今回取材させていただいたのは、横須賀市浦上台にある障害者支援施設『シャローム浦上台』
三浦半島に住む身体障害者が地域で暮らせるようにと、2002年に設立され、今年で16年目を迎えました。
現在は様々な障害をお持ちの51名の方が入所されており、また生活介護のデイサービスには20名の方が通われています。
記事の前半では施設見学を写真たっぷりでお届け、
後半では施設長の宇都宮さんにインタビュー!
どうぞ最後までご覧ください。
『シャローム浦上台』施設内を見学!
3階建てになっており、
- 1階は医務・看護室、機能訓練室、スヌーズレンルームやデイサービスセンターがあります。
そして『シャローム浦上台』ならではの地域交流ホール・喫茶コーナーも! - 2階・3階は主に居住スペースになっています。
利用者さんたちの笑顔あふれる温かみのある館内
▲広々とした廊下は、車椅子の利用者さん同士のすれ違いもスムーズ。
1階には利用者さんが日中活動するお部屋がいろいろ!地域交流スペースも
広くて明るい!町内と共催イベントも企画/地域交流ホール&喫茶コーナー
▲こちらが地域交流ホール。吹き抜けの天井の窓から光が差し込む明るい空間です
ここ『シャローム浦上台』では、多くのイベントを町内と共催で行っており、このホールは会場として使われる他、企画や打ち合わせにも使われています。
また、職員の方たちの朝礼もここで行われます。
▲ホールには『社会福祉法人 三育福祉会』の理念が大きく掲げられています
▲ホールの隣には喫茶コーナー。談話等、自由に利用することができます。
▲ホールと喫茶コーナーは普段はパーテーションで区切られていますが、取り外しできるので繋げて広々と使うこともできます
嘱託の内科医・精神科医・歯科医が診察/医務室・看護室
『シャローム浦上台』では嘱託医が来所し、診察をしています。
- 内科/週1回(毎週水曜日)
- 精神科/月2回
- 歯科/ 定期的に往診
- 泌尿器科、眼科、整形外科、皮膚科/必要に応じて受診
- 看護師/5名 8:30~18:00勤務(2~3名交代)
▲利用者さんの普段の健康チェックや薬の管理、予防接種や健康診断などは看護師さんのお仕事。
▲この部屋でドクターが診察をしたり看護師さんがお仕事をしたりします。この日は3人の看護師さんがいらっしゃいました。
理学療法士が常勤、リハビリを担当/機能回復訓練室
- 理学療法士の方が常勤で1名いらっしゃいます
- 歩行訓練や、機能回復訓練などリハビリを行います
- デイサービスでもこちらを利用し訓練をします。
日常とは違う異空間体験でリラックス…/スヌーズレンルーム
▲光やアロマ、音楽を流し、幻想的な空間を演出しています。
マットレスは車いすから移りやすい高さになっています。
▲天の川を連想させるグラスファイバー。何時間経っても熱くなりません。
奥のバブルチューブはブクブクブクという振動が母親の胎内にいた時と似ているため、抱きついてリラックスする利用者さんもいらっしゃるのだとか。
▲こちらはスタークラウド。雲の中にきらめく星々をイメージしています。
- 室内は車椅子の方も利用しやすいように、とても広くなっています。
- 床には柔らかいマットが敷いてあるので、ゴロンと横になることもできます。
- 気分がハイになってしまった利用者さんなどは、職員の方と一緒にこちらの部屋に来てゆっくりすることも。いつの間にかウトウト…
- スヌーズレンルームを使った企画を毎週考案!アセスメントなどで事前リサーチし、使いたいという利用者さんには積極的に使ってもらっています。
地元の食材にこだわり、安心・美味しい食事を提供!/調理室
調理する食材には、地元三浦の畑から直送された農家さんこだわりの有機栽培野菜を使っています。
▲とても広い調理室。
この日のメニューは手作りさつま揚げ!いい匂いが館内に漂っていました。
▲奥に見えるのは温冷配膳車。温かいものは温かく、冷たいものは冷たく、そのままの美味しさで、利用者さんに提供することができます。
ゆったり過ごせる憩いの場!/デイサービスセンター
現在20名の方が通うこちらのデイサービスセンターでは、
- 食事・入浴
- 体操・レクリエーション
- 健康チェック・リハビリ
を行っています。
▲広々としたフロアにいくつかのテーブルがあり、皆さん思い思いの時間を過ごされていました。
また、喫茶コーナーでのおしゃべりも、利用者さんの楽しみのひとつなんだとか。
▲窓にはカラフルなステンドグラス風作品が。
▲壁には利用者さんの作品がずらり!
