slide-nursery-pc2
slide-kids-pc2
slide-telework-pc2
slide-sarah-pc2
slide-learning-pc
previous arrow
next arrow

【対談】鴨居小学校校長・新倉 邦子先生 × 五本木 愛>>支援級と通常級、先生と子どもと保護者、キーワードは『つなげる』!

左からreiko、新倉校長先生、五本木愛

左からreiko、新倉校長先生、五本木愛

鴨居小学校に今年度から校長として赴任した新倉邦子先生とsukasuka-ippo(すかすかいっぽ)の代表であり鴨居小学校のPTA副会長でもある五本木との対談が実現!

鴨居小学校のPTA広報委員の皆さんとsukasuka-ippoのメンバーが同席し、普段はなかなか知ることができない小学校の校長先生の思いを第1部に、支援教育についてのお話を第2部にまとめました。

ボリュームがありますが、是非、最後までお付き合いください!

主に支援教育の話題に的を絞ったダイジェスト版PDFはこちら
【対談ダイジェスト01】鴨居小学校校長 新倉邦子先生×五本木愛

 

【第1部】鴨居小学校校長・新倉 邦子先生 × 五本木 愛・鴨居小学校PTA副会長

子どもたちはスポンジ!もっといい授業を提供するために

新倉先生 わたしが赴任して2ヵ月。鴨居小学校の先生方は一生懸命仕事に取り組んでいます。でも、教育の土台になるのはやっぱり家庭教育だと思うんです。

五本木 つまり家庭と学校の連携が大切ってことですよね。そこが深くつながればつながるほど、子どもたちが良い環境で育っていきますからね。

新倉先生 そうなんです。今は全国的にどこの学校も学力については数値を重視している。それも大事だけれど、私はもっとプロセスを大事にしたい。何をどのように教わったか、そして、何ができるようになったか、そこが大切だと思います。そのために私に何ができるかとを考えると、鴨居という場所は、地域も保護者も家庭も良いんだから次はやはり子どもたちをさらにより良く育てたい。そして、子どもたちを育てるためにはただ勉強すれば良いというのではなくて、こういうものをやっていけば勉強ができるよというようなノウハウを子どもたちに知ってもらうために、先生方にも力を身に付けてほしいんです。例えば、テレビのニュースを見る、新聞を読む、先生自身が観光に行ったり本を読んだりする。そういう知識の基盤が実際に子どもたちの学力につながると私は思っています。

私は、以前、ある雑誌で読んだことをずっと大切にしているんですが、それは『土台になるのはやっぱり家庭教育だ』ということ。例えば、家で掃除の時に「下から3段目を掃除してね」と指示をすることで算数の順列の勉強にもなるんですよね。そういう気持ちで保護者には子どもと関わってほしい。「勉強しなさい」と言うことも大切、宿題もしなくちゃいけないと声を掛けることも必要だけれども、家庭生活そのものが勉強の土台だということも大切にしてほしい。昔はスポーツの習い事もあまりなかったのに、子どもたちがなんであんなに体力があったのかというと、お布団を毎日上げ下ろししたり、雑巾がけをやったり…。そういうものがすべて子どもたちの体をつくってきたんだなという原点を今も忘れちゃいけないなと思っています。学校も同じで掃除や給食にも、すべてに学習要素があって、そういうことを大切にクラスをつくっていくと、子どもたちがおのずと一つひとつの活動をこれとこれって関係あるよねって自然とつないでいけるようになります。

また、私も自身の子育てを思い返すと、子どもたちにあまり「勉強しなさい」とは言ってこなかったと思うんです。皆さんと同じように宿題や音読カードにハンコを押していましたが、その代わり子どもと一緒に料理を作り、掃除も「みんなで乗る車なんだからみんなで掃除しよう!」なんて言うと、当時は子どもも一生懸命やってたんですよ。今は「だまされた」なんて言われますけど(笑)。でも、その時に掃除のノウハウを覚え、次に○○しなければいけないから、今△△しようという頭の中の整理も自然と身に付いていったんじゃないかな。挨拶も含めて、そういうことが大切なんだと先生方には伝えているんですが、それを保護者の皆さんにも伝えていけたら良いなと思っています。

