”ひとりひとり「その人色のくれよん」を持っています。
17色あつまったら、どんなに素敵な絵が描けることでしょう!”
(『NPO法人 ぼくのくれよん』パンフレットより)
京浜急行線堀ノ内駅からほど近く、トンネルを抜けた先の住宅地にあるこちらの建物は、知的障害者を対象とした生活介護事業所『NPO法人 ぼくのくれよん』。名前にちなんだカラフルな外壁に目を惹かれます。
もともと店舗だったという2階建ての住宅を改装し、生活介護事業所としてオープンしたのは2013年のこと。
現在は10代~60代まで17名の方が元気に通っていらっしゃいます。
代表理事である重野美奈子さんにお話を伺いながら、アットホームな空間で利用者さんもスタッフさんも和気あいあいと過ごされている様子を見学させていただきました。
どうぞご覧ください。
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1階は店舗として利用。地域の方たちが集まるコミュニティの場にもなっています
▲1階入り口部分はガラス張りになっているため、中の様子がよくわかります
中へ入ると…
▲可愛くラッピングされた雑貨やお菓子がたくさん!
置いてあるものはほとんどがこちらの事業所の手作り製品。以前店舗だった1階の間取りを活かし、販売スペースにしています。
これは?あれは?と取材メンバーもあちこち目移りしてしまうほどでしたが、なかでも気になった商品をいくつかご紹介すると…
[雑貨編]アイデアとセンスが光る!可愛い&実用的な布製品
▲りぼんを組み合わせて作ったコースター、5枚入り(200円~)。人気商品です!
▲缶入りの針さし(300円)!この発想は斬新!モコッとしてるのがとっても可愛いです。
▲いろいろ使えるキルトマット(200円)。
Q.これらの布製品には共通点があります。なんでしょう?
気になる答えは…
このあとご紹介する、利用者さんたちのお仕事の様子を見るとわかります!
[食べ物編]国産材料と有機栽培にこだわった焼菓子。コーヒーとお菓子のセットもおすすめ!
▲焼菓子は全20種。その日によってどの味がお店に並ぶかはお楽しみ!
▲クッキーとドリップコーヒーの詰め合わせ。プチギフトにぴったり!
▲マーマレードジャム(\300)は寄付でいただいている大津のみかんを使って作っています。数に限りがあるので、ぜひご予約を!
・・・
地域の方やボランティアさんが持ち寄ってくれるものもたくさんあります
▲写真左上の布ぞうりはなんと86歳のおばあちゃん作!
ほかにも着物の生地でできたバッグや木の組み細工、紙製品など、
「みんなに見てもらいたい」
「触って遊んでもらいたい」と、
作って持ってきてくれるのだとか。
▲海外のポストカード?いいえ違います!
これらの写真はすべて、三浦半島内で撮られたもの。「三浦ってこんなにきれいだったんだ!」と驚いてしまいました。
・・・
ここは店舗というだけでなく、時には近所の方たちが立ち寄って談笑したり、ガイドヘルパーさんたちが集う場所にもなっているんだそう。地域との繋がりを大事にしていることがわかります。
▲「いろんな方に助けてもらいながら、ここまできています」と話すのは代表の重野さん。
1Fのトイレはどんな方も使いやすいよう、広いつくりになっています。
▲洗面台のカラフルなおはじきは遊び心で埋めたもの。利用者さんも好きな色を見つけると喜んでくれます。
▲店舗の奥には改装時に作り付けてもらったという下駄箱。
外から来たら、洗面台で手を洗い、下駄箱で靴を履き替えて上がるという流れが自然とできています。
実際にいろいろなお仕事をしているところにお邪魔しました!
菓子製造室/1階
本日の菓子製造チームの皆さんです!
▲それぞれの担当を決め、流れ作業で作っていきます
▲お菓子の種類ごとに用意されているレシピカード。ひとつひとつ工程を確認しながら進めることができます
▲ラッピングは種類によって色柄を分けています
2階へ
2階には事務スペース、男女別に分かれた荷物棚、布製品などをつくる作業部屋があります。
布製品作業/2階
▲こちらの作業部屋では縫い物の真っ最中!
皆さん慣れた手つきで、集中して作業していらっしゃいました。
こちらで作っている布製品、実はすべて「なみぬい」でできているんです。
もともと手先の作業が好きな利用者さんが多く、みんなができることを活用しよう!ということで、「なみぬい」を採用。
仕上げの難しいところは職員さんが担当しますが、それ以外は利用者さんがしっかりとやってくれます。
…というわけで!
冒頭でご紹介した布製品の共通点は、
A.「なみぬい」でした。
▲材料は製品ごとに分かれて引き出しに入っています
▲作業部屋にある冷蔵庫は利用者さんが使うものと職員が使うものと2台あります。
利用者さんが自分で食べたいものを買ってきて入れておくことができます。
せっけんも作っています
お店で使われたサラダ油やラードをリサイクルした廃油せっけんも作っています。
川や海に流れても汚染をしない、環境に配慮したせっけんです。
▲牛乳パックをリサイクルしてせっけんの台紙を作ります
▲材料を引き出しにストック
その日にやりたい仕事を自分でチョイス!自然と譲り合いが生まれる『ありがとうカード』って?