▲日中活動で行っている園芸のお便り。野菜の成長の様子が楽しく紹介されています!
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横須賀市には身体障害の方のためのデイサービスはまだまだ少ないのが現状。
『シャローム浦上台』では少しでも多くの方が利用できるよう、送迎の範囲を広く設定し、有料道路を使っての送迎も行っています。
2・3階の居住スペースへ
利用者さんによってカスタマイズされたお部屋は個性たっぷり!ロケーションも抜群!
居住スペースはフロアで男女を分けています。
今回は2階の男性利用者さんの居住スペースにお邪魔しました。
▲お部屋は全室個室で、
- 電動ベッド・洗面台・衣装棚が備え付けられています。
- 家具や、電化製品(テレビ、パソコン、冷蔵庫)の持ち込みは自由です。
▲こちらの洗面台は元々戸棚がついていましたが、車椅子の利用者さんも使いやすいよう扉を取り外し、十分なスペースがとられています。
▲こちらは海の見えるお部屋。
▲東京湾が一望できる最高のロケーション!この日はあいにくのお天気でしたが、晴れた日には房総半島を眺めることができます。
▲こちらのお部屋に住むご利用者さんは、元・靴修理の職人さん!
入り口や廊下に作品が賑やかに飾られています。カラフルな飾りに、こちらも楽しくなります♪
利用者さんによってお部屋の雰囲気はさまざまで、
- 絨毯が敷いてあったり、ベッドの高さや敷布団などがカスタマイズされており、個々に合った居心地のいい空間がつくられていました。
- 在宅で暮らしていた時と同じように、自分の持って来たいものは持って来てもらうことが可能なので、部屋でパソコンをしている方、絵を描いている方もいらっしゃいました。
利用者さんの人物紹介がコミュニティーペーパー「はまかぜ新聞」に掲載されました!
今までに4人のシャローム浦上台の利用者さんが「はまかぜ」に掲載されました。
「なかなか障害者というのは注目される機会が少ないので、こういう新聞などで取り上げてもらうことは良いことだと思っています。」と話すのは施設長である宇都宮さん。
利用者さんは自分が掲載されたこの新聞をくしゃくしゃになるまでとても大事にされているそうです。
日中活動も盛りだくさん!利用者さんの希望に合わせたプログラム
予定は事前に利用者さんに希望を聞き、日程を組みます。
園芸やカラオケ、クッキングやお茶会など定番のものから、ビリヤードや石のサボテン作りなどユニークな日中活動まであり、皆さん楽しんで参加されています。
広々!明るい空間で楽しくお食事/食堂・デイルーム
▲こちらも車椅子同士がすれ違えるよう、広々とした空間になっています。みなさんお食事を楽しんでいらっしゃいました!
利用者さんが自分で使える!/洗濯室
施設内には業務用の大きな洗濯機もありますが、利用者さんが自分で洗濯できるよう、家庭用の大きさの洗濯機も設置しています。
▲ドラム式の洗濯機が4台あり、自分で洗濯をしたい利用者さんが使えるようになっています。
こちらの洗濯室のこだわりは、
- 車椅子に乗ったままでも使いやすいように、床を高くし、洗濯機はドラム式を採用。
- 使用中の洗濯機にはネームを下げ、どの利用者さんの洗濯物か分かるようにしておきます。
この洗濯機を使うことで、自分で洗濯ができるようになった利用者さんもいらっしゃるのだとか!
トイレは各フロアに8つ!横になったまま利用できる特殊排泄室では音楽を聴きながらリラックスしてマッサージも
居住スペースにはそれぞれの階に8つずつトイレが配置されています。
▲こちらは特殊排泄室。横になったまま利用することができます。
排便がスムーズにできない利用者さんには投薬や浣腸、マッサージを行っています。
マッサージの時間は1回20〜30分位。少しでもリラックスしてもらえるよう、音楽を流したり、エアコンで快適に温度設定しています。
▲利用者さんに合わせていろいろなCDを用意しています!