五本木 たぶんそれこそが教育の原点なんだと思います。それこそ、障害児を育てる療育って根本がそこなんですよね。普段の生活で吸収できることを繰り返しする。健常の子だったら教えるという作業がなくてもごくごく当たり前にできているところに焦点を当てて、一つひとつ丁寧にアプローチしていく。それが障害のある子の積み重ねにつながっているので、教育の原点って絶対そこだと私も思います。

教室を飛び出しちゃう子にみんなで合わせちゃえ!

新倉先生 今、支援教育が叫ばれていますが、以前は特別支援学級がなかったので、私が担任を務めた1年生のクラスに障害を持っているお子さんがいて、この子と一緒に楽しく過ごしたいと思ったんです。そこで、専門書をたくさん読んで、研修もたくさん受けたのに、どうしてもうまくいかない。

○○ちゃんがいて大変なクラスと考えるんじゃなくて、○○ちゃんがいるから他のみんなもできることが増えると考え方を変えてみた。1年生だから担任がそういう姿勢を示すと子どもたちもがらりと変わる。例えば、○○ちゃんが教室から逃げ出してしまったら、「○○ちゃんが行きたいんだからみんなで一緒に行こう!」って、国語の予定が生活になっちゃうわけですよ。その子に合わせて授業変更することになるので保護者にもそれを説明したら、皆さんちゃんと納得してくれたんです。その時は懇談会で泣きました。あぁ、わかってもらえたって。

その後、その子のお母さんもお子さんの特性に気付かれて、最終的には支援学級に移りました。その子とその後出会ったときに、ちゃんと私のことを覚えていて周りの子に自慢げに私の名前を伝えるのを見て、また泣いちゃいました。だからやはり、今、子どもたちの障害あるなしに関わらず、支援教育全体でそういう柔軟な視点を取り入れることで、みんながよりハッピーになれるんじゃないかなと思っています。

五本木 そこがきっと今はぼんやりしてきちゃっているんでしょうね。原点をみんながちゃんと理解して進んでいけば、結果は必ずついてくると思うんですけど、それより上の部分に焦点を当てちゃってることが多いから、ぐらつきが出たり、違う方向に進んじゃったりするのかなと。

大人の本気を子どもは見抜く!?

新倉先生 あと、親も先生も本気にならないとだめ!本気にならないと子どもはちゃんと足元を見ます。

五本木 子どもはわかりますからね。

新倉先生 そう、だから我が子に関しては、家に帰ったら必ず1回遊ぶって決めてました。まず遊んでから何かやる。例えばトランプにしても絶対に勝つ!手加減なし!「ママいつも勝つじゃん!」って子どもに言われるけど「勝つためにやってるの!悔しかったら頑張って!」ってこちらも真剣。今、学校で町探検をしたりするけど、先生も一緒になって活動することってとても大事。実験も一緒になって子どもの気持ちになってやる。時々疲れちゃうから力を抜くことも大切なんだけど、そうすると子どももこの先生、本気だなって見抜くんですよ。そして、ついてきます。だから、若い先生で時々クラスがうまくいかないって言うんですが、本気の気持ちがきっと伝わり切れていないんですよ。

五本木 子どもって本当にそういうところを見る力は強いですよね。だから、親として子どもに話をするときも、こちらの本気度で子どもへの話の入り方が全然違うというのは感じます。新任の先生が入ってきたときも、子どもってうちの子に限らずだと思いますが「あの先生、いい先生っぽい」とか言いますもんね。向き合い方って大事ですよね。

