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【取材File】ご自身も障害児の親、ここではどんな子でもそのままでいい!泣く子も笑う『アートフォトスタジオ』/横須賀

後方右側から時計回りに、斎藤さん、ゆかねこ、がらっぱち、ゆっぴー、五本木愛

後方右側から時計回りに、斎藤さん、ゆかねこ、がらっぱち、ゆっぴー、五本木愛

今日は、安浦にある、アートフォトスタジオにお邪魔してきました。

ドアを開けるなり、まるで親戚の家に遊びに来たような錯覚を覚えるほど気さくに迎え入れてくれた代表写真家の斎藤 記子(さいとう のりこ)さん。

そして、心温まる素敵な写真の数々。見ているだけで、こちらも顔が綻んでしまうような、そんな家族写真が所狭しと飾られていました。

飾らないサバサバとした人柄と熱いアーティストの思いにすぐに引き込まれた私たちメンバー。聞けば、斎藤さんの20歳の息子さんも自閉症。

「障害のあるなしに関わらず子どもはじっとなんかしていられない。」
「じゃあ、自分が子どもに動きに合わせて動けばいいじゃない?」

「肢体不自由のお子さんの衣装はどうしよう…。」
「肉体的・精神的な負担にならない工夫をすればいいじゃない?」

というように、とにかく柔軟な発想で、子どもや家族のありのままの姿を写真に収める斎藤さんの思いに迫ります!

こちらの記事をA4サイズにギュギュっとまとめたPDFはこちら!
取材File13.アートフォトスタジオ

子どもはじっとしてるのが苦手!だったらこちらが動けばいいじゃない!?

手前の壁に描かれたスタジオのシンボルマーク

手前の壁にご自身が描かれたスタジオのシンボルマークが目を引きます

昭和60年に『AT写真スタジオ』として独立した当時は独身だった斎藤さん。一般的なスタジオ同様、背景のロールバックを付け替えていましたが、これだと両サイドに常に物がある状態で、子どもを撮影する場合は1面しかない背景の前から動かないように気を配る必要がありました。

しかし、その後、自らが自閉症児の親になり、問題行動が増え、とにかくジッとしていることができない5,6歳の時期の息子さんを前に、さて、どうしようか…と考えた時にあるひらめきが!

そのひらめきを実行に移せたのは、平成12年に現在の『アートフォトスタジオ』に移転する際のこと。思い切って、ロールバックをなくし、その代りに3面ある壁それぞれに直接背景を描いて、子どもが自由に動いてもその動きに合わせて撮影する側も移動しながら、3面ある背景のどこでもシャッターを切ることができるようにしました。

障害のあるなしにかかわらず、子どもはみなジッとしているのが苦手。また、動いている時こそ生き生きとした良い表情が撮れる、ということで、このような工夫をされたのだそうです。

「障害のあるお子さんの中には、壁に寄りかかって立った方が安定する、安心するという子もいて、そういう意味でもこのスタジオの造りは、決して広くはありませんが、お子さんやご家族の皆さんに安心してもらえる空間にはなっているかなと思います。万が一、転倒しても大丈夫なように床も木材にしてあるんですよ」と斎藤さん。

壁に直接描かれた背景
▲もともと絵描きをしていて童話作家を目指したこともある斎藤さん。スタジオの内装には独特の世界観とこだわりが感じられました。斎藤さんがイメージしたものを細かく伝え、ご友人であるプロの画家の方に背景画を頼んだそう。

左側は茶色の背景、正面と右側も背景

▲中世の宮殿や庭のような雰囲気があり、ところどころ立体的にもなっています。実際に仕上がった写真を見せてもらうと、限られた空間だということを感じさせない奥行きが感じられました。

自分の子育ては迷いの連続!でも、それでいい…

息子の障害については受け入れていたけど、育てづらさは確かにあった、と語る斎藤さん。

「自分なんかが親でいいのかな」と自問自答する日々、その時に小児科で診てくれていた広瀬誠先生という方が「自問自答している親ならそれで十分!そういう思いで、接してもらっている子どもは幸せだ」と言ってくれたその言葉に本当に勇気づけられたというお話もあり、障害児を育てる親の気持ちもしっかり汲んでくれる懐の深さが伝わってきました。

写真には家族の姿がそのまま写るんです!