各フロアにスタッフルームを配置
女性フロアは女性スタッフが担当、男性フロアは男性スタッフが担当しています。
車椅子のための広々とした避難経路を確保!
▲ベランダは、車椅子でも通りやすい幅が確保されています
▲このように屋上から1階までスロープになっているため、スムーズに避難ができます。
▲避難順路にはいくつもの大きな赤い矢印が。利用者さんはもちろん、初めて来た人にもわかりやすく示されています。
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【TALK】経験とノウハウに満ちた施設長の宇都宮さんの視点
みなさんがまずびっくりされるのは、住宅街のど真ん中に建っているということ
障害者の施設というと、それだけで地域の方からは敬遠されることも多いかと思います。だけどここは、住宅街のど真ん中に建っているっていうことで、そこにまず皆さん驚かれますね。
当時、三浦半島には重度の障害を持った方々が暮らせる場所がなかった
元々ここは県の土地で、女性のための施設が建てられていました。それを廃止して地域のための公園にしようという話が持ちあがった時に、県の方がこの場所を見にきて、これだけの土地があればもっと何かできないか、と考えてくださったのがきっかけです。
当時、三浦半島には身体障害の方が入所して暮らせる施設がなかったので、重度の方は三浦半島から出て暮らさなければならなかったんです。
それで県の担当の方が、この場所にそういった重度の方たちが入れる施設を作ろうじゃないかと、三浦半島で一番人口の多い横須賀市をはじめ、鎌倉や葉山、逗子、三浦の半島一帯の行政に声をかけてくださいました。そして、
- 県がこの土地を横須賀市に無償で貸し出すことを決定
▼ - 特養の施設をやっていたシャロームに市から相談がくる
▼ - 障害に対してノウハウはなかったけれど信頼して任せていただくことに
…というのが、身体障害の方の入所施設をつくることになった経緯です。
その頃はまだ措置の時代だったので、依頼は横須賀市のみならず三浦・葉山・逗子・鎌倉からもあり、何人かずつ入ってこられました。
ご本人は「やっと実家の近くで暮らせる」、ご家族は「面会に行ける」ということで、本当に喜ばれていらっしゃいました。
開所から今年で16年目。身体障害だけでなく、知的や精神も重複している方がほとんど
入所されている方は皆さん重度の身体障害をお持ちなんですが、最近では知的障害の強い方が入ってこられたり、精神を持ってる方もいらっしゃいます。
- 障害支援区分は6までありますが、ここに入所されている方の平均支援区分が5.5なので、本当に重度の方が多いです。
- 身体障害があってさらに知的障害もというような障害が重複している方がほとんどで、51人中32人いらっしゃいます。うち30名は精神のお薬を飲んでいらっしゃいます。
- 歩ける方も3人くらいしかいらっしゃらないので、ほとんどの方が車椅子を利用されています。
障害の種類も程度も様々。同じ支援ができないというところは、すごく難しい
生まれつき障害を持っていらっしゃる方が多いのですが、中には結婚して子どももいたのに途中で障害を持ってしまったという中途障害の方もいます。障害は様々ですが、皆さん同じ空間で一緒に過ごされています。
障害の重さや、困難さ加減が違えば同じ支援ができないというところでは、難しく感じるところもありますが、その方に合わせた支援をするために職員は駆けまわって仕事をしています!
