『お母さん業界新聞』―普通のお母さんが記者としてアンテナを張って情報を集め、子育ての発見や喜び、悩みを共感しようと発行されているのがこちらの新聞。
その横須賀版の編集長をされている田中清美さんとsukasuka-ippo(すかすかいっぽ)代表・五本木愛の対談が実現しました。
まずは、ざっくばらんなフリートークからスタート。健常児の親も障害児の親も子育ての喜びや苦労はおんなじ!共通点がいっぱい見つかりました。(途中で同席したsukasuka-ippoメンバーのmisaとreikoが口を挟んできますが、そのくらい盛り上がったという雰囲気伝われ!)
そして、後半では『お母さん業界新聞 横須賀版』編集長としてはもちろん、お母さんたちの活動の場を広げるべく地域や行政までアンテナをいっぱいに広げて精力的に活動する田中さんの思いに迫ります。
【フリートーク】子育てに壁はない!?
子育てしながらの活動って大変じゃない?
五本木 田中さんは働きながら4人のお子さんを育てて、その上でいろんな活動をしていると思いますが、正直、大変じゃないですか?
田中 家にいるときはだらだらしていることもあるけど、自分の子は置き去りにして他人の子をという感じでやってたから、子どもたちにはかわいそうなことしたかなと思ってました。でも、今は逆にそれがすごく良かったかなと思っています。子どもって、ちゃんとお母さんが何をしてるのか見ていてくれているんですよね。
五本木 それはわかります!うちも子どもが私のことをちゃんと見ているし、だから仕事もPTAの活動もいろいろやってきたけど無駄じゃないなと。
田中 私が弱音を吐くと「もっと頑張んなよ!」と言ってくれたり「ちょっと休めば?」と気遣ってくれたり、今は子どもたちが一番理解してくれてるかなと思います。すごく子どもたちに支えられているなと。
子どもの難しい時期ってあるよね!?
五本木 うちも上の子どもがふたり中学生なんですが会話もちゃんとあって、いろんな局面で子どもとちゃんと向き合ってきたからわかってもらえるのかなと思います。怒る時なんかもそうだけど、そこだけは手を抜いちゃいけなと思って頑張ってきました。
田中 真剣勝負だよね!
五本木 そうそう真剣勝負!小学校3、4年生ぐらいの時って一時的にちょっと難しい時期がくるじゃないですか、ぐらつく時期というか。少しお兄ちゃんお姉ちゃんになって、自己主張が激しくなったり。
田中 なんか周りが見えてくる時期なんだよね。あと子ども同士の関係で自分のわがままがだんだん通らなくなってくることを自覚する時期でもある。そこで葛藤がすごくあるというのが思春期の第一段階。
五本木 だからいじめが起こりやすくなる時期でもありますね。女の子の方が揉める率が高いように思うけど、そこで親が出てくると更に揉める!
田中 そうそう揉めるよね!親が出ないと不思議と揉めない、「もう、しょうがないね~」って(笑)
五本木 でも出てくる人は出てくる!学校に言いにいっちゃうの。だから先生から電話きちゃうんだよね。そうするとどうしてもギクシャクしちゃうし。
田中 謝りに行かなくちゃいけないしね。
五本木 そうそう、うちもありました!よくよく話を聞くと、原因はすごく些細なことだったけどね。で、性格の違いもはっきりしてくるんですよね、その頃って。
田中 自我が芽生えるからね。
五本木 そうそう、うちは子どもたちがみんな俺が俺が私が私がって前に出るタイプだから、それを気に食わないと思う子が出てきたりね。女はやっぱり大変だなぁって。
田中 男の子も大変だよ~。怪我させてくるとかだと逞しいななんて思うけど、結構うじうじしたなよっちい子が多かったりしてね。
子育て中の親は常に手探り!
五本木 でも今思うと、上の子の時はいろいろ細かく考えてちょっと神経質に育てたなって思います。
田中 こんなことで怒らなければよかったなってことたくさんあるよね。だから神経質になっちゃったのかなって…
五本木 お母さんの影響ってあるんですよね。
田中 聞かない子は聞かないけどね。
五本木 たぶん毎日の積み重ねがその子に人格形成に入っちゃうんだと思う。例えば、離乳食を食べさせる時期に上の子はやらせはするけど、汚れたそばから拭くっていうのを繰り返したらそういう子になった。散らかってるとイヤだ、ソフトクリーム食べる時も食べては拭き、食べては拭きってやってる。反対に三番目はやりたいようにやらせて拭くのなんか最後でいいやって育ててきたから、いまだに汚れがついてても全然気にしないし。
田中 お母さんの性格もあるんじゃない?
