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【取材File】県の施設を指定管理で運営!診療所スタッフや専門スタッフがチームで支える障害児者支援施設『三浦しらとり園』/社会福祉法人 清和会

今回は、横須賀市長沢にある障害児者支援施設『三浦しらとり園』を取材させていただきました。


県の施設として昭和38年に開設され、現在では指定管理制度によって社会福祉法人清和会が運営されている、市内でも大きな複合施設です。

今回は、

  • 子どもたちが暮らす児童課と短期入所サービスの状況
  • 障害児者を支援する給食事業では、ニーズに合わせた7形態の食事や障害特性に応じた配慮
  • 早期対応で利用者さんの生活を支える診療所
  • 専門スタッフの配置

など、勉強になるトピックスが盛りだくさん!
それぞれのトピックスに沿って、細かな配慮・支援の仕方に迫ります。

『三浦しらとり園』沿革

ルーツは神奈川県立の精神薄弱児施設「長沢学園」でした

その始まりは昭和38年。児童の定員100名でスタートしました。

昭和58年に再整備、建て替えをして「県立三浦しらとり園」に

県の「やまゆり計画」第1号施設として、全面建て替え。児童・成人の入所部門と、通所部門・地域療育・診療所機能を加え、再整備されました。

平成23年に指定管理施設として清和会による運営開始

平成20年4月 障害者自立支援法に基づく「指定障害者支援施設」に移行

平成21年6月 当園の指定管理制度導入が県から発表

平成23年4月 指定管理施設として県職員52名(翌年は26名)が残るかたちで清和会による運営開始。

平成25年~  清和会の職員のみでの運営開始

このように、段階的に県職員の配置を減らしながら引き継ぎをして、25年からはオール清和会職員になりました。今は県の施設を清和会という民間の社会福祉法人が運営しているということになります。

なお、三浦しらとり園の特徴は3つあります

  • 1つ目は、児・者併設施設であること。障害児入所施設は、三浦半島地域で唯一の存在です。
  • 2つ目は三浦半島地域を圏域として、拠点的な役割を持っていること。地域の障害者への短期入所などのサービス提供や関係施設等への専門的助言・支援などの機能があります。
  • 3つ目として重度の障害者の入所に対応した診療所機能を有することです。

Q. 拠点的な役割で短期入所を行っていると聞きましたが?実情について教えてください

地域の知的の障害を持つ児童・成人の方々が、可能な限り地域生活を継続できることを念頭におき、短期入所サービスを行っています。

具体的には、ご家族の休養やご家族の入院や冠婚葬祭など緊急の場合などにもご利用いただいています。サービスをご利用いただいているのは主に、横須賀・三浦圏域の方々になりますが、緊急の場合には県所管の他の地域の方もご利用いただくことがあります。

平成28年度は、実際利用されている方が日中一時サービス利用は480人で、延べ利用日数は1451日、また短期入所サービス利用は731人で、延べ利用日数は3412日でした。

Q. サービス提供にあたって工夫している点は何ですか?

ご利用の2か月前から受付をします。受付後には、できるだけ多くの方に利用していただけるように、日程や受け入れる寮などの調整をします。

またサービス利用者の方が快適にご利用いただけるよう、ケアの提供方法などについても、ご家庭や生活寮、診療所、他の事業所や行政ともきめ細かな連携をとって進めています。

Q. 申し込み方法について教えてください

まずは当園ケースワーカー宛にお電話ください。ご本人の様子について聞き取りを行います。その後、しらとり園を見学していただいた後に契約を交わします。

短期入所サービス利用の前には、泊まる場所に慣れていただくために、ご本人に数回の日中一時サービスのご利用をお勧めしています。その後、短期入所サービスのご利用開始となります。平均利用日数は2~3日/月程度です。

広い施設内を見学!