ご本人の意向を最大限に盛り込んだ個別支援計画
本当に支援の内容は様々です。言葉がしゃべれない方もいらっしゃる中で、ご本人がどうやって暮らしていきたいか、今後どうしていくのかというのを導きだして個別支援計画を立てるのは、すごく大変なことだと思います。
年に2回、きちんとモニタリングをしながら個別支援計画を立てていますが、うちではカンファレンスの際に必ずご本人にその場にいてもらい、「こうしていきたい」という思いを反映させる計画を立てるように意識しています。
ご本人には事前に、
- ここでの生活で何が楽しいか
- 今度どこに行きたいか
- 今後どこに住みたいか
というように、いろんなテーマで聞き取りをしておいて、それを紙にまとめたものを、カンファレンスで一緒に確認します。
本人の意向がかなり盛り込まれた支援計画を立てているというところが、他ではあまりないことかなと思っています。
相談支援事業所『ゆんるり』を通して作成しているサービス等利用計画というのもありますが、ここで暮らしている方たちにとっては個別支援計画がメインになるので、それは完全にこちらで計画を立てて、こちらでサービスが完結しているという形です。
高齢者施設のように5年、10年では終わらない…長く生活する場所だからこそ、できるだけ家での生活に近づけたい
ここに入所されている方は、デイサービスやショートステイの利用だけでは難しくなって、最終的に家では暮らせなくなった方たちです。
つまり、ここでの生活がこれからの人生の全てになるわけですよね。だから、できるだけ家での生活に近いものにしていかなければいけないと思っています。
同じ入所施設でも、高齢者のほうは最期の5年、10年を過ごす場所と一般的には考えられます。
しかし、障害のほうは、20-30代の若さでも、行き先がなくなって切羽詰まってきた段階でいらっしゃることが多いです。実際に開所当時に20代で入られた方が今年40歳になられるなど、なかなか家には帰れないというのが現状です。
「家に帰りたい」という思いは否定せず、できることを増やせるように支援計画をつくります
支援計画をつくる時に、「家に帰りたい」とおっしゃるご本人に対して、「それはできません」とは言えないので、「じゃあ、それを実現するためには何をすれば可能性があるか」という観点でで、「できなくなったことをできるようにするにはどうしたら良いか」を一緒に考えます。具体的には、
- PTで機能回復のリハビリ
- 普段の生活のなかで必要な字を読めるように練習
- 計算のしかたを毎晩練習するのを16年続けている人も!
簡単には進みませんが、それでも「諦めないでやろうね」と励ましながら目標に向かって努力することを継続しています。
全盲でも、練習を重ねて1人で外出できるようになった方がいます
全盲の方で、ここに来るまではいくら練習しても1人で杖をついて外に行くことができなかった方が、どうやったらできるようになるかを職員が考えて、横浜のライトセンターの方に来ていただいて白杖をつく練習をし、今ではここの施設から馬堀海岸の駅まで、1人で行くことができています。
練習をするときに気を付けたのは、
- 信号での待ち方、渡り方をしっかり教える
- 道が狭くなっているところは迂回して、危なくない道を選ぶ
- 地震など何かあった時にすぐに迎えにいけるように、通る道筋は絶対に変えない。出掛けて帰ってくるまで、この道以外は通らないという約束をする
ということ。
ご家族の許可を得て、保険にも入ってもらい、承諾書もいただいて、やっと1人で行けるようになったんです。
両手が塞がらないよう、リュックを背負ってもらうように
初めてひとりで出かけたときに、スーパーでバナナを1房買って、大きなビニール袋を手に提げて帰ってきたんです。
買い物はさせてあげたいけれど、杖をついているので両手が塞がってしまうのは危ないということで、以降はリュックを背負ってもらい、買ったものはリュックに入れるようにお願いしました。
上下真っ赤な服を着用!?とにかく目を引くことで知っていただく機会をつくりたかった
事故に繋がりにくくなるように、周りの目を引くような上下真っ赤な服を外出するときは必ず着ていただくようお願いをしました。
いつも同じ赤い服を着てることで、地域の人にその方を知っていただく機会をつくりたかったんです。
そのおかげで、「今日、また行くのね、気をつけて行ってらっしゃい」というような声をかけてもらえるようになりました。
行く先々で、お店の人が気にかけてくれるように
また、その方はスーパーでいつも同じ納豆を買ってくるのですが、お店の人ももうわかってくださっていて、ちゃんと納豆売り場まで案内してくれるんです。
その帰りに、すぐ隣にあるマクドナルドに寄ってコーヒーを飲むという流れがあるのですが、そこでも声をかけてくれるようになりました。目が見えないと、どの席が空いているかわからないので、お店の人が案内してくれて、片付けもしてくださるんです。
これは、こちらからお願いしたのではなく、彼が行くことで自然と周りの人がそのように気にかけてくださるようになったんですよね。
人からしてもらうことを当たり前と思わないで、感謝の気持ちを忘れないでほしい
