われわれ障害児を育てる親にとって、やはり気になるのは大人になった時の我が子の生活。
作業所やグループホームという言葉はなんとなく知ってはいても、具体的にどんな人たちが、どんなところで、どんなことをしているのかを知る機会はなかなかありません。
そこで、今回は横須賀市長井で障害者の日中活動の支援、障害者個々の能力に応じた働く場を提供するのはもちろん、創作的活動の機会も用意して、楽しく活動している『いずみ作業所』にお邪魔してきましたので、その様子をリポートします。
いずみ作業所ができたのは昭和61年
障害者地域作業所としての開所当時から農作業を主体に活動し、ハウスを借りたり、津久井の畑や山の荒れ地を耕すところから始まり、しばらくは転々と活動拠点を移動していましたが、今はこの長井に落ち着き、広さ 2000㎡の土地を借りて、約30名の利用者と一緒に農作物を作ったり、資源回収の作業をしています。
NPO法人いずみにはハイランドで平成3年に障害者地域作業所として開所した『アトリエかもめ』があります。現在は従たる事業所(いわば支店)。こちらには現在11名の方が通われています。
主に知的障害のある方が通われている『生活介護事業所』です。
通所されている方では、知的障害の方が多く、精神障害、目の不自由な方もいらっしゃいます。
年齢構成は20歳前から70歳を超えた方まで幅広く、経験やエネルギーを分かち合いながら、みんなで和気あいあいと楽しく働いています。
主な作業は…
・野菜栽培と販売
・資源回収
・こでん(小型家電)分解、銅線の皮むき
・ケーブル分離・分別
・カーポートやベランダの解体、空家の片付け
・編み物製品など手芸品
・フリーマーケット
作業場は民家3軒を改造して確保
民家3軒を改造し、それぞれ作業スペースと風呂、2階には休憩スペース、バイタルチェックする部屋もあり、みんなの使うパソコンも10台ありました。夏期は半数近くの人がシャワーで汗を流して帰ります。
広い畑での農作業の仕事は多岐にわたります
例えば農作業について言えば、くりはま花の国の近くから購入してくる樹木を粉砕したチップをまくことで、雑草を生えにくくし、保水性とともに水はけも良くなります。そして、みんなが歩いて踏みしめても畝の間がカチカチに固まるのを防いでくれます。
ここで利用者に何をしてもらっているかというと、主に
・このチップをまく
・雑草をとる
・種まきや収穫の手伝い
・収穫物の泥を洗い落とす
・形を整えて水洗いする
・収穫後の残滓片付け
…など、仕事は多岐にわたります。
▲こちらがチップ!
▲ちなみに無農薬ではありません。
樹木チップを施すと無機肥料だけのものにくらべて味が良くなり、長持ちします。ただし、このあたりは周り一帯が農地なので、冬場以外は農薬なしでは虫だらけになります。「最小限の農薬使用はやむを得えません」と悩みを語っていました。
資源回収で得られる資金はばかにならないんですよ!