▲管理棟から居住棟へ向かう外廊下。緑に囲まれて、とても気持ちがいいです。

まずは児童課へ[南棟1F]

児童課には1寮と2寮があり、1寮は男の子、2寮は女の子がそれぞれ生活しています。


▲壁に飾られたアイロンビーズを発見。子どもらしい作品たちにほっこり。


▲廊下には子どもたちの作品がたくさん貼られていました


▲こちらは女子寮のデイルーム。広々として明るい!
向かって左側には食堂、奥にはくつろげる小上がりスペースや、テレビのお部屋があります。


▲こちらが食堂。仕切りが立ててあったり、個々が落ち着いて食事できる空間が確保されています。


▲テレビルーム。それぞれの居室にもテレビはあるそうですが、日中はここで見ていることもあります。


▲左右に居室が並ぶ廊下。レトロな雰囲気が素敵でした。
もともとは4人部屋でしたが、個室化するためにそれぞれの部屋を壁などで区切って2人部屋・1人部屋を作っています。


▲短期入所のお部屋。
3泊以上の人もいれば、日中一時サービスで日帰りで利用される方もいらっしゃいます。定期的に利用される方が多いそうです。


▲トイレも広々。
ここは女子寮なので立ち便器は使いませんが、幼児の男の子用にひとつ備えてあります。

▼浴室


向かって右側には大きなお風呂、左側には1人用の浴槽&シャワーが配置されています。

案内してくださった2寮の寮長、古山さんにお話を聞きました

元々は県職員として30年以上こちらで勤務されていた古山さん。定年して、指定管理となったしらとり園に今年4月に戻ってきたばかりなのだそうです。

Q.どんなお子さんがいらっしゃいますか?

ここに入所してくるお子さんは、児童相談所において、知的障害があり併せて親御さんがいなかったり、ご家庭で障害児としての適切な養育が難しいと判断された児童が対象となります。入所児童の地域は横須賀市がやはり一番多いですが、県内の政令市を除く他の地域からも利用者を受け入れています。

利用者さんは重度の障害の方もいれば、軽度の方もいますし、精神面のケアが必要だったり、行動障害がある方もいらっしゃいます。

Q.こちらにいるお子さんは、日中は学校に通われてる?

日中は養護学校や支援級など、それぞれに合った学校に通学しています。
軽度の方は交通機関を利用するなどして自主通学しています。重度の方はスクールバスを利用しています。

Q.おうちに一時的に帰ることは?

あります。保護者の方から連絡があって、本人も行きたいってことであればどうぞというかたちです。
だから、冬休み・夏休み以外でも週末に帰宅するお子さんもいます。
一方、ご家族の方が面会にいらっしゃる場合もあるので、ケースバイケース。ご家族の事情によって面会の難しいお子さんもいるので、その場合は児童相談所と相談しながら適切な配慮をしています。

Q.お子さんの移動・入れ替わりは多いですか?

原則、養護学校高等部3年の卒業で、地域の成人の入所施設、グループホーム等に移行します。ここではこのことを「地域移行」と言います。ただ、先方に空きがないときは引き続き満20歳になるまで入所を継続できます。

 平成24年4月に改正児童福祉法が施行され、20歳以上の在所延長規定が廃止されました。20歳を超える加齢児の方は、平成30年3月まで入所が継続される経過措置が講じられましたが、それまでに移行先を見つけなければいけないという、いわゆる「30年問題」(引用)があり、今年の2月には経過措置期間がさらに33年3月まで再延長される方針が国から示されたものの、地域移行については引き続き今後の課題です。

平成26年度全国知的障害児入所施設実態調査報告/公益財団法人日本知的障害者福祉協会 児童発達支援部会より引用

Q. 進路へ向けての取り組み

高等部の児童に関し、学校での進路指導に加え他の施設へ体験実習に行ったり卒業後の就労のイメージを掴んでもらいます。一人一人の利用者の目標を明確にし、関係機関と調整及び実現に向けて定期的に検証し、地域移行へ向けた取り組みを行います。高等部2年の人に進路の希望を聞くと「喫茶店のウエイトレスをしたい」と語る人もいれば「まだわからない」と言う人まで様々な人がいます。こうした本人の意向や希望を踏まえて、職場体験などをさせてくれる場所を探すなど、こちらも開拓していくことが課題だと思います。ご家族の希望も聞きながらも、本人の意向を一番に尊重しながらやっていきたいですね。

Q.お子さんと接するうえで、心がけていることはありますか?

そうですね、最近は親の離婚や病気などにより、それでなくても難しい障害児への養育が十分にできない家庭が増えていますので、心のケアの必要性を感じることが多いです。
また、自閉症など通常の環境では対応が難しいとされる、いわゆる強度行動障害の方もいらっしゃいますので、私たちも強度行動障害専門員と連携して日々支援に取り組んでいる状況です。

三浦しらとり園には「強度行動障害専門員」「心理士」「理学療法士」などの専門職が配置されています!

