横須賀市上町にある『ぬくもりcafé なないろ』。運営するのは『社会福祉法人 なないろ』です。
こちらのカフェで働くのは、生活介護事業所『トライⅡ(ツー)』に通われている利用者の皆さんと職員さん。
そして、こちらに並ぶクッキーは、併設された『トライⅡ(ツー)』で毎日作られています。
今回は午後の訪問で、クッキー作りを見学することはできませんでしたが、利用者さん・職員の皆さんが笑顔であたたかく迎えてくださり、お話を伺うことができました。
お茶を飲みながらまったり!『ぬくもりcafé なないろ』
▲お店に入るとまず目に飛び込んでくるのは、利用者さんがみんなで作った焼き菓子!ずらりと並び、どれも美味しそう〜♪
▲木のぬくもりあふれる店内。カフェスペースもあるので、ゆっくり過ごすこともできます。
▲利用者さんが立つカウンター前には、クッキーやワッフルなど、様々な焼き菓子が並びます。
透明な窓からは、奥で作業をする利用者さん達の姿が!
▲カフェスペースでは、手作りクッキーと一緒にオーガニックコーヒーを楽しむことができます!
▲コーヒーはこちらで淹れます。有機栽培された豆を使用し、全て店内にて挽いています。
『ぬくもりcafé なないろ』で扱っている焼き菓子は10種類以上!
『トライⅡ』で作られている10種類以上のクッキー・焼き菓子リストがこちら!(▼2017.07現在)
Menu
Cookie’s★アイスボックス…100円
★ココアボール…180円
★ミックスクッキー…210円 Scone & Waffle★チョコチップスコーン…150円 ★ワッフル…200円 |
焼き菓子のほかに、オーガニックコーヒーやほっこり羊毛フェルト製品も!
Drip coffe★3種類各種…100円
Wool felt goods★アップリケブローチ…300円 Gift set※ご希望のクッキーセットも、事前にご注文をいただければご用意いたします。(箱代は別でいただいております。あらかじめご了承ください。) |
▲『トライⅠ』で作られているワンちゃん用のクッキーも販売されていました。
関連記事>>【取材File】イチオシはワンちゃんのための安心クッキー!生活介護事業所『トライⅠ(ワン)』ソーシャルスキルも大事に育てたい!社会福祉法人 なないろ/横須賀
▲こちらは福島県の復興支援バッジ。
・・・
厨房内を見学させていただきました!
▲広々していて、清潔な厨房。
▲ぬくもりを感じる木目調の水回り。清潔感があふれています。
▲調理器具もきちんと整頓され、クリーンな印象。
▲大型のオーブンで、一度にたくさんのクッキーを焼き上げます。
▲冷蔵庫も大型で使いやすさ抜群です!
▲10種類以上あるクッキーは、それぞれ余熱や焼く際の温度・時間が違います。こちらで確認すれば間違えることもありません!
▲冷蔵庫には夏季と冬季で異なるバターの使用量が、視覚的にわかりやすく掲示されています。
▲クッキー生地を天板に並べる際に使用するシート。
こちらを敷くことで視覚的にも並べる場所がはっきりわかりやすく、また、まっすぐ並べる作業を自然に身につけることができます。
生地作りから焼く作業まで、全ての工程を利用者さんが担当します
『トライⅡ』では、毎日、主にクッキー作りをしています。
- その準備からクッキー作り、洗い物や片付けの工程まで、全てを利用者さんがひとりで担当します。
- 「全体の見通しを持って作業をしてもらいたい」という思いから、流れ作業にはしていません。
- 段取りや難しいところに職員さんがサポートとして入る場合もありますが、それでも実際に職員さんが手を出すことはほとんどないそうです。
- 最初は計量するだけで半日かかってしまい、毎日、粉まみれで真っ白という利用者さんもいたそうです。
- また、初めの頃はクッキー作りが難しかった利用者さんも、努力して、どんどん上手になったそうです。
後日、作業の様子をお写真でいただきました!
▲黒いポロシャツ・白い帽子・マスク・青い手袋というのが『トライⅡ』の作業時のユニフォーム。
▲時には1,800個ほどの大量注文が入ることも!皆さん一生懸命、作業をされています。
焼きあがったクッキーはきれいにラッピング♪
step.01 できあがったクッキーはまずタッパーに入れて保管します。
step.02 次にこちらの袋にラベルを貼るのですが…
ここで活躍するのが謎の秘密道具!
▲そう、こちらはラッピング袋にシールを貼る作業の際に使用するガイドです。
この板に透明な袋を被せて、表と裏のガイドのシールの位置に合わせて、それぞれシールを貼ります。こうすることで、曲がることなくきれいに簡単にラベルシールを貼ることができます!