五本木 確かにそれはあるかも!最初はすんごくいろいろやったなぁ。面白い話で、上の子は幼稚園の面接のときに自分の名前から年齢から親の名前まで全部暗記させたもん。二人目以降は全くやらなかったけど。そのくらい差があって、いまだにそうやって厳しくしちゃったことを後悔してるのかな。私もよく覚えてるんですよね。まっ、うちみたいに子どもが多いと兄弟間でけっこうやるから基本ほったらかしなんだけど。
田中 うちもほったらかし!一番下は幼稚園に行くのに自分で水筒用意してたからね。でも、うちはもう高2、中2、小6、小3だから、そろそろ子育て終わりかな。
五本木 うちは幼稚園に上がるくらいになったらそんなに大変じゃないなって思ったのを良く覚えてます。外食しても旅行に行ってもそんなに手がかからない。
子育て中の悩みは健常の子も障害児も同じ!
reiko うちのダウン症の息子(6歳)は私の眉毛を触ると安心するみたいでよくやるんだけど、たまに私が早起きして化粧もばっちりしてから子どもを起こしに行ったりすると、せっかく描いた眉毛をさわさわ触られて朝から腹が立ったり!
五本木 うちは朝の薬が欠かせなくて、機嫌悪いと口開けないとか、それで時間とられたりとかよくあるよ!
misa 面白いね~、みんな日常でいろんなことあるもんね。こういう話をコミュニティでできればいいなと思ってるんだけどね。
reiko そうそう、話すだけですっきりするし、「うちも同じ!同じ!」って盛り上がれるよね。
五本木 子どものやることは健常の子も障害児も同じだもんね、悩みとかこういう風にしたいなとかね。
田中 いずれそれを目標に!たぶん1年後ぐらいには実現するんじゃないかな。働きかけ次第だよね。
五本木 最終的には健常のお母さんとこういうふうに交流が持てるようにもっていかなければいけないと思う。じゃないと、子どもの障害について周知されないし、わかってもらえない。全員じゃなくてもいいんだけどね。
田中 そう、ちょっとでも興味がある人が集まって交流できればいいよね。いろんな人がいるから。
横須賀の子育てにアンテナ張りまくっている田中さんの活動に迫る!
お母さん目線で横須賀を盛り上げたい!『お母さんミーティング』
田中 今は商工会議所と連携していて、商工会議所が横須賀を盛り上げようというプロジェクト「新生横須賀実践フォーラム」の実行委員のひとりとして参加していて、私が目指しているのは大きく以下の2点。
- お母さんたちの目線で横須賀を盛り上げることができないかということ
- 横須賀の魅力をお母さん目線で発信したい
そういう目的があるので、『お母さんミーティング』というのをやっています。
お母さんが在宅で働ける仕組み!『テレワーク事業』
それから、もうひとつ。テレワーク事業というのをやっていて、家に居ながらパソコンでお仕事がでるようなことを商工会議所を通しでできる仕組みを今、作っています。私は今、参加者という立場でやっていますが、ゆくゆくはお母さん同士のネットワークを作って、横須賀のお母さんが繋がれるような仕組みが何か作れたらいいなと思っているんです。
審議会に参加してお母さん目線で発言!
以前、横須賀市母親クラブ連絡会の役員をしていた時に、子育て・お母さんに関するいろいろな審議会に参加させていただきました。そのときに「行政でもお母さんに役立つサービスがこんなにもあるのに、なぜ私たちは知らないのか?」という疑問から、お母さんもこのような会議に参加し、お母さんなりに理解し発言し、お母さんにわかりやすい形で発信することが必要だと思いました。
現在、私は市民公募委員をして2つの審議会委員(児童福祉審議委員・市民共同推進委員)をしています。
毎回審議会ではたくさんの資料があり勉強することばかりですが、その勉強したことをわかりやすく皆さんにお伝えできたらと思っています。また、行政に対しても、会議の中でお母さんの立場からお母さんの現状・子育ての現状を知ってもらえたらと思っています。
横須賀ならではの子育てを知ってもらいたい!