  • 強度行動障害専門員(2名)…行動障害のある方に対して、必要な支援を現場の職員に助言したり、一緒に生活支援上のプログラムを組み立てるなど、関係職員とともにチームで支援しています。その他、当園や関係機関職員の支援技術向上のための公開講座や事例検討会等研修の開催、他機関や学校からの相談に応じて利用者支援方法の助言を行っています。
  • 心理士(2名)…主に子どもたちと心理面接をしたり、ソーシャルスキルトレーニング(上手にコミュニケーションが出来るようになるための練習)やセカンドステップ(集団生活の中でのコミュニケーション能力や問題解決の能力を育てる)をしたりしています。また当園や圏域の関係機関職員を対象とした公開講座を開催しています。
  • 理学療法士(1名)…利用者の高齢化に対応し歩行訓練や機能訓練など、個々に応じたリハビリプログラムを立てたり、現場の職員に助言します。

色々な専門職がいるのでチームとして支援ができる、というのが特徴です。

成人の方の利用について

成人の方の寮は3寮から8寮までで全部で6寮。現在84名の方が入所されています。(平成29年4月現在)

  • 生活第一課(5寮・6寮)… 高齢で身体機能に障害がある方が中心。医療スタッフ、理学療法士等と連携。
  • 生活第二課(3寮・4寮・7寮・8寮)… 自閉傾向や行動障害のある方が中心の寮で、個別の対応が必要な方が多い。
  • 通所部門 … 在宅の方が通所し、日中9時から16時の間、自分らしい時間を過ごせるように生産的活動・創作的活動・ウォーキング・昼食・室内運動・余暇活動等の提供をしています。

ココがすごい!【給食事業】細かに配慮された献立と効率の良い厨房作業に注目!園の管理栄養士と給食委託業者がタッグ!


▲管理栄養士の渡部さん(写真左)・石渡さん(写真・右)


この日のために作ってくださったというスライドショーでとてもわかりやすく説明していただきました!

・・・

清和会では、
栄養的に配慮された安全でおいしい食事を、温かいものは温かく、冷たいものは冷たく提供する という給食の理念をもとに食事作りを行っています。

  • 食数は、1日平均1回あたり130食前後。
  • おやつは児童課のみ。
  • 平日のお昼は、通所部門の方にも給食を出しています。
  • 支援級、養護学校高等部へ通う子ども達にはお弁当を作っています。

給食の厨房業務は、業者に委託しています

管理栄養士が献立を立てる際には、1人分の分量を野菜や肉、魚などの食材から調味料まで全てグラム単位で細かく設定しています。食材発注から調理、盛付け、食器洗浄などの厨房業務は給食委託業者に委託しています。

【Point.01】温度管理がすごい!

配膳には、多くの病院でも使われている温冷配膳車を使っています。


▲温かい料理を入れるオレンジ色の部分は65℃、冷たいデザートなどを入れる水色の部分は5℃に温度設定されています。この温度は、食中毒菌が繁殖しやすい30-40℃を避けた温度になっています。

【Point.02】食形態が細かい!

 


▲一番右が普通食。左に行くにつれ、やわらかく飲み込みやすいものになっています。

  • 以前は、おかずで言うと[普通食・きざみ・超きざみ・ミキサー]の4形態でしたが、徐々に高齢化が進み、噛む・飲み込む機能が低下してきている方が増えてきたので、ここ6-7年の間に、[一口大・ 超きざみソフト・ソフト食]というのを導入しました。
  • ソフト食はミキサーにかけて再度固める加工が必要です。盛り付ける際には、できるだけ普通食に近い見た目になるように、成型の仕方や盛付けには工夫しています。
  • ご飯も、普通の米飯やお粥だけではなくて、[粒粥ゼリー、粥ゼリー]というものを用意しています。

ココが知りたい!粒粥ゼリーと粥ゼリーの違い
粒粥ゼリーは揺らしても食器につかず、プルンとしてベタつきません。
粥ゼリーは粒粥ゼリーをミキサーにかけたもので、完全に粒のないゼリー状です。

お粥ではむせるの?
お粥を食べていると、唾液の中に含まれる消化酵素のアミラーゼがお粥に含まれるデンプンを分解してお粥がサラサラの液体状になり、サラサラになってしまったお粥でむせる、ということがあります。粒粥ゼリーと粥ゼリーには、そのようなことを防ぐ特別なゲル化剤を使用して、食べてもサラサラになってこない、まとまりがあり飲み込みやすくしています。

  • 飲み物に入れるとろみ剤の量は、飲み物(液体)に対して1%~3%と決まっています。3%以上になると、粘りが強くなり却って飲み込みにくくなるので、ゼリー状にしています。

【Point.03】さらに個人に合わせて細かく調整!

