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【取材File】知的障害を伴う自閉症の早期教育を実施・研究する筑波大学附属久里浜特別支援学校

今回、取材(学校見学)で伺ったのは、知的障害を伴う自閉症の早期教育(幼稚部・小学部)を実施する他、特別支援学校の教育課程や自立活動の指導法等に関する研究を行う筑波大学附属久里浜特別支援学校。

「筑波大附属」や「久里浜養護」などとこれまで名前を耳にする機会は多かったものの、実際のところはよくわからないまま、その募集人数の少なさや研究所という響きから秘密のベールに包まれた存在としてあまり触れてはいけない場所なのかなと思っていましたが、今回、取材(学校見学)をさせていただいてその印象はガラリと変わりました。

壁を作っていたのはわたしたち、久里浜特別支援学校はむしろ情報をとてもオープンにしている学校でした。

案内をしてくださった副校長先生に興味深いお話をたくさん伺ったので、その取材内容をご紹介したいと思います。

こちらの記事をA4サイズ1枚にギュッとまとめたPDF版はこちら!>> 【取材File.08】筑波大学附属久里浜特別支援学校

文部省管轄の国立久里浜養護学校&研究所としてスタート

それまでは障害種ごとの発達のみが研究されていましたが、昭和48年の設置当初からこちらでは重度・重複障害児を対象にした教育研究を行い、必要な環境やカリキュラム、教員の資質を研究し、また指導法の開発等を行い、その成果を全国の養護学校(現特別支援学校)等に広めてきました。

30年にわたる研究の末、十分な成果を得られたということで平成16年にその役割を終え、国立久里浜養護学校から全障害をフォローできる唯一の研究機関である筑波大学の附属に移管され、その教育・研究の対象を知的障害を伴う自閉症児に転換し、今年で12年目を迎えました。(2016.05現在)

 

それでは施設内を見学!

小学部のエントランスと下駄箱

▼まずはエントランス。右側に2台のスクールバスが見えますが、スクールバスは小学部のみ利用できます。
image

▼小学部の下駄箱。モニターには園内活動の様子などが映し出され、児童自身が経験を想起できるように工夫されています。
筑波附属久里浜特別支援学校下駄箱

▼PTA活動をしたり親睦を深めたり…保護者が自由に使える部屋です。
筑波附属PTAルーム

幼稚部の見学

送迎バスはないので保護者による送迎か移動支援を利用する方が多いとのこと。気になる保育料は……収入等に応じて違いはありますが年間で2800円!?詳しくは筑波大学附属特別支援学校にお問い合わせください。

▼幼稚部の園庭。
筑波附属幼稚部の園庭

▼幼稚部のプレイルーム。広々!
筑波附属幼稚部プレイルーム

▼幼稚部のホール。広いスペースに運動設備が配置されています。
筑波附属幼稚部ホール

▼庭遊びを楽しむ幼稚部の子どもたち。思い思いに遊んでいるように見えてちゃんと先生たちは課題の狙いを個別に設定しているのだそうです。
筑波附属幼稚部庭遊び

▼幼稚部の教室活動。手前で個別指導、奥のスペースでは自由遊びをしています。
幼稚部の教室

▼棚丸ごとひとつがひとり分の課題。ひとりひとりに合わせて活動の課題が準備されています。
筑波附属幼稚部の活動課題

寄宿舎の見学

遠方(通学に90分以上)のお子さんは寄宿も可能。寄宿は6名受け入れ可能で現在(2016.05)は東京2名、川崎2名、横浜1名のお子さん5名が利用。週末は自宅に帰ります。

▼こちらが寄宿舎の共有部分。自由時間を過ごします。
筑波附属寄宿舎

▼居室部分。低学年は共有スペース、高学年は仕切りでプライバシーを確保。
筑波附属寄宿舎居室

▼寄宿舎のダイナミックなクジラの壁画は生徒の父親や兄弟が中心になって描きました!敷地内に横断歩道を配し、疑似体験ができるように工夫されています。
筑波附属寄宿舎の壁画

小学部を見学

▼今回は2年生の教室を見学させてもらいました。
筑波附属2年生の教室

▼中ではちょうどボールを使った活動中!
筑波附属2年生の活動風景

▼トイレも広々、かつて肢体不自由児の養護学校であった名残です。ただ、実際の社会で対応できるように、教室についているトイレではなくあえて教室外の共用トイレを使うように指導することもあるのだとか。
筑波附属小学部トイレ