田中 また、いろんな人からいろんな人を紹介してもらって人の輪を広げているんですが、今、私の中で一番大きいのは本田圭介の大叔父さんという方です。その方が今、横須賀に住んでいて、今度、馬堀のほうでカヌー教室をやるというんです。東京オリンピックに出て、またいろんなオリンピック選手を育ててきたという方なので、その育ててきた経験もありますし、今は80歳という高齢でいらっしゃるんですが、スポーツの楽しさを子どもたちの教えたいという夢があって、その夢を実現させるために色々と活動をされている方なので私自身とても注目しています。そういう方を紹介したり、このようにいろんなところで展開されている横須賀ならではの子育てをもっとみんなに知ってもらいたい。そしてらもっとみんなに参加してもらいたいなと思って、一生懸命情報を発信しているところです。
五本木 私も田中さんを通して、多くの人が横須賀で活動していることを知りました!
田中 そう、多いんです。でも、今まで横のつながりがなかったから、みんな個別に活動していたんです。
昔はそれで良かったのかもしれないけど、今はつながっていくことの力ってとても大きい。みんながそれに気づき始めてみんなつながりたいと思っているから、それは活用しなきゃいけないことだと思うし、一人の力ではどうにもならないことでもみんなが寄れば大きなことができる。何十人も集まればもっともっと大きなことができる。
みんながいい具合にできることがたくさんあるから、まずは何ができるのかをみんなで見極めていければいいなと思っています。
その中で、まずわたし自身がお母さんであるという立場で何かできることがあるんじゃないか。そしてもうすぐ子育てを卒業していく立場として新しく子育てを始める方を応援したいという気持ちもあって、自分の経験ややってきた積み重ねを活かしてできるアドバイスがあると思うから、そういうことを次の世代に伝えていきたいなと。そして、ゆくゆくは自分の子どもにもそういうアドバイスを繋いでいければいいなと思っています。
『お母さん業界新聞』はどこで手に入りますか?
はぐくみ館と生涯学習センター、児童図書館、市内の体育館においてもらう予定です。あとノジマモール、行政センター(不定期)。お願いして置いてもらうことになるので、やっぱりここでもつながりが生きてきます。手配りもしているので、声を掛けていただければまとまった部数をお渡しすることも可能です。今後はお母さんが立ち寄る場所などへの設置場所の拡大はもちろん、幼稚園などでも配布してもらえるようになればいいなと思っています。なかなか人手不足で難しいんですよね。
お母さん大学横須賀支部のフェイスブック(外部リンク)>>https://www.facebook.com/yokosukaokaasan
お母さん大学(全国版)サイト(外部リンク)>>http://www.okaasan.net
新聞を発行してどんな反響がありますか?
一番記憶にのこっているのは、私がやっているイベントをこの新聞で知って、私に会いたいと思ってわざわざ会いに来てくれた人がいたことです。結局、その人が今の私の仕事を手伝ってくれていて、その出会いがとても嬉しい。
その他、いつも読んでますって言ってもらえたり、私が書いている編集後記では自分の家のことを書くことが多いのですが、「田中家の様子がよくわかる!」って言ってもらったり。長女が反抗期が長かったのでその悩みをちょっと書いたりすると興味を持って読んでもらったり。反響はどんな声にせよ嬉しいものです。
ズバリ!健常児のお母さんは障害児のことをどう思っているんでしょうか
田中 うちの長男が幼稚園の時に発達障害の子がひとりいて、その時はクラスのみんなが見守っているような雰囲気ができていました。ダンスの発表会の時に、あっちに行ったりこっちに行ったり移動が多かったんだけど、クラスの子が入れ替わり立ち代わりみんながその子の手を引いてサポートしていたのにすごく感動して、「あぁ、こうやって障害があってもなくても子どもは子ども同士で学ぶことがすごく多いんだな」と感じました。
やっぱり今、バリアフリーって言われているけど、まだまだ隔たりが多いと思うし、なかなか交われる場所がなくて、それはすごく残念なことだし、お互いに学ぶことがあるから、障害があるなしに関係なく子ども同士が交われる場所ができればいいなとすごく思っています。
五本木 関わったことがない人にとってはなかなかそのあたりがわかりづらいですよね。
田中 障害って聞くと、何かしてあげなくちゃいけないって思いがちなんだけど、そうじゃなくて1人の人間として接するとお互いにメリットになるということが必ずあるからうまく生かせる場所があるとよいのになと思います。
五本木 そうなんです、すごくたくさんの魅力を持っているんですよ。
田中 仕事で月2回行く介護施設にも全介護が必要なお子さんもいるんだけど、そういう子どもたちからもはっと気づかされることが多くあります。生きるってこういうことなのかな、と。