身長や体重、性別によっても必要な食事量は異なりますが、主にご飯の量で調整しています。

厨房で1人ひとりのご飯を量って盛り付けています。基本としている1日のエネルギー量は成人が2,000kcal、児童が2,300kcalとなっています。

その他、アレルギーや医師の指示による減塩食や糖尿病食にも対応しています。

 

【Point.04】ここ意外と大事!個人の嗜好への対応

  • 一般的にもそうですが、障害児・者の場合、特に偏食が目立つ方が多いです。
  • 例えば、混ぜごはんが苦手な方には、白いごはんとおかずとを分けて提供しています。チャーハンなら具を別に炒めておかずにする、などが配膳例です。
  • ハム・ベーコン・ウィンナーなどが入っていると食べられないという方には、それらを除いて代わりに卵を入れたりするなどの工夫をしています。
  • 麺は温かい料理というイメージを持っている方の中には、冷やし中華が食べられないという方もいます。そのような方には、ご飯とおかずを出したり、温かいラーメンスープをつけてラーメンにして召し上がってもらったりすることもあります。
  • 辛いものが苦手な方には、カレーを肉じゃが、キムチを白菜料理にするという対応も行っています。
  • クリームシチューや牛乳の入った料理が食べられない方には、コンソメ煮にしています。
  • その他、納豆が苦手な方には冷奴にしたり、牛乳が苦手な方には他の乳製品に代えたりと、できる限り対応しています。

【Point.05】色別の食札で利用者の注意点も嗜好も一目瞭然!

 
▲食事形態に合わせて色分け・詳細を表記した【食札】

左上のベージュが普通食。緑色が一口大、ピンクがきざみ食、水色が超きざみ食と超きざみソフト食、あとミキサーが白で、ソフトが透明。
左上には利用者さんの名前、その下の数字はご飯の量です。さらに嗜好も1人1人に合わせて対応します。

【Point.06】行事食や選択食はお楽しみ!バイキングまで!?

選択食は月に2回。人気メニューから選択!

選択食のメニューは、人気のある唐揚げや白身魚フライ、牛丼やかき揚げ丼といった丼もの、デザートなどを組み込むことが多いです。

主菜にかけるソースを選んでもらうこともあり、ワクワクしながら食事を楽しんでもらえるよう工夫しています。やはり自分で選んだメニューということもあって、皆さんよく召し上がっています。月に昼食と夕食1回ずつで、合わせて2回行っています。

お誕生日の月はリクエストメニュー採用!

入所の方に年に1度アンケートを実施し、その月にお誕生日を迎える方のリクエストをメニューにしています。

季節の行事にちなんだメニューも充実

  • こどもの日は鯉のぼりをイメージした食事にしたり、クリスマスはポテトサラダをリースの形にしたり、バレンタインはチョコババロア、節分はプリンを鬼の顔に、など、その月の行事にちなんだメニューを取り入れるようにしています。
  • 2016年度からは毎月19日を食育の日としてテーマを決めて、そのテーマに沿った食事を提供しています。

びっくり!体育館でバイキング開催!?

  • 年1回、バイキングを行っています。児童・成人通所部門の方に事前にアンケートを実施し、その中からメニューを考えます。入所の子どもたちを対象にバイキングを行った時には、そのたくさんのメニューをお皿などにおいしそうに並べるスペースが必要だったので、体育館で開催しました。人気の揚げ物はすぐなくなります(笑)。お寿司もにぎり寿司やのり巻きを目の前で握りました。とても喜んでくれて、取りすぎてしまう子もいました。
  • 2016年度は初めての試みで、デザートバイキングを行いました。皆さんとても喜んで、拍手が起こりました! もちろん、ソフト食の方には、ソフト食の方も食べられるようなデザートを作りました。

児童課の子どもたちと一緒に作る調理実習も!

  • 子どもたちから、「こういう料理を作りたい!食べたい!」という意見を聞いて、調理実習もします。
  • 昨年の夏休みにはピザやうどん、冬休みにはケーキ、一昨年のお正月は松風焼きなどのおせちを一緒に作りました。男の子も意外と器用に包丁を使います。
  • その他、昨年は梅干しを作りました。作った梅干しでおにぎりを握っておやつに出しました。

実際に厨房にお邪魔しました!

