色。私たち職員としてはそういう、いろんな人がいて一緒にっていうところが強みだし、いいな、と思っています。

完全な個別対応は難しい。できる範囲で工夫して配慮しています

大きな声が出てしまう利用者さんもいるので、すごく賑やかな時もあります。

うるさいのが苦手という方にはパーテーション使ったり、少し静かにできるような教室を提供するなどの配慮はできますが、完全な個室とか個別の対応というのはやっぱり難しい。

みんなのいる空間のなかで、少し落ちついて過ごせるような場所という形で、工夫しています。

広報誌『みんないっしょ』は職員さんが制作


▲レクリエーションとして、月に1回クラブ活動の時間を作っています。

書道・歌・美術・運動など、専門の講師の方がボランティアで来てくださることもあります。いらっしゃらないときは職員がなにか提供したり、外出活動をしたりしています。


▲こちらは去年の1泊旅行の様子。

ディズニーランドと大江戸温泉、2つのコースから選べるという初めてのスタイルに挑戦しました。

職員もそれぞれ分かれていくので、あちこちお声掛けしてボランティアを募りました。予算はご家族に負担をお願いすることになるので、毎年は難しいかなということで、1年おきぐらいに行けたらいいなと思っています。


▲そのほか、浜田さんに関する連載があったり、


▲幸せの黄色いレシートの取り組みにも参加していました

現在の施設長である高谷さんも同席してくださいました。
楽しいお話、ありがとうございました!

『茜洋舎』の基本情報

運営/社会福祉法人 誠心会
事業内容/生活介護事業
定員/40名
職員/施設長1名・サービス管理責任者1名・生活支援員18名・看護師1名・事務員2名・嘱託医1名
活動日/月-金 8:45-15:30
所在地/横須賀市久里浜6-1
TEL/046-834-0957

sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点

今回、取材させていただいた『茜洋舎』さん。

玄関を入るとすぐに「あ!らっきょう!」と思わず声が出てしまうほどのらっきょうの香り。

今までいくつかの事業所さんの取材をしてきましたが、事業所で作られているのがお漬け物というのは初めてでした。

創設者の浜田さんが、「日本人なら漬物が食卓からなくなることはない!」と始めたのがきっかけと聞き、なるほど〜!と取材メンバー納得。

そして、施設の入り口にある「みんないっしょ」と大きく書かれた石碑は、今から47年前設立された『しらかば保育園』で障害児も健常児もいっしょのごちゃまぜ保育をしていた頃からの『誠心会』の原点ともいえる理念です。

園に通っていた障害のある子どもたちが大きくなった時のことを考え、『働く家しらかば』そして『茜洋舎』を設立したという経緯も、sukasuka-ippoとして共感させていただき、お話を伺えば伺うほど、創設者の浜田さんのお人柄やこれまでの歴史に驚くばかりでした。

近いうちに是非、『しらかばこども園』も取材させていただきたいと思いました。

・・・

2017.06.22
取材/五本木愛・ゆかねこ・misa
写真・加工/ゆかねこ・ゆっぴー
テープ起こし/yoko・がらっぱち
文・構成/Yuka Kaneko

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『自分たちが足りないと思うこと、欲しいと思うものを自分たちで作り上げていく』を現実に!夢を1つずつ叶えるために!
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