新倉先生 そうなんですよね!すごい嗅覚みたいのがあるんですよね、子どもって。

五本木 子どもがそういうシビアな目を持っているっていうことを先生方が意識してくれると、親としてはありがたいかなと思います。

新倉先生 私が教室を見て回る目的もそこにあって、1日1回は子どもたちの様子を見ようと心がけているんです。今日は5年生の朝の会を見たんですが、子どもたちも見られているって意識するんですよね。「普通でいいよ」って言うんですけど、同時にそういう緊張感も必要かなって思うんです。必ず挨拶もするようになったし、いつ誰が教室に入ってもいい、見てもいい、そんな学校にしたいなという気持ちがあって、それは2ヵ月経って、ほとんどのクラスに周知できています。先生方も授業研究や授業参観のために授業するんじゃなくて、普段目的をもって授業を続ければ良いんじゃないかなって思うんです。先生方もいつ授業を見られても大丈夫という気概とプロ意識が必要なんじゃないかなと思います。

教師になったきっかけ、教育実習ではダウン症のお子さんに…

新倉先生 小さいころは、フライトアテンダントや出版関係とか貿易関係の仕事もいいななんて夢を描いていたんですが、教育関係の大学に入学し、教師の仕事が面白いと思ったのがはじまりです。いよいよ採用試験という時に自分は本当に教師としてやっていけるのかと迷いながら教育実習に行ったんです。そうしたら面白かった!実習で入ったのは1年生だったんですが、ちょっと教えたらすぐ伸びるんです。そして、実はその時に担任の先生に「あなたは教育実習の1か月間、○○ちゃんの隣にいて一緒に勉強して!」と言われて、ダウン症のお子さんに付くことになったんです。それで、またすごく学んだんです。その頃は支援教育とか何も言われていなかったのに、そのベテランの先生はいつもその子を取り入れて授業をやっていて、30数年前のことですが、今振り返っても感動します。体育の授業の時も、「その子がいてもできる授業をやってあげなくちゃいけない」って。それって、実はクラスの中の他の支援が必要な子にも優しく、クラス全体にとって学びの深い授業です。

その子が成人になってからある駅で偶然会った時に、やはり私のことを覚えていてくれて、それも嬉しくて。思えば、それがスタートでした。先生方それぞれにきっかけはあると思いますが、やはり子どもが好きというところが欠落していると教師はできないと思います。本当に面白いです、子どもの成長を見るのは!

下がりつつある教師の地位、守るのはやっぱり教師自身

五本木 やっぱり親からすると先生って他の職業とはちょっと違う特別なものっていう気がするんですけど。

新倉先生 実はそれが今、教師という立場がうまく理解されなくなってきているように思います。そして、それが原因で、今、教師がやりにくくなっています。でも、簡単に言うと下げているのは自分たちなんです。例えば、服装にしても私はいつもジャージでいるというスタイルが嫌いで、体育のあとに音楽なんていうと必死で着替えていました。学級通信の文章も、教師だからこそ書ける言葉ってあると思うんですよね。例えば、いきなり「集金袋を集めます」なんて書くんじゃなくて、冒頭に自分の教師としての根幹に触れることを書いたり、タイムリーな季節の言葉を書いたり…。先生方には教師としてのプロ意識を持ったものを書けるようになって欲しいなって思います。言葉遣いや板書の字やチョークの色、書き順なんかも教師だから見本にならないといけないなって、そこがしっかりすることで教師としての立場が確立されていくのかなと。

だから原点に戻るってやっぱり大切で、よく教育は振り子に例えられることが多いんですが、行ったり来たりしていてあるところに到達すると昔に戻るんですね。そして、今はいろいろなものが行き着いた気がするんです。だからもっと原点に戻れ戻れって思っていて、それは先ほど言った教育についてだったり教師や授業の在り方についてだったりするんです。

五本木 それは子育てについてもそうですよね。原点を知ることの大切さって感じます。

新倉先生 私は他の学校に行ったらまずカーテンを見ます!荒れてる学校はカーテンがめちゃくちゃ。

五本木 身の回りの整理整頓にしてもそうだけど、まず校長先生が自分のことをしっかりやられているのを見て、周りも変わっていくというのはすごく大事なことだなと思います。家でも子どもに「やれ!やれ!」って言っても全然やらないけど、洗濯物なんかも黙って畳んでるとあれって…顔するし。