  •  調理は電動スライサーやオーブンを活用して効率アップ!
  • 食器洗浄はベルトコンベアーのものを使用。【作業の流れ】1人が食器の種類ごとに分け、もう1人は洗浄機に入れて洗う。そして熱風乾燥庫へ。80℃以上で2~30分、高温殺菌。

▼ちょうど、配膳車で給食を各寮に運ぶところです。

▲先ほど説明していただいた食札が立ててあるのが見えますね!


▲フラットトレーになっているので、ご飯やおかずを乗せたトレーをそのままセットできます。

温冷配膳車は全部で9台あり、それぞれの寮と通所部門へ給食を届けます。

ココがすごい!【診療所】何かあったらすぐに対応!看護師5名と医師が常駐、病院とも連携[本館2F]

三浦しらとり園には入所や通所・在宅サービスを利用している方々が利用できる診療所があり、社会福祉法人湘南福祉協会湘南病院に委託しています。本院である追浜の湘南病院と連携して、利用者さんの診察、ケアを行っています。

診療所の年間の利用者は…延べ8000人以上!?
  • 統計を見ると平成28年度の利用者は延べ8000名で、前年度よりも増えています。
  • 診療科目は精神科・内科・耳鼻科・外科・婦人科があります。その中で精神科の方が多いです。また歯科は週4日、歯科医師が診療しています。
  • また投薬された薬の管理もしています。
重症の方は病院で、フォローアップは診療所で

日常的な健康管理や、知的障害者の方に多いてんかん発作への対応、高齢化により目立ってきた転倒による軽いけが、ほかに先天性のものなど慢性的な疾患の対応は施設入所のままで行いますが、疾患が検査や集中的な治療、手術を要する場合は本院への入院で対応し、退院後は診療所と連携してフォローアップしています。

成人部門では重度の知的障害の方が大多数なので自分で不調を訴えられない方も多い

だからこそ早期の対応が大事で、余程の痛みがあってもご自分で症状を説明できない、辛さを訴えられない方が多いので、些細な変化を見逃さない支援員の観察の目と、その情報を共有することが大切です。早目早目で対応していかないと重症化しやすいですから。

心電図や採血などの検査も定期的に行っていますが、横になることができない方は座って行うなどし、適切に検査が出来るよう、臨機応変に対応しています。
また症状によっては、診療所の医師と看護師が寮に出向いて診察する場合もあります。

ナースステーションの紹介


▲案内・説明をしてくださった診療所 看護課長の奥村さん

こちらのナースステーションには

  • 看護師5名
  • 歯科衛生士1名
  • 事務1名

が勤務しています。

それに加えて各科の専門ドクター1名が、平日は日替わりで常駐。歯科は毎日治療・口腔ケアを行っています。

処置室の紹介


▲清潔な針と器具がそろっているので、ケガをしたところを縫ったりする処置も可能。


▲インフルエンザ検査機である『AG1』。この機械は一定時間の発熱者について30分程度ですぐに検査出来る優れもの。今シーズン、児童寮でインフルエンザがでたときは、早期に簡易判定が出来るので、陽性と判明したときが、夜間や休日であっても、寮閉鎖等の措置により速やかに感染拡大を防止できました。

開放感あふれる診察室で利用者さんの不安を解消!?


▲車が行き交い、花が咲く。そんな外の景色が見える開放的な空間となっているので、利用者さんには抵抗なく診察を受けてもらえます。

入所者さんのお薬を診療所で管理、日々を支える調剤室


入所者さんのお薬をここですべて管理しています。
その他、風邪薬や解熱剤、怪我をした時の軟膏、救急の時のお薬もしっかりストックしてあります。

利用者さんのために色々工夫をしています


▲歯科衛生士の宮島さんにお話を伺いました。

この診察室は、入所の方や地域サービス利用者を対象として診療を行っています。そのため診療と時間・回数を余裕を持って行う事が出来ます。実はこの部屋は特別な許可を得て治療室がレントゲン室を兼ねています。