▼2年前に保護者が作った図書室「おひさまぶんこ」の入り口のデザインにもこだわりが感じられます。
筑波附属おひさまぶんこ
▼蔵書は1000冊以上、大型絵本や電子書籍も備え、くつろげる空間で子どもたちにも大好評!
筑波附属図書室

▼教室に面した中庭では野菜を栽培。偏食が多い自閉症児ですが、自分で作った野菜は食べることが多いんですって!
中庭の菜園

その他

▼海を一望するホールで身体を動かす活動中
筑波附属ホール

▼海を臨む最高のロケーション。海外から視察に来られた方もこの景色には驚かれるのだとか。
image

▼ランチルーム。待つのが苦手な自閉症のお子さんが多いので食事はクラスごとにとります。お手伝いのできる子は配膳を担当。片付けはみんなでします。どの食器をどこに片付ければよいか視覚的にわかりやすいように工夫されてます。
筑波附属ランチルーム

▼当日の給食。隣接する研究所で作ったものを運んできます。おいしそう!
筑波附属給食

▼宿泊の練習ができる部屋も完備。年に最低1回は宿泊学習を行い、例えばお風呂や掃除体験をしたり…。海外や地方からの見学者のゲストルームとしても利用されます。
筑波附属宿泊学習

▼特に普段見ることのできない入浴の様子などを教員が観察することで課題を見つけ、家庭にフィードバックすることも目的のひとつなんだとか。
筑波附属浴室

▼子どもたちは水が大好き!今夏はこちらに組み立て式の大型プールも設置予定です!
筑波附属プール設置予定地

▼校庭
筑波附属校庭

▼さてさてこちらはお宝!?あの有名な金澤翔子さんの書です。こちらに関する貴重なエピソードは是非見学の際に副校長先生から直接お聞きください!
筑波附属の金澤翔子さんの書

 

6名のクラスに先生3名って手厚いの!?

子ども2名に対して職員1名。つまり、各クラス定員が6名なので、職員は1クラス3名配置されます。

これを聞いて思わず「子ども3人につき職員1名のひまわり園より手厚い!」と声が上がりましたが、副校長先生のお話によるとそんなことはないのだと。というのも、こちらは教員を育成する任も負っているため、配置される先生の内訳をみると

  • 大学採用のベテランが1名
  • 3年間の研修期間の2年目になる教員が1名
  • 新人が1名

となっているのだそうです。3人という数字だけを見るのではなく、その先生のスキルや経験にも注目しないといけないんですね。

今後、定員を増やす予定は?

それは「ない!」と、副校長が断言されていました。研究テーマに合わせた子を選ぶことも、また軽度な子ばかりを集めることもない。これは、特性がそれぞれ違う自閉症のお子さんのひとりひとりの実態に合わせた教育を重視しているため、あえて同じ障害特性のお子さんを集めて集団にする必要はないのだとか。

取材メモ

学校生活ではとかく集団が大事と謳われがちで、我々障害を持つ子の親もついつい集団という言葉に漠然と期待してしまうところがありますが、どのような集団でどのような体験をさせることがその子の成長につながるのかを見極める必要があるんですね。これはちょっと目からうろこでした。

 

募集人数は?選考方法がじゃんけんってホント!?

幼稚部(3~5歳)、小学部(6~11歳)までの各学年の定員は6名。

幼稚部入園時と小学部入学時にそれぞれ募集が6名のみという狭き門ではありますが、例年出願の倍率は幼稚部で1.5~2倍、小学部では3倍程度。

昨年度の小学部の選考を例にとると18名が出願し、その後、お子さんの行動観察、保護者と面接、校医による診断などを経て、12名まで絞り(軽度の場合は支援級への進学をご提案することも)、その後はじゃんけん…ではなく、くじ引きで最終的に6名が決まるそうです。

とにかく公平性は絶対!幼稚部から小学部へ上がる際も優遇措置は一切なく、出願者は全員同条件で選考されます。

なお、在籍人数が少ないためPTAの役員はやはりどうしても保護者のみなさんにお願いすることになるとのことです。

世界からも注目される知的障害を伴う自閉症教育&研究

教員免許取得のための講座を受け持つほか、毎年多くの国と地域から視察を受け入れています。

横須賀市内でも養護学校から毎年研修を受け入れたり、障害福祉課からオーダーを受けて事業所向けに講演を行ったり、また支援級の教員向けの研修や教職員向けの公開セミナーも定期的に開催されています。