新倉先生 そう。気づかなくちゃダメなんですよね。だから言い方を変えると私たちは子どもたちに負けてるんですよね。子どもたちに『やれていない』ってことを気付かせなくちゃいけない。そういう意味でも、やっぱり子どもには本気になって向き合わないと行けないって思います。

【第2部】鴨居小学校校長・新倉 邦子先生 × 五本木 愛・sukasuka-ippo代表

具体的に支援級と通常級の交流はどうですか?小学校に入ると親同士もあまり交流がないという話を良く耳にしますが…

五本木 支援級に通わせている保護者の中にはまだ十分にお子さんの障害を受け入れられていない方もいますし、遠慮も戸惑いもあって自分から他の保護者と関わりを持っていくまで至っていないというケースもあると聞きました。本来であれば、支援級の保護者同士、そして通常級の保護者とも交流がとれていることが望ましいですよね。

新倉先生 私としては、支援級の保護者の方も交流級の授業はもちろん懇談会にも出るのが基本だと考えています。そのため、前任校でも時差をつけて交流級の懇談会に出た後に支援級の懇談会に出られるようにしてきたこともありました。つまり子どもが行っている学校、学年、クラスの人と繋がることが子どもが生きていくうえで大切だと思うんですね。

今、キーワードは”つなげる”なんです。授業も人もつなげる!学校は懇談会や行事などを行う際も、工夫して意図的に保護者同士をつなげていけるようにしなくてはいけないなと思っています。

支援級の在り方についてどうお考えですか。

五本木 今、鴨居小学校は情緒(自閉症等)のお子さんがすごく多いですよね。知的障害のお子さんは少なくて、そして身体のお子さんはいないという状況。それを踏まえて支援級の在り方についてどうお考えですか。

新倉先生 子ども一人ひとりに合わせて個別支援計画がありますが、算数は支援級で勉強するけれど、社会と国語は交流級でいけるというような柔軟性がとても大切。でも、やはり先生の人数や時間割の都合で障害の異なる子どもたちが混在する時間というのも生じてしまい、現場はなかなか大変です。

交流に行くことが必ずしも良いことではないけれど、通常級の子どもと学び合うことが多いのもまた事実。子どもの実態に合わせ、また個々の成長に合わせながら、通常級との交流を深め、広げていく必要があります。

先生方や保護者にもっと支援教育についての専門性の高い情報を!鴨居小学校でできること

五本木 支援級に関して、支援級の先生の専門性についても問われていると思うんですが、先日、就学説明会があって、教育委員会の方に保護者から支援教育に携わる教員の専門性の有無について質問があったんですが、やはり研修等は行っているものの「そこは正直痛いところなんです」っていうおっしゃっていて、それもよくわかるんですが、専門性の高い情報を親も現場の先生ももっともっと学んで行く必要があるのかなと思うんです。実は、これまでsukasuka-ippoで取材した相談機関・研究機関などでもオーダーさえあれば学校でも講演会を行うことが可能だというお話を聞いたんですが、横須賀市ではまだあまりそういう例を聞きませんよね。だから、是非、鴨居小学校でそれをやってほしいと思うんです!

新倉先生 今年度からスクールソーシャルワーカーが鴨居小学校に拠点を置いて、近隣の小学校に関わっていくことになっています。実は、このチャンスを生かして、校内で支援教育の研修をやろうと計画中です。支援級を受け持つのにライセンスはないんですが、初めて支援級を担当する先生は新担任研修というのがあって、研修を受けなくてはいけなんです。だからライセンスはなくても専門的な知識は注入されます。だから知識がゼロということはないんですが、前任の学校でも専門家を招いて研修をやったんですが、やっぱり支援教育の考え方って全然違うんですよ。聞くことで必ずヒントが得られます。