▲たくさんあるお仕事は種類で色分けされて、さらに工程ごとに1枚ずつ札になっています。
例えばピンクだったら菓子製造で、工程は
・仕込み
・並べて焼く
・袋につめる
と細かく分かれています。
▲その日にやるお仕事の中で、自分がやりたいところに名前を貼っていきます。
もちろん、希望が偏って人数が合わないこともあるので、その時はくじ引きをします。
でも!最近ではくじ引きをしなくても、自分から他の仕事に移ってくれたり、やりたい人に譲ってあげるやり取りが見られるんだとか。
そんな時活躍するのが『ありがとうカード』。仕事を変わったり譲ってあげた人には『ありがとうカード 』を渡し、次のお仕事のときに優先的に選べるようにするという仕組み。
ちなみに職員さんも、その日どの仕事につくかはお楽しみです。
建築士さんの技あり!空間をうまく利用して使い勝手のいい可動棚を付けました
利用者さんのものを置くスペースは、男女で部屋を分けて配置しています。
▲女の子用荷物置きがこちら。建築士さんに付けてもらった可動棚がとても使いやすいです。
▲男の子のものはこちらに。階段スペースをうまく利用して棚を作ってもらいました。
1日の流れはみんなが見やすい廊下のボードに掲示
▲その日のタイムスケジュールを掲示。日によっていろんなパターンがあるそうです。
▲ボードにはメンバー(利用者)さんだけでなく、ガイド(ヘルパー)さんの予定も一緒に書かれています。
皆さん予定を見るのが大好きなんだとか。
お昼ごはんは好きな場所で自由に!
ここでのお昼ご飯は、自分たちでお弁当を持ってきたり買ってきたりする日と、仕出し弁当を注文できる日とあります。
▲この日は『なごみ弁当』の日でした!
最近、席取り合戦が面白いんです!(笑)と重野さん。
重野さん どの部屋で誰と食べてもいいんですが、場所が決まっている方もいれば、その日の気分で変えてみたり、小さなテーブルを置いて2人で顔を向かい合わせて食べていたり…。毎日いろんな動きやこだわりが見えて面白いです。
お仕事のモチベーションをアップするため、ちょっとした工夫も
▲毎月のお給料の明細はオープンにし、どの仕事をどれぐらいしたか利用者さん自身がわかるようにしています。
▲午後のティータイム。飲みたいものを選んで名札を貼って、お仕事が終わった後のお楽しみにします。
事業所の外には自販機があるので、そこで好きな飲みものを買う人も。
職員体制は手厚く!常勤と非常勤をうまく組み合わせて配置
職員さんの数は、
- 常勤4名
- 非常勤3名
- 看護師1名
部屋が多く細分化されてしまっているため、1人ずつ部屋につくことを考えると1日に5~6人は必要。
- 特に人手が必要な日中の作業時間は非常勤のパートさんが活躍しています
- 利用者さんの中にはてんかん発作がある人も多いため、外出時は必ず付き添いの職員と事業所で待機する職員で、何かあった時にすぐに連絡を取り合えるよう体制を整えています。
外出時はみんなで名札を下げることで、団体行動をしているという意識づけに
重野さん 外に出たときに、所在不明が起こると大変なので、皆さんこれを下げて外出するようにしています。
つけていることで利用者さん自身も「今はみんなで出かけてるから勝手に動いちゃいけないな」という意識が身に付くので、それだけでもずいぶん違います。
地域作業所から生活介護事業所へ。代表理事・重野さんの思い
生活介護にしたことで、一歩踏み込んだ支援ができるように
重野さん 10代から60代までいらっしゃると、そのご家族の考え方も本当にさまざまです。
ヘルパーさんを使うことに対しての抵抗感だったり、お金がかかるんじゃないの?という不安があっても誰に聞けばいいかわからないとか。いろんな事情を抱えていらっしゃるなかで、やっぱりこちらから家庭の中まで一歩踏み込んで、ということも必要になってくると思うんです。
ここは嘱託医をフロムワン診療所にお願いしていますが、そこにかかっていない利用者さんもいらっしゃるので、利用者さんの通っている病院へ看護師や職員が付き添ったり、本来、生活介護の枠のなかには入ってないことでも、暮らしていくなかで必要なことは対応していきたいと思っています。
楽しいお話を交えながら、案内してくださった重野さん。
ありがとうございました!
『ぼくのくれよん』の基本情報
NPO法人 ぼくのくれよん
所在地/〒238-0014 横須賀市三春町5-95-14
TEL/046-823-1608
代表者/重野美奈子
事業内容/生活介護
定員/20名
sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点
重野さんとは会議や販売イベントなどでもお会いさせていただいているのですが、なかなかゆっくりとお話を伺うことができずにいたので、今回の取材で改めていろいろなことを聞かせていただきました。
立ち上げからのエピソードもご家族総出でペンキ塗りをされたなど、まさに私たちが今やっていることと重なり、とても共感しました。
想いがあり、作り上げていく過程は楽しいだけではないですし、見えないところでの大変さもたくさんあったと思います。事務所の中を案内していただきながら、重野さんのお話を伺い想いを馳せてしまいました。
これからも運営面など、いろいろと教えていただきたいと思っています。
・・・
取材日/2018.02.21
取材/五本木愛・ゆかねこ・misa
写真撮影・加工/misa・ゆっぴー
編集/Yuka Kaneko

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