ただ、お店の人がそうやって彼のためにしてくださるのは、特別なことで、とてもありがたいことなんだ、という感謝の気持ちをちゃんと彼にも持っていて欲しいので、「やってもらうのが当たり前じゃないのよ、感謝しないとだめよ」とご本人には伝えています。
彼自身も、自分のために言ってくれていると理解してくれて、「あ、そうだね」とちゃんと聞いてくれています。
「白杖=全盲」という理解はまだまだ少ない。心配は尽きません
ご本人にしたら、「自分が努力したから行けるようになった。自分はなんでもできる!」というような気持ちになっているので、そこがちょっと怖いところです。ご本人は「心配なら後ろからそっとついてきてもいいよ」なんて言ってくれたりするんですけど。
どれだけ長く経っても、どれだけ自分で注意することができてても、心配が尽きることはありません。
例えば、後ろから来た自転車が、杖をついてることに気づかず、チリンと鳴らしてどいてくれると思って、そのまま突っ込んでくるとか…何があるかわかりませんから。
高齢者の杖と白杖の違いというのは、学校でも教わらないですし、自分が生きていて経験していくなかで、あ、この人は目が見えないのかな?と思って初めて白杖の意味を理解する人も多いと思うんです。
小学校で自転車の乗り方と一緒に、白杖の意味を教えてもらえたらいいなと思います。
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最近は小中学校から、見学や職場体験に来てくれます
最近は、近くの小学校から子どもたちが体験に来てくれたり、中学生も職場体験で来てくれることがあるので、いろんな障害の人がいることを私からも子どもたちに話をします。
ここに入所されている方はかなりレベル差があるので、あきらかに障害があると見てわかる人もいれば、普通に歩いて、普通に話してる精神的な病気をお持ちの方もいらっしゃいます。
必ずしも車椅子に乗っている人たちだけが障害者ではなくて、見えないとか聞こえないという障害もあって、それは周りから見るとすごくわかりにくいんだっていうことを、どうやって知ってもらうかが私たちの課題です。
教育という目的ではなく、とにかく知っていただくところから進んでいかなくてはと思います。
専門学校や大学などから実習生がたくさん!重ならないように調整したりレベルに合わせて教えたりが結構大変
実習生もたくさん来ます。
保健福祉大学だったり、医療福祉の専門学校だったり、資格をとるために人材派遣のほうからも実習生が来ます。
学生さんだと夏休みを利用して来られることが多く、7~9月は2人くらいずつ曜日を組み合わせながら、休みなしで実習を受け入れてます。
実習担当は、毎日同じ人がつくわけではなく、早勤と遅勤で違ったり、役割もいろいろ経験していただかなければいけないので、その組み合わせを考えるのは大変です。
実習の段階も3段階あって、例えば1年生と2年生だったら、それまでに経験してきてる段階も違うわけです。この人は何段階で来ているからこのレベルで教えてくださいとか、実習前の体験であれば身体介護とかそういったことは経験させないでくださいとか、現場にきちんと伝えて、レベルに合わせて実習をしてもらえるようにしています。
授業で学んできたことと現場の実務は全然違います
学校での座学とこちらに来ての体験というのは、全然違います。
学校はやはり基本を教えるけれども、ここに来ると、それまで学んできた基本以外のことのほうが多い。実際はこうしなきゃいけないのよと教えていきますが、特に技術なんかは基本のままできる人なんてほとんどいないわけです。
利用者さんは、入所される前は在宅で親御さんが見ていたので、それと同じやり方でやってくださいっておっしゃる利用者さんも多くて、でも親子だから自分のやりたいようにやってきてるわけですよね。
ここでのやり方っていうのは、学校で教わった基本とも、在宅で親子でやってきたこととも違います。
本人にとって、身体に1番負担がない方法をしっかり研究して、本人はもちろんPTや支援員とも相談しながら、このやり方だったらどう?と試しながらやっていくので、だから基本の技術だけではなく対応の仕方が大事になってくるんです。
例えば、同じ精神障害がある方で、同じ1つのことが起こったときに、
- この人はこういう言い方で伝えると気持ちがグーンと下がってしまう…だから軽い感じで「そんなの気にしないで平気よ」と流してあげたほうがいい
- この人はきちんとした対応をしないと納得しない性格の人だから、「日を改めてこのメンバーで伺いますので、その時にお話をお願いしますね」と言って、しっかり時間をとってお話を伺って今後どうしていくか決めましょう、とそういう風な対応した方がいい
…というように、全然違うわけです。
そうやって見極めながら現場でやっているという事を、実習生達にも教えています。
実習生を教えることで、職員自身もレベルアップできる
「実習生をきちんと福祉の人に育て上げなければいけない」ということを常に職員には言っているので、実習の担当になった職員は、教えるにあたり、かなり勉強していると思います。
実習生の実習記録に対する職員のコメントを見ると、「これだけのコメントが書けるんだ!」というように、その職員のレベルが上がってきたことがよくわかります。
[episode.01] 実習を経験して職員になった福祉大学の卒業生が、入って3年目で今度は実習担当に!