五本木 本当にそういう試みが鴨居小学校でできたら、その情報をサイトで障害児の親に広げて、それぞれの在籍する学校でもそういう研修会の開催を要求してもいいんだということをここから発信していければいいなと思っています。

新倉先生 理論も大切ですが、それよりももっと日常で使える情報、若い先生にもすぐに使えるノウハウを得られる研修が今は必要です。また、支援級の先生だけではなく、交流級の担任も支援教育の知識を持っていないといけません。給食だって、交流級でただ食べれば良いというものではなく、支援級の子には思いがあるということ、例えば食べる順番が決まっていて変えられない子もいる。そのあたりをきちんと理解しないと支援はできないと思うんです。

五本木 そう、そこなんです。子どもたちはわけが分からないことをやっているわけではないんです。ちゃんと理由があって、ルールがある。そういう特性をわかって子どもと接するのと、そこを理解しないで接するのとでは、その子の伸びが大きく変わってくるので、そこは先生方に一番知ってもらいたいところですね!

交流によって障害児についての理解を広げる!

新倉先生 だから、もっと交流に行ってと思うのはそういう狙いもあって、味方を増やしてほしいと思うんですね。

広報委員 その子に付き添うのは大人じゃなくてもいいんですか?例えば同じクラスの子どもたちとか?

新倉先生 きちんとその子のことを理解できているなら、それも良いと思います。要は、その子の思いを知らずにただ預けていくというのはその子自身も預けられた方も困るだけなので、子どもも先生も困らないようにするために日々の交流をもっと盛んにして、その子についての情報交換を密に行う必要があるんです。

pototon それに加えて、子どもたちにも理解を広げていかないといけないなと思います。例えば、逗子のほうでは小学校の生徒に向けて発達障害や自閉症の子どもについての講習をしている相談機関があると取材を通して知りました。4年生ぐらいになると子どもも理解できるというお話でしたが、細い筒を覗いて黒板の数字を探してみたりというように疑似体験なども盛り込んでわかりやすく…といった具合に。

例えば、何か他のことに気を取られているときに、先生やクラスメートがその子の耳元で一生懸命話しかけても、その子にとってはうるさいだけということもあります。そういうことを知らずに関わることでその子のパニックを引き起こしたりして、さらにそれを見た子どもたちが一歩引いてしまうということも実際にはあると思います。交流していても、その交流の質を考えると、その子のことを理解しての交流なのか、ただその場に一緒にいるだけの交流なのかを考える必要があると思います。

そして、一人ひとりそうした特性が全く違うので、やっぱり専門家だけでは足りなくて、やっぱりその子を一番よく知っている親が入って、うちの子はこういう子なんですよという理解を広げていくのも有効なのかなと思います。実際、障害というのは我が子を見ていても本当に面白い!パターン化した行動もあるけれど、なんでこれをパタ―ンにしてしまうんだろうというのも不思議だし、発語がなくても字が読めたりということもあります。障害についての困りごとや不適応という側面だけを見るのではなく、障害ならではの面白さを共有できると交流の質も変わると思うんですよね。

広報委員 私自身ももっと子どもたちに交流してほしいと思っています。親として子どもたちに世の中には色々な生き方があるということをもっと知ってもらいたいし、それこそが人生なんだと思うし、子どもたちに理解してほしいと思うんですよね。

五本木 実は幼稚園でもそうですが、交流の機会は結構あって、健常のお母さんたちもよくよく聞いてみたら、結構ウェルカムっていうことが多いんですけど、支援級に通わせている保護者の方が壁を作っていることも多いんですよね。

reiko 障害児の親として、健常のお子さんの中に自分の子どもを入れることにちょっと勇気が要るんですよね。迷惑をかけてしまうんじゃないか…なんて考えて。

五本木 だから、障害児者の保護者サイドの人間として、「もっとオープンになっていこうよ!」と呼びかけるのも我々の仕事だと思っています。

pototon 歩み寄りって必要なんだけど、保護者の前で自分の子どもについて挨拶するというときも、必ずしも「ご迷惑をおかけしますが、すみません」という切り口じゃなくてもいいのかなって。