自閉症という言葉だけを見れば一般的な周知は広がってはきていますが、自閉症の特性は本当に人によって様々、そして実際にどのようなアプローチが求められるのか、教育の現場ではどのような配慮が必要なのかといった点についてはまだまだ十分に浸透してるとは言い難いのが現状。

詳しくはこちら(外部リンク)>> 筑波大学附属特別支援学校 公開講座のお知らせ(対象は教員・保育士・施設職員の方々を予定)

取材メモ

研修や交流が活発に行われることで、市内のどこの学校に入っても、自閉症に対する適切な指導法やカリキュラムによる教育が受けられるようになると親としては大変心強いなと思います。

 

閉鎖的なんてとんでもない!誰でも教育相談受けられます。

各種団体や自治体レベルでなくてももちろん大丈夫!こちらでは、0歳から12歳までの障害のあるお子さんの教育や養育に関する支援や助言にも力を入れています。

直接、来校しての相談はもちろん、電話やEメールでの相談にも応じてくれるんだとか。

専門機関ならではの見立てやアドバイス、そして就学時の進路決定のセカンドオピニオンを求めるなど、まずはお子さんについての困りごとを聞いてもらうことから気軽に相談してみてはいかがでしょうか。

詳しくはこちら!(外部リンク)>>筑波大学附属特別支援学校 教育相談室

取材メモ

心強い相談相手になってくれるのは今回、私たちに校内を案内してくれた副校長先生です。とっても気さくで、きれいごとばかりではない障害児教育の裏側についても色々と興味深いお話をたくさん聞くことができました!

 

筑波大学附属久里浜特別支援学校の基本情報

〒239-0841 神奈川県横須賀市野比5-1-2
TEL / 046-848-3441(代表)
FAX/ 046-848-3740

詳しくはホームページで!

日常のトピックについても配信中です。またドラマのロケなどの利用も多いこちら、ロケ情報も今すぐチェック!
http://www.kurihama.tsukuba.ac.jp

学校見学・お子さんの発達に関する相談について

日時/ 各学期の毎週火曜日・木曜日の午前10時頃から
おら申し込み/ あらかじめ当校副校長(TEL/ 046-848-3444)宛に照会のこと

※入学を視野に入れた見学は上記の曜日以外も相談に応じます。

 

sukasuka-ippo隊長・五本木愛の視点

今回見学させて頂いた筑波大学付属支援学校は、地元である私でもほとんど実体をしることのなかった場所。とにかく秘密のベールに包まれているといった印象でした。

ですから、校内や授業風景などを一般に公開していることにまずは衝撃を受けました。

お話を伺うと創立当初は知的障害のお子さんだけではなく身体、聴覚、視覚障害等を重複しているお子さんが通う学校だったそうです。そのため、施設内のいたるところに障害に対しての配慮がなされ、バリアフリーをきちんと考慮して建てられた建物であることが見て取れます。

また、筑波大学付属支援学校の本来の役割についても詳しく伺い、入学の門は決して広くはないのですが、入学できなくても個別の相談を随時受け付けていて、誰でもその専門的な助言を受けることが可能であるとことも今回の取材を通して初めて知りました。

横須賀市にこれだけの専門機関があるということは実に喜ばしいこと。横須賀市の支援級や養護学校とのより密接な連携が実現すれば、障害児教育のノウハウや情報が広く浸透し、障害児がそれぞれの障害特性に応じた適切な指導法とカリキュラムで学校教育を受けられるようになるのではと期待が膨らみます。

こちらの記事をA4サイズ1枚にギュッとまとめたPDF版はこちら!
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取材日/ 2016.05.12
取材/ 五本木愛・misa・がらっぱち・ゆかねこ・Kyoko Aoyagi・pototon
文/ pototon・五本木愛・misa
編集/ pototon
情報監修/ 筑波大学附属特別支援学校

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『自分たちが足りないと思うこと、欲しいと思うものを自分たちで作り上げていく』を現実に!夢を1つずつ叶えるために!
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