「歯科診療に慣れてもらうために、色々と工夫しています。その一つがレントゲン室を兼ねた治療室です。通常レントゲン室は、狭い個室で撮ることが多くて、閉所恐怖症じゃなくてもちょっと圧迫感を感じますよね。それじゃ利用者さんたちは緊張するだろう、怖がるだろう、ということで部屋全体をレントゲン室にしようと設計されたわけです。」


▲中はこんな感じ。まさに歯医者さん、という感じですが、先程の診察室と同じように外が見える作りになっているため開放感があります。

基本的に通常の歯の治療は一般の方と同じですが、スムーズに行うために色々と工夫しています。

歯科の治療で緊張するのはみんな同じ。ただ、見通しを立てるのが苦手な方には、見通しをつけてあげること。

誰でも診察台に上がると緊張してドキドキしてしまうことがあると思いますが、診察台に座る目的が十分に理解できない人のために、事前に「これとこれをやったら終わり」という事を写真やカードを使ってしっかり見せてあげることで治療を頑張れる方もいらっしゃいます。併せて施設の中なので何度も利用できるので、ちょっとずつ経験を積むことで恐怖心が軽減していきます。

それでも治療が困難な方はしらとり園でも笑気ガスの吸入による鎮静法で、薬物的に恐怖心や不安をとってあげて、極力負担が少ない治療をします。

さらに、それでも処置室に入れない、治療台に座っても1分ぐらいで立ち上がってしまうような方で、治療する歯が多かったり、痛みが続く場合は神奈川歯科大学病院を紹介して、専門的な治療を行ってもらっています。そのあとのフォローはまたこちらで行っています。

今はブラッシング指導など管理をしている方が半数以上、みなさん少なくとも年に2-3回は定期診査を必ず受けてもらいます。

入所されている方で、自分で磨くのが難しい人には、寮職員が手を添えて一緒に磨いたり、磨けない所は職員が一緒に磨くこともあります。

神奈川県では、昭和50年代から、障害者歯科診療システムとして一次・二次・三次の診療体制を整備してきています。一次は開業歯科医、二次は地域の歯科医師会が運営するセンター、三次は神奈川歯科大学附属病院などの専門病院で構成されています。一般に診療が難しいと言われる障害児・者への日常的な歯科診療ケアから、全身麻酔などによる入院対応までこの体制で全県をカバーしています。

三浦しらとり園の診療所の歯科は、園の入所者や地域サービス利用者を対象とした歯科診療機関といえるので、先程のシステムになぞらえれば、一次・二次の役割を担っていることになると思います。

『三浦しらとり園』の基本情報

所在地  / 〒239-0842  横須賀市長沢4丁目13番1号
TEL /046-848-5255

詳しくはHPで!(外部リンク)>>http://www.kanagawa-id.org/seiwa/shisetu/shiratori/index.htm

運営 /社会福祉法人 清和会(指定管理)
施設の種類 /指定障害者支援施設
定員 /入所支援 児童40名・成人88名
職員 / 施設長2  生活支援部長1(兼務) サビ管8  支援員117  看護師5  管理栄養士2  ケースワーカー3  心理職2  強度行動専門員2  理学療法士1   管理課事務員4  相談支援専門員1  (平成28年4月1日現在)

sukasuka-ippo代表・五本木 愛 の視点

今回は横須賀市長沢にある障害児者支援施設『三浦しらとり園』に取材に伺いました。

開設が昭和38年と歴史も長く、この長沢では『しらとり園』があるということが地域として当たり前のことなのだと感じました。そのため、地域交流のイベントや地域の学校との交流も活発に行われています。この当たり前ということがとても大切な事なのですが、決して簡単なことではありません。

そして今回、児童課・給食事業・診療所(含む障害者歯科)について詳しくお話を伺い、強度行動障害への対応や7形態の食事の工夫など、拠点的施設ならではの取り組みを伺い、そうしたことが子育て支援や高齢化など、今、社会が直面している問題に繋がっているということがよくわかりました。こうした地道な取り組みによって築かれたノウハウが、福祉の現場はもちろん各ご家庭でも活用されることで色々な変化が生まれるのではないかと期待が膨らみます。

本当に勉強になることばかりの取材でした。ありがとうございました!

2017.04
取材/ 五本木愛・misa・ゆかねこ・pototon
写真・加工/ misa・pototon・ゆっぴー
文・構成/ yuka kaneko
編集/ takeshima satoko

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『自分たちが足りないと思うこと、欲しいと思うものを自分たちで作り上げていく』を現実に!夢を1つずつ叶えるために!
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