これも職員さんによるアイディアで、初めはダンボールで作ったそうで、こちらはリニューアル版です☆
「こういう作業を補助するための道具を工夫して作ることが、僕らの楽しみだったりします」と職員さん。
step.03 ラベルを貼ったラッピング袋にクッキーを詰め、熱シーラーを使って封をしていきます。
step.04 リボンを巻いて、完成!
▲ひとつひとつ丁寧にラッピングされています。それぞれの商品に合わせてデザインされたラベルも素敵です。
▲スノーボールやココアボールはカップに入っています。
▲袋詰め作業が得意な利用者さん!
▲配達の際に持参している給水ボトル。
配達は曜日が決まっているわけではなく、お客様に合わせた配達になっているので、クッキー作りの合間に行っています。
ふわふわふんわり羊毛フェルト製品の数々
『トライⅡ』ではクッキーだけではなく「羊毛フェルト」製品も製作。『ぬくもりcafé なないろ』にて販売されています!
商品ラインナップは
- アップリケブローチ
- マグネット
- ストラップ
- ブローチ…など
▲羊毛フェルト作業では、羊毛のわたにニードルを突き刺し、刺し固めて形を作っていきます。
▲集中を要する、とても細かい作業!
▲2Fでも作業が行われていました。職員の方も作業をしながら利用者さんの様子に目を配り、みなさんでお話ししながら和やかに作業されていました。
利用者さんのお楽しみ!創作的活動
『トライⅡ』では、クッキー作りや羊毛フェルト製品作りの他に、調理実習を週1回、絵画教室を月に1回行なっています。
リアルに表現。素敵な作品の数々!
取材に伺った日が、ちょうど絵画教室の日ということで、午前中に行った粘土作品を見せていただきました。
写真は乾かしているところで、次回、彩色をする予定だそうです。
▲車や動物、食べ物など。利用者さんによって作品は様々。
▲こちらはお皿とジャンボ餃子!!
▲バラの花。繊細に表現されています。
▲毎年、年初に書いているという書初めが飾られていました。
「私は美しいと書きました」
「俺は月って書いた」
と利用者さんが口々に教えてくれました。
生活の自立にもつながる調理実習
毎週木曜日に、5つに分かれた班ごとに交代で調理実習を行っています。
調理をすることで、生活の自立にも繋がり、自宅でも調理するようになった利用者さんもいらっしゃいます。
メニューもみんなで話し合って決めています。調理が難しいものが希望として出ることもありますが「やってみよう!」とチャレンジしています。
取材の翌日が調理実習の日ということで、メニューが決まっていました。
覗いてみると…「ハヤシライス」「ごぼうサラダ」「ゼリー」。デザートは欠かせないのだそうです。
▲本を見ながら、利用者さんひとりひとりが食べたい物を紙に書き出して決めています。
▲翌日の調理実習の準備で、材料を買い出しに行く利用者さん。
2Fも見学。設備については、使いやすさのほかに衛生面にも配慮
- クッキー作りも1Fだけではなく2Fでも作業ができるようになっています。
というのも、全員で作業するには1Fだけではスペース的に足りない部分もあり、また利用者さん同士の相性もあるので分かれて作業することが多いです。 - 休憩スペースや洗面台、トイレなどがあります。
- 羊毛作業、調理実習や絵画教室も2Fで行われます。
▲2Fに上がる際は、上履きに履き替えます。整理整頓が行き届いています。
▲いざという時にすぐ持ち出せるように防災用ヘルメットは下駄箱の横に置かれていました。
▲視覚的にわかりやすいように、ゴミの分別表は目立つところに貼ってありました。
▲洗面所は、利用者さん同士が混雑なく使用できるよう2つ設置されています。
▲食事の後は歯磨きをします。歯ブラシとコップはひとりひとり専用のカゴに入っていて、衛生もしっかり確保。
▲こちらにある洗濯機は、作業着を洗うために使用しています。
『トライⅡ』一日の流れ
▲「あさの会」と「かえりの会」のスケジュールが、とても鮮やかな色で掲示されていました。
09:30 | あさの会 |
クッキー作り作業開始 | |
12:00 | 昼食・昼休み |
13:00 | 午後の作業開始 |
15:00 | 作業終了 |
帰りの支度 | |
15:30 | かえりの会 |
- 月〜金まで主にクッキー作りをします。
- 毎週木曜日に調理実習、月に1回絵画教室があります。
【TALK】設立の経緯や支援にかける思いを職員さんにインタビュー
保護者の方達の「居場所を作る」という強い想いからできた『トライⅡ』
『トライⅡ』は、今年で7年目になります。
今、横須賀の障害者団体として施策などへの提言を行っている「横須賀の福祉を推める会」の親御さん方が、「お子さんの居場所を作る」ということで最初に作ったのが『トライⅠ』。そして、この『トライⅡ』を作り、グループホームを作ったのを機に法人化して、その後、『長沢ベーカリー』もできました。