入って3年目の女性職員がいるんですが、彼女もここでの実習を経験して、うちに来てくれたんです。
彼女が卒業した大学の先生がいらっしゃったときに、「まだ3年目なのに実習担当なんて大丈夫ですか?」と心配されていたので、「任せてください。そうでなかったら実習にはつけません」とお伝えして、彼女が実習生に対して書いたコメントを見せたんです。
それを見た先生は「毎日楽しくてしょうがないでしょうね」とおっしゃっていました。
実は彼女、本当は他に行きたい施設があったのですが、ここで実習をして、教えてくれた職員やここの対応の仕方が響いたようで、決めていた進路を変更して、ここに来たそうです。3年経って、先日初めて知りました。
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福祉に定着する人が増えて、横須賀全体で施設や人材が育っていったらいい
実習や研修を積極的に受け入れているのは、うちに就職してもらいたいということではなくて、福祉の人材を育てて、底上げをすることが一番の目的です。
福祉を目指して勉強している人たちが、福祉の仕事ってこんなものかとガッカリしたり、大変だから嫌だという気持ちにならないような実習を心がけています。
これからこんなことをしていきたい、こういうことを実現していけるかもと思える、そんな体験をしてもらいたいなと思います。そして、ずっと福祉に定着してもらえたらいちばん良いなと。
スキルアップのために他の施設へ移りたいと言われたら、背中を押してあげたい
ここの施設で仕事をして、ある程度経験を積んだ上で、もし他の所に移りたいと言ったら、私はその人がスキルアップしていくのであれば、他の施設長さんたちにも紹介して、繋げてあげたいと思っています。この横須賀で、同じ福祉の世界で頑張って、また会えるように。
[episode.02] うちを辞めて他の事業所へ移った人が、相談員として頑張っていた!
実際にうちを辞めて、他の所で働きたいと言った職員を送り出したことがあります。
そうしたら先日、別の所で偶然会って、もらった名刺を見たら相談員になっていて
「頑張ったんだね」と声をかけたら、
「はい。応援してくれているのがわかっているから、こうやってまたいろんな場面で会っても逃げるような辞め方をしないで済みました」と言っていましたね。
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やはり福祉で何かを目指している人が、ずっとこれからも長く福祉の世界で頑張っていけるような、そんな施設でありたいですね。
そして大きな意味で、横須賀全体の福祉が育っていけばいいなと思います。
障害のある方のケアは大変。利用者さんとのかかわり合いで大事にしていることを聞きました
まずは1日体験から!