資源回収とそれに伴う分別・分解は作業所の運営には欠かせない資金源でありみんなの仕事
集団資源回収奨励金だけで年間200万円弱になるそうで、これはまた地域の人に作業所の存在を知ってもらう大きな手段にもなります。
また、市の集団資源回収事業とは別の形で集めている古紙、鉄、アルミ、銅等の売り上げも相当なもので、みんなの工賃になります。そして集めただけではただのゴミに近いものを徹底的に分解・分別することにより価値のある資源物として世の中に送り出しています、
こでん(使用済小型家電、小型電子機器)の分解や電線の皮むき、牛乳パックをちぎる作業は指先の訓練になる大切な作業種目でもあります。
危険な作業もある程度できるように、もちろん工夫と配慮は必須
作業場は、作業スペースをいかに確保していくかに重点を置いているので、バリアフリーにはなっていません。危険を伴う作業や危険な工具・刃物については事前によく練習してから作業開始しています。例えば、カッターナイフの使い方などは手前に引かないように細かく指導しているとのこと。後は、それぞれの人が自分に適したやり方・工具を選んで作業する自由度も残しています。電線を切る場合、机に目盛りをふって、長さを統一するようなことをしなくても、慣れてくればそれなりに目分量を会得します。
外の作業場所ではケーブルを短く切っている方がいました。これは、必ずしも必要な作業ではないのですが、他の仕事を割り振れない人のためにあえてこの前段階行程の作業も用意しているとのこと。
そのほか、赤い羽根募金より助成を受けて1.5㌧のトラックを2台所有して、毎日のように資源回収に出かけています。
自閉的傾向の強い方への配慮
自閉的傾向の強い方にとって、パターン化は必要ではありますが、場面転換ができる方にはある程度柔軟に事態に対応できるように、例えば目分量で行えるところはそれでも良しとするなど、いわゆるティーチプログラムよりは緩やかに考えています。時間配分もそれほどがっちりと組み立ててはいません。また、他の人の目線や、提示物が気になる方にはパーテーションで囲うと良いと言われていますが、特別に用意しなくても、自分で好みの場所(自分の城)を見つけてくれるので、それで良しとしています。
いずみ作業所では対応しきれないと判断される場合は、市内に専門的なスキルを有する施設がありますので、そちらをご紹介していますということでした。
▲ちょっと雑然としていますが、自分の好きな道具を抱え込むと落ち着いて過ごせます。
いずみ作業所の主な行事
絵画教室(月2回)
パソコン教室(月2回)
リズム体操(月1回)
本人部会(年3回)
研修旅行(年2回)
四季の花見
実習生歓迎会
新規入所者歓迎会
忘年会・新年会・暑気払い
防災訓練(月1回)
レクリエーションの日(月1回)
いずみ作業所のタイムスケジュール
[夏時間]
09:00 朝の会
10:00 水分補給・休憩
11:00 水分補給・休憩
12:00 昼休み
14:00 水分補給・休憩
15:00 作業終了・休憩・着替え シャワータイム(希望者)
15:45 帰りの会
16:00 帰宅
[冬時間]
09:00 朝の会
10:30 水分補給・休憩
12:00 昼休み
14:30 水分補給・休憩
15:20 作業終了
15:45 帰りの会
16:00 帰宅
NPO法人いずみの基本情報
いずみ作業所
〒238-0316 横須賀市長井1-18-56
TEL・FAX / 046-856-7074
定員/ 通所28名
アトリエかもめ
〒239-0833 横須賀市ハイランド4-50-8
TEL・FAX / 046-848-7023
定員/ 通所12名
定期的に発行している新聞で、活動報告や行事についての情報などを発信しています!
sukasuka-ippo隊長・五本木愛の視点
今回、初めて作業所を取材させてもらいましたが、学ぶことがたくさんありました。
「適材適所」でそれぞれのできることをする。無理をすることなく、長く続ける。それは、障害への理解が深いからこそできることであり、それは理事長の七條さんのお話からも自然と感じることができました。
そして、今、障害児の子育てをしている私たちが将来に向けて本人ができることをしっかりと積み重ね、増やしていくことの大切さを改めて感じました。何より、本人が仕事に行くことを楽しみに思えるような将来があれば親として本当に有難いことだと思いました。
「障害者は純真無垢でも神様でもない、嘘もつけば悪いこともする。ただの普通の人間だと。だから私たちは彼らが何を言いたいのか、それを汲み取ってあげることが大切なんだ」という七條さんの言葉も印象的でした。
こちらの記事をA4にギュッとまとめたPDFファイルはこちら>>【取材File.11】いずみ作業所
取材日/ 2016.05.23
取材・文/ 五本木愛・misa・がらっぱち
編集/ takeshima satoko
情報監修/ NPO法人 いずみ
sukasuka-ippo
最新記事 by sukasuka-ippo (全て見る)
- 【イベントお知らせ】~障がい児とその家族の交流の場~2024年度『すてっぷ』活動のご案内 - 2024-05-09
- \今年も販売やります!/『令和5年度障害者週間キャンペーンYOKOSUKA』のお知らせ - 2023-11-28