『福祉を推める会』の方々とは今でもお付き合いがあり、お母さま方も会議をする際などにカフェを利用してくださっています。
関連記事>>【取材File】18人の個性豊かな職人が働くまちのパン屋さん『長沢ベーカリー』/横須賀
現在の利用者さんは、男性7名・女性5名
- ほとんどの利用者さんが毎日いらしています。
- ヘルパーさんと一緒に来られる方は少なくて、それぞれ、電車・バス・徒歩でひとりで来ています。練習して来られるようになった方もいらっしゃいます。
- グループホームから通われている利用者さんもいらっしゃいます。
- 年齢の幅は分散していて、タイプ的にもいろんな方がいらっしゃいますが、武山養護学校を卒業して来られる方が多いです。
- 岩戸養護からたくさんの方が実習生としていらっしゃいますが、今いらっしゃる利用者さんで岩戸養護学校の卒業生は1名のみ。利用の希望があっても、定員がいっぱいで、なかなか新規の方を受け入れられないというのが現状です。
仕事を通して、生きる力を持ってほしいなと思っています。
もちろん仕事は大事ですが、それだけではなく、洗い物など生活面に活かせることを身につけてもらい役立てて欲しいと思っています。
「自分の仕事に責任を持って最後までやる」というところも、力を入れてきましたし、みなさんも自分の仕事というところで「ちゃんとやらなきゃ」という責任感を持って作業をされています。
今日・明日でどうこうしようではなく、年単位で考えることが多いです。
例えば、作業について5年くらいかかるかな?と思っていた利用者さんが、意外と早くできるようになることもあります。
難しいことや、できないことは誰にでもあることだと思います。みなさんにとってクッキー作りが本当にやりたかったことなのかといったら、そこは難しいところだと思います。なので、まずは「慣れてもらう」というところから始めています。
▲「楽しい!」がモットーの『トライⅡ』利用者さんと職員さん。皆さん、本当に楽しそう!
生活介護事業所『トライⅡ(ツー)』『ぬくもりcafé なないろ』の基本情報
〒238-0017
横須賀市上町2-2-12
TEL/ 046-821-3711
FAX/ 046-821-3722
営業時間/ 10:00〜17:00
定休日/ 土日祝
運営/ 社会福祉法人 なないろ
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sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点
『トライⅡ』の『ぬくもりcafé なないろ』さんには公共機関を使ったり、徒歩で事業所まで来られる利用者さんが多くいらっしゃいました。
事業所まで自分で通い、帰宅できる。これは、幼少期の障害児を育てる保護者からすると、とてもすごいことのように思います。車や電車が好きで得意な方もいるかもしれませんが、幼少期から保護者の方が積み重ねてこられている方もいると思います。そして、その積み重ねはしっかりと本人の中に根付いているのだと思います。
私は、取材で事業所に伺うと、利用者さんの表情が気になります。表情から「ここにいることが楽しい!」とか「居心地がいい!」と感じているかを汲み取ることができるからです。
これまで取材させていただいた事業所と同様、『トライⅡ』の利用者さんも支援者の方もとても素敵な笑顔で楽しそうにされていて、思わず利用者さんのご家族のことまで思いを馳せてしまいました。
我が子の将来を考えたとき、こうやって楽しく、日々を過ごしてくれることが私のいちばんの望みです。とはいえ、こどもはまだ幼少期の障害児、実際にどうしていけばそこに辿り着くのかも分からないのが正直なところ。でも、こうやってみなさんの働いている姿を拝見すると、生きていく力は日々の積み重ねでしっかりと本人の中に活かされ、そして、本人や家族を支援してくださる方々がいて、日々、楽しく幸せで暮らしていける場所があるということを、取材を通して各方面で実感することができます。
未来は明るい!それを信じられる社会にするために、私たちひとりひとりにできることがあるはず。まだまだ学ぶことがいっぱいです。
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2017.07.12
取材/ 五本木愛・misa
写真・加工/ misa・ゆっぴー
テープ起こし/ misa
文・構成/ misa・うさぎのめろん
編集/ takeshima satoko
sukasuka-ippo
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