五本木 そうスケールが広がるんですよね。私も障害児の娘を育てているんですが、本当に価値観とか世界観とかが変わるし、肢体不自由児者もそうだし、うちの娘みたいに肢体と知的両方の場合もそうなんだけど、外見とかパッと見だと「できない」とか「やれない」、「ムリだろう」という固定観念がやっぱりあるんだろうけど、『自閉症の僕が跳びはねる理由』の著者である東田君が講演会でも言っていたように、本当に心とか感情はおんなじに成長する。だから、言葉にできないとか表現できないっていうだけで、中身は一緒なんだろうなって思わされることがすごく多いんです。
例えば、sukappoメンバーのひとり、がらっぱちには肢体不自由のお子さんがいて、今、家を建て替え中なんだけど、明日でこの家とお別れっていう日にパパが添い寝しながらそのことを伝えたら、その子が涙を流したっていう話を聞いて…。しゃべれないし、重度の心身障害児なんだけど、ちゃんとわかってるんだなって。
田中 お金をもっているから偉いとか頭がいいから偉いっていうんじゃなくて、人間としてっていう話なんだよね。
五本木 田中さんは障害児との関わりも多いし、ある程度色々なことがわかっていらっしゃると思うんですが、普通の健常児の親御さんが障害児をどう思っているのか、社交辞令とか抜きで率直なところを一度聞いてみたいと常々思っているんですよね。もしかしたら、お互いに接し方がわからないから、そしてお互いに聞けない言えないというのが隔たりになっているのかなと思うので。それをこちらから「いいよ、思ってること正直に言っちゃって!」っていうところからスタートすればもしかしたら面白い話ができるんじゃないかなと思ってるんですよね。ぶっちゃけトーク大会とかね!
田中 そうなんだよね。なんでもしてもらいたいというわけではないんだよね。子育て支援もどちかというと支援じゃなくて応援してもらいたいわけで、子育て支援の中にも、おかしなのもあるから、税金をかけてまでやることなのか、有効なのか有効じゃないのかなど、そういうのをきちんと見極められるお母さんになってほしいなというのはありますね。「行政は何もやってくれないじゃないか!」というばかりじゃなくて、ここまではわたしたちがやるけど、その代りここからは行政にやってほしいという、きちんと見極められる意識の高いお母さんを横須賀に増やしたい!
横須賀のお母さんについてどういう印象がありますか?
田中 やっぱり時代があるなと感じます。うちでいうと長女を育てているときのお母さんと一番下の子を育てているときのお母さんの時代背景とか雰囲気とか価値観とか、もう全然違うんですよね。昔はTシャツにジーパンで髪の毛振り乱しているお母さんとかが当たり前だったけど、今のお母さんはヒール履いて自分もきれいにして…っていうお母さんが増えていますよね。
子育ての様子も全然違う、横須賀に限らずどこでも同じなんだろうけど。お母さんの価値観がどんどん変わってきてることのいいところも悪いところも見えるので、もっとこうしたらいいんじゃないかなという部分もあるっちゃあるので…。
昔はメールとかラインとかなかったけどもっと密に交流できてたよね。よその子も平気で預けられたりしてたけど、今は子どもを預けられるお母さん(そういう関係)がいないですよね。それだったらお金をかけてちゃんとしたところに預けられるほうがいいというほうが多い。
子育てにもやっぱりいろんな変化が出てきてる。お母さん同士のコミュニケーションの仕方が変わったことで、その質も変わってきているし、子ども同士の関わり方も変わってきてますよね。まぁ、下の子っていうのはわざわざ遊びに連れて行かなくても家で結構遊べちゃうから、余計に友だちの関わりにも影響しちゃう。上の子は毎日遊べたのにね。
だから、もっとお母さんの力でもっと色々やろうよ!と思います。
五本木 子どもが主役の街なんだから、障害児も主役にならなきゃ!
sukappo隊長・五本木愛の視点
今回、田中さんと対談させて頂き、やはり健常児であろうが障害児であろうが保護者が悩む事、求めるものは基本的には同じだということを強く感じました。
障害児向けか健常児向けかという違いはあるものの、私たちがこのsukasuka-ippoを立ち上げた理由と田中さんが『お母さん業界新聞 横須賀版』を立ち上げた理由には全く同じ想いが込めらています。
そう、いくら行政や地域団体が頑張って教育支援、障害福祉支援をしてくれていても実際に子育てしている家族に伝わっていなければ全く意味のないものになってしまいます。
そういう根底にある共通の思いをリンクさせることで田中さんと協力して、何か形にしていくことができそうだなと感じました。
これからが楽しみになった有意義な対談でした!
対談日:2016.04.25
撮影:misa
編集:pototon
sukasuka-ippo
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