「38年も写真屋をやっているとわかるんです。例えば、一見ギクシャクしているように見える家族でも、お父さんが不器用なだけのこともある。私はそういうの、ご家族にもお伝えしちゃいますけどね」と笑う斎藤さん。

また、ある肢体不自由の娘さんの成人式の家族写真を撮った時は、おじいちゃん、おばあちゃんをはじめ、みんなにこやかなのに、お母さんだけなぜかピリピリしてる。すると娘さんも個別の写真では穏やかなのに、お母さんが入ると一緒にピリピリしちゃう。そういう空気は写真にも出てしまうのだとか。

「仕上がった写真について、どれをアルバムに残すかプロの目で選んで提案するんですが、お母さんは私が選ぶ写真には不満そうでした。そう、家族写真にはピリピリも写るんです。でも、私はそれも含めて、10年、20年後にも良さが残る写真を選びます。お母さんって本当に大変、必死になってしまう時期だってあります。でも時間が経って見返すと、そういう自分も悪くないなって思えることってあるんですよね。」

家族写真からあふれる温かさは介護者にも伝わる

お子さんが体調を崩されて入院や介護が必要になった時、あるご家族が家族全員で写真を撮って、その温かい家族写真をお子さんの病室の枕元に置いたそうです。

人が大事にしているものは周りも大事にしようと思うもの。その子が家族に大事にされていることは介護する側にも伝わった、というエピソードに一同納得。

家族写真は、ただ飾っておくだけのものではなく、その子を大事にしてほしいという思いを周りの人と共有するツールにもなるということを斎藤さんに教わりました。

プリント屋とは違う、写真屋としてのこだわり!

「写真屋とひとくちに言っても、その種類は様々。やはり多いのはプリント屋で、横須賀はベースの街ということもあって、ベースの人たちが家族に送るためのスナップ写真を扱うDP業者がもともと多かったという背景があります。そうしたDP業者が次第にスタジオもやるようになったけど、人の写真を撮り続ける情熱のある写真屋は少ない」と語る斎藤さん。

今は、街の至る所で写真プリントができるようになりましたが、それとは違うプロの仕事を提供するのが斎藤さん。もともと絵描き出身、童話作家を目指したこともあるアーティストなので、構図にもこだわります。また、こちらでは撮影した写真をきちんと職人の仕事である印画紙焼きで仕上げ、液化ラミネートなど、最新の技術を用いた写真にも対応してもらえます。

「料金はいくら?衣装はレンタル?」という視点でスタジオを選ばれる親御さんも多い現在。

「でもそれだけじゃないんです。健常の方も同じですが、障害を持っている方については特に肉体的・精神的に負担のないように気を配ります。例えばバギーのお子さんだと上下で分かれている2部式のの着物で着付けの負担を軽減したり、20歳を過ぎてくると寝たきりの状態だと顔がわずかに下方に引っ張られて、表情が変わってしまうので、美容師さんにそのあたりを調整してもらったり…。また、白目になってしまうお子さんについては、同じ角度から黒目になる瞬間を待って何枚も何枚も目だけを撮って、後で黒目の瞬間のものをポーズがキマってる画像と合成するなど最小限の負担と修正で自然に見える工夫をして、その子とご家族の魅力な表情をカメラに収める努力をします。親御さんがお子さんのチャームポイントや表情を事前に教えてくださるとよりスムーズに一番いい表情にたどり着けるので、お子さんにも負担が少なく済むと思います。」

また通常は撮影の時間は1時間をみていますが、障害のあるお子さんだとそのあとも余裕をもって1時間は予定をあけておくそうです。そうした心遣いも、障害児の保護者としてはありがたいですね。

プロがプロを選ぶコンテストで、金銀銅に続く優秀賞を横須賀で初めて受賞

プロがプロを選ぶコンテストで、金銀銅に続く優秀賞を横須賀で初めて受賞

 

アートフォトスタジオの基本情報

代表写真家 斎藤 記子(さいとう のりこ)
〒238-0012 横須賀市安浦町1-10
TEL・FAX / 046-823-5346
携帯電話 / 090-4414-8926
営業時間/10:00~17:00 完全予約制
料金例/ 証明写真 1,000円~/記念写真12,000円~

詳しくはホームページで!>>http://www.artphoto.e-yokosuka.jp

人気メニューは『写真DE絵本(普段着編)』
撮影+構成技術+6ページの写真ブック作成に加え、なんと撮影した全データ当日お渡し。22,000円~

さりげない日常の風景を切り取ったような写真が魅力『写真DE絵本(普段着編)』

▲さりげない日常の風景を切り取ったような写真が魅力の『写真DE絵本(普段着編)』

sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点

今回の取材で感じたのは、「障害児をこんなにのびのび撮ってくれる写真館があるんだ!」という驚きでした。

障害児であり多動の我が子の七五三の写真を迷惑をかけないように、短時間で撮影ができるようにと腐心してなんとか撮影してもらった苦労を私自分が経験したから余計に!