五本木 私は障害のある娘を幼稚園に入れるときに、写真に吹き出しをつけて手書きで「はじめまして、ごほんぎうららです」「しゃべれないけど、○○はわかるよ!」とか「階段は危ないから支えてね!」「水遊びは大好き」とかを書いて担任の先生にお渡ししたんですが、これが好評でした!

pototon 自分で作るのが苦手なお母さんは、なにかフォーマットが用意できれば「その子の好きなこと、苦手なこと、時々こんな行動をするけどこんな理由があるんだよ」というようなものを作って紹介するということがもう少し気軽にできるのかなと思います。

reiko 実はうちの息子はダウン症で、小学校進学を考えた時に特別支援学級も見学したんですが、階段の上りをはじめ色々なところでみんなにはちょっとついていけないかなというのを感じたんですが、「やることがちょっと遅くてもついていけますかね?」と先生に質問した時に返ってきた答えが「何とかなるんじゃない?」といったニュアンスだったことにちょっと不安を感じました。

新倉先生 確かに人手も限りがあるのでうかつに大丈夫とは言えないところはあるんです。

五本木 保護者同士のつながりが薄くなっているというのは、学校はもちろん色々なところで話題になっていて、例えばひまわり園でもその障害児を育てている先輩ママたちがたくさん声を上げて土台を作ってくれたおかげで子育てをしやすい環境になってきています。今では子どもをひまわり園に預けている間、保護者に負担がないようにという配慮がどんどんきめ細やかになっています。でも、前身のマザーズの頃はそうではなくて、保護者は子どもを預けている間、保護者は別室で待機していたそうです。結局、それは大変だということで今はなくなったんですが、でも親が付き添っていた頃は保護者同士の横のつながりがすごくあったということです。待っている間に情報を密に共有し、強固な人間関係を築けたことで、今、お子さんたちが成人してもなお、そのつながりが保てているとのこと。でも、ひまわり園でも保護者同士のつながりが薄くなり、やっぱり壁ができて、相談できる先もわからずはけ口もなく、孤立していく保護者が増えているのかなと。結果、情報が入らず、閉鎖的になって悪循環が生まれる。

新倉先生 こういうことが多方面で語られることが大切ですよね。支援級と通常級、現在でも分けているわけではないし、これからもさらに交流が進んでいくと思いますが、どう進めていくかは学校に任されているところがあります。先生方も熱意があるので、校長としても先生方と一緒に頑張りたいと思います。

 

sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点

今回の対談はとても意義のある対談となりました。

今、支援教育に関して色々な意味で変化の時となっています。障害者差別解消法の施行により合理的配慮の真意が問われ、学校教育もインクルーシブ(障害のある子もない子も一緒に学び、支え合える)教育や授業におけるユニバーサルデザイン化(障害の有無に関わらず全ての子どもたちが享受できる授業づくりを行うこと)などが議論されています。

しかし、そのように変化の時にあっても、やはり最も大切なことは支援教育の根本である当事者の本意にどこまで寄り添い、理解を深めていけるかだと思います。

そのために私の子どもたちがお世話になっているこの鴨居小学校で先生方のご理解とご協力を得ながら、いろいろなチャレンジを進め、それをモデルケースとして、横須賀市内の支援教育の充実につなげていければ、ありがたいと思っています。

 

主に支援教育の話題に的を絞ったダイジェスト版PDFはこちら
【対談ダイジェスト01】鴨居小学校校長 新倉邦子先生×五本木愛

 

対談日/ 2016.05.20
同席者/ 鴨居小学校PTA広報委員の皆さん・reiko・pototon
編集/ takeshima satoko

The following two tabs change content below.
sukasuka-ippo

sukasuka-ippo

『自分たちが足りないと思うこと、欲しいと思うものを自分たちで作り上げていく』を現実に!夢を1つずつ叶えるために!
タイトルとURLをコピーしました