うちに職員として入ってもらう時は、会話だけの面接ではなく、必ず1日体験をしていただいています。
というのも、続けられるかどうか、ご本人の意思を確認して、こちらも見極めをしたいからです。
1日の体験では、体が辛くなったり心がすさんだりというのはないと思いますが、しばらく経つと嫌になってくるということもあると思うんです。一生懸命やってるのに、わがままばかり言って…とか、やるせない思いが沸々と湧いてきたりするわけですね。
生まれつき人の手を借りて生活してきた方にとって、支援は当たり前
障害をお持ちの方たちは、生まれつき人の手を借りて生活してきていらっしゃる方がほとんどなので、それが当たり前になっていて、支援者側が障害の人をケアしていくというのがどれだけ大変なことかわからないまま大きくなってしまうんです。
障害のある人同士で過ごすことの多い今。生活する場が変わって初めて、社会性が身につく
今、障害を持つ若い人たちは、作業所や入所施設ではもちろん、学校でも障害のある方同士の中で過ごしていることが多いんです。
中途障害の方だと、それまでは一般の社会の中、いわゆる競争の中で生きてきたから、自分がやりたいことをできなかったり、思い通りにいかないこともたくさんあって、時には我慢もしなきゃいけないということを経験していますよね。
でも、小さい頃からずっと障害のある方は、生まれてからずっと自分がこうしたいと思うことは比較的、叶えられてきているわけです。例えばお母さんがなんでも買ってあげたり、周りに何か言われないように庇ってしまう、とかね。
そうすると、施設に来て集団生活をするようになった時に、思い通りにならないことがあると「こういう風にしたいって言ってるのに、なんでしてくれないの?」となってしまう。
やってもらったことに対して「ありがとう」という感謝の気持ちはあっても、普通はやってもらわないことだとは思わないんです。だから生活する場所が変わって初めて、「これって当たり前じゃなかったんだ」と気づく方も多いです。
「わからなくて言っているんだから許してあげて」ではなく、障害の方に対してもやっちゃいけないことははっきり言います
社会性を身に付けてもらうために、やっちゃいけないっことはいけないとはっきり言います。
こうしたら相手の人が傷つくんだということも、ちゃんと教えます。
「わからなくて言っているんだから、許してあげて」ではなくて、私たちがそうであるように、自分がされて嫌だと思うようなことは他人にして欲しくないし、言って欲しくないし、それは当たり前のこと。
だからうちの職員は、一見、利用者さんに対してきついことを言っているように見えるかもしれませんが、それは普通の社会でありえないようなことは、きちんと伝えていくというスタンスでいるからです。
それでも「私が嫌だから嫌だって言ってるんだもん」という利用者さんはいらっしゃいますけどね。やっぱり、ダメなことはダメと言わなければ永遠にわかってもらえませんから。
利用者さん同士が喧嘩!そんなときは…
喧嘩の仲裁はできるだけしない
- まずは「どうしたらいいか話し合ったほうがいいよ」とお互いで話し合ってもらいます。
- うまく解決しなかったときは職員が出ていって、「じゃあ、どうしたらいい?」と双方の話を聞きながら決めていきます。
諦めずに伝えていくことで変わる利用者さんも
「あいつの顔見るのも嫌だ、出ていってもらってくれ」なんて平気で言う利用者さんには、「相手もあなたのこと、そう思ってるかもしれませんよ」とはっきり言います。
相手だって同じ状況で来て、ここで一緒に暮らしていかなければいけない仲なんだから、お互いに譲り合わなければいけないこともあるんだと説得します。なかなか理解してもらえないことも多いんですけどね。職員には諦めないでお話するように言っています。
新しい職員に対して
「どうせすぐに辞めちゃうんだから」
「あんたなんかにやらせない。〇〇さん呼んで」
と言ってみたり、実習生に
「下手くそ、痛いじゃないか」
みたいな言い方をする利用者さんにも、しっかりと毎回毎回、
「自分も尊重されているかもしれないけど、相手も普通の人なんだからちゃんと尊重してあげなければいけない。」
「将来あなたのオムツ交換をしてくれるかもしれない人を、泣かせてどうするの」
「いろんなことをしてくれることに感謝してね、そうすればあなたも暮らしやすくなるのよ」
と、諦めないで伝えていくことで変わった利用者さんもいます。
それでもだめな人もいます!でも、それが障害だから
それでもだめな人はいるので、やっぱりそこが障害なんだということを職員には勉強してもらいながら頑張ってもらっています
障害のことをわからずに働く人は、理解するところまで辿り着くのに何年も時間がかかるので、途中でめげちゃって、辞めてしまう人もいます。
最近は、頑張って勉強している若い人たちが多いので期待しています。そういう人がどんどん増えてくれればいいなと思いますね。
職員が楽しく働くことが一番!
自分が楽しく仕事をしないと、利用者さんも楽しくないし、それじゃ良い職場になっていかない。やっぱり職員が楽しく働くということが、利用者さんにとって一番の効果なんですね。
だから、いつも楽しく仕事できるような状況にもっていく方法を、みんなで考えています!