斎藤さんの「私に任せて!無理はさせないし、とにかく自然体で撮るから!」という言葉はとてもありがたく響きました。スタジオに飾ってある写真はどれも素敵で自然体。写真には家族のありままが写ると仰ってましたが、私は斎藤さんの写真には斎藤さんの温かいお人柄をもそのまま写っているように感じました。

そんな熱い情熱を持って家族写真を撮ってくれるこちらのスタジオ。
もし、ご興味を持たれた方は是非ご参考にしていただければと思います。

がらっぱちの感想メモ

物心ついたときから16号はよく車で通っていて、こちらの写真館も横目で存在は知っておったのですが、まさか、まさか、実際に訪れる日が来るなんて!という感じです。

経営者の斎藤さんがまた屈託なく面白い方で、やはり人に歴史あり!あたしの想像しきれないことを経験されて今に至るという醍醐味を感じさせる雰囲気の方でしたね。話し方も、私たちのために淹れてくれたコーヒーの出し方も、今日初めて会ったということを全く感じさせない親しみやすさがありました。

あたしが「これいいな!」と思ったのは『写真DE絵本』。表紙から中身まで本当に構えた感じがなく、普段のままを切り取って、それが写真集になっている。これまでの写真館のイメージが変わりましたね。家族でちょっと撮りに来たいと思いましたね。

そして、取材の中で、過去に撮影した障害をお持ちの方々の七五三や成人式のお写真を色々と見せていただき、やはり、同じ障害児者の親ということで、その瞬間瞬間を垣間見て、少し胸が熱くなりました。親御さんが一緒に写ってる姿、すごく思いが伝わってくるんだよね。撮り手の斎藤さんは親御さんの気持ちやお子さんの状況、どういった撮り方がベストか、全てをわかってるから、自信をもって『最終的に現像するのはあたしに決めさせて』と仰ってた。なんか、信頼できるなぁと…。

あと、斎藤さんのお話の中で、『自分が居たい場所にいればいい、無理する必要はない。』
これは、自分が頭のなかでわかってはいながらも、そうやってしまったら世間体的にやはり角が立つかなと常々思っていたこと。でも、四十を過ぎたせいか、少しずつ肩の力が抜けてきたかな(笑)

ゆっぴーの感想メモ

明るく元気な笑顔が印象的な斎藤さん、実はお会いするのは今日で2度目だったんです。

初めてお会いしたのは、市役所の障害福祉課のベンチでした。たまたま、寝たきりの我が子をバギーに乗せて一緒に待っていたら、優しく息子に声を掛け、私にも「お母さん、頑張ってね」と声をかけてくださったのが、斎藤さんでした。なので、今回取材でまたお会いできてとても嬉しかったです。

取材の際も、斎藤さんの人柄と同じく障害を持つ子の親という安心感もあり、色々なお話をたくさん聞かせていただきました。
写真は撮って記録し、見て楽しむという以外に、とても大切な役割を果たすことがあるということも教えていただきました。

我が子のように喋れなくても、こうして欲しいと伝えられなくても、家族写真1枚で、初めて会った人に「私たちが我が子を大切に思っていること、我が子が大事にされていること」を伝えられるということ。斎藤さんに我が家の家族写真を撮ってもらったら一体どんな写真ができあがるのでしょうね〜。ワクワクしちゃいます。

そして、1人でも大変な障害児、3、4人の障害児のグループ写真とかもお願いしたりできますか?とお聞きしたら、「どんな写真になるかやってみましょうよ」と笑顔で答えてくださいました。卒園と同時に進路がバラバラになってしまうお友達と記念写真撮りたいな。

ゆかねこの感想メモ

「今いる目の前の子を今笑顔にしたい」――この‘今‘が強調された言葉。
きっと、母として、写真家として、斎藤さんが常に思っていることなのだろうな、と感じ、私自身強く心に残っています。

これだけの想いと、確かな腕があるにもかかわらず、撮影の依頼が入るのは県外や市外の方からのほうが多いと聞いてびっくり。
やはり最近ではフォトスタジオと聞くと、衣装着替え放題の有名どころを思い浮かべてしまいますし、よほど熱心に調べない限り、個人店って選択しないのかもしれません。

そういう私も、去年、息子の七五三の時に調べはしたものの、こちらのアートフォトスタジオさんの情報まで辿り着けませんでしたから。

知らないってもったいない!いや、ほんともったいない!

・・・

取材日/ 2016.06.15
取材・文/ 五本木愛・ゆっぴー・がらっぱち・ゆかねこ・pototon
編集/ takeshima satoko

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