みんなが楽しめるイベントを企画!中でも町内会と共催の『納涼祭』は一大イベント
サイトのほうでもご紹介させていただいた、『シャローム浦上台』で毎年行われる『納涼祭』。
楽しい企画やブースがいっぱいで、過去の開催の様子を見ても、とっても盛り上がっているのがわかります。
【イベント情報】開催目前!虹色すくいや射的、ブースもいっぱい『シャローム浦上台 納涼祭』にGO!2017.08.27(sun)[開催済]
先日行われた『納涼祭2017』には、sukasuka-ippo代表の五本木愛もちらりと参加!
▲施設の方も地域の方も一緒に楽しんでいる様子が印象的でした!
▲来賓として、小泉進次郎議員(写真左から2番目)のほか、上地克明市長も駆けつけてくださいました!
そして、毎年恒例の宇都宮施設長(写真左)のコスプレですが、ことしは話題のあの人!皆さん、もうお分かりですね…?
障害者支援施設『シャローム浦上台』の基本情報
〒239-0815
神奈川県横須賀市浦上台1-11-1
TEL/ 046-841-0391
FAX/ 046-841-0982
詳しくはHPで!(外部リンク)>>http://www.uragamidai-shalom.jp
運営/ 社会福祉法人 三育福祉会
定員/ 入所52名(全員個室)
短期入所4名(全員個室)
デイサービス(生活介護)20名 送迎サービス、入浴サービス、日中活動あり
『総合福祉施設 シャローム』 / 社会福祉法人 三育会
■特別養護老人ホーム『シャローム』
TEL/ 046-842-1031
http://www.yokosuka-shalom.jp
■『シャローム短期入所センター』
TEL/ 046-842-6830(ショートステイ担当直通)
http://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=38
■『シャローム在宅ケアセンター』
TEL/ 046-844-0301
http://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=25
■ケアハウス 『ルツの家』
TEL/ 046-842-1033
http://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=36
■『シャロームケアプランセンター』
TEL/ 046-844-0301
http://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=7
■『大津地域包括支援センター』
TEL/ 046-842-1082
http://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=46
■『ともしびショップ』 保健福祉大学
TEL/ 046-822-6462
htttp://www.yokosuka-shalom.jp/index.php?id=39
■久里浜障害者支援センター『ゆんるり』
TEL/ 046-838-4616(相談事業)
http://www.usagamidai-shalom.jp/publics/index/15/
■おにぎりカフェ『ゆんるり』
TEL/ 046-838-4627(活動事業)
http://www.uragamidai-shalom.jp/publics/index/50/
・・・
sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点
少し離れた駐車場に車を止めて歩いていると、町内に響き渡る盆踊りの音楽、そして太鼓の音。
地元の方でなければ迷ってしまうような細い路地を、祭りの音に導かれるように進み、密接した住宅街を抜けると『シャローム浦上台』が見えてきます。この日は毎年恒例の『納涼祭』が開催され、とても賑わっていました。
そして、この『納涼祭』について施設長の宇都宮さんに伺って驚いたのは、施設側が納涼祭に近隣の方々をご招待…というスタイルではなく、地域の方たちと『シャローム浦上台』が共同企画・運営で『納涼祭』を開催しているということ。
周りを見ると、車イスに乗り、浴衣を着て盆踊りを楽しんでいらっしゃるご利用者さん。
その車イスを少しでも見やすいようにと、少しずつ角度をずらしてサポートをするのは、その様子から察するにご家族でも施設の方でもないボランティアの方でしょう。
利用者さんと笑いながら話をしている地域の方もいらっしゃいました。
この楽しい空間がごく自然にできているのは当たり前のことではないと思います。
取材の中で、日頃から日中活動のボランティアとして地域の方々が施設に出入りするなど、共存の形が当たり前のようにできているということがわかりました。それが地域に根付いて16年という今の姿にあるのかなと思いました。
横須賀に健常の人も障害の人も交流できる場がもっともっと広がると良いなと思います。
▲シャローム浦上台・施設長の宇都宮さん(右)とsukasuka-ippo代表・五本木愛(左)
・・・
2017.08.17
取材/五本木愛・がらっぱち・うさぎのめろん
写真・加工/ゆっぴー・うさぎのめろん
テープ起こし/がらっぱち・kayoko
文・構成/うさぎのめろん・ゆかねこ
編集/ takeshima satoko
sukasuka-ippo
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