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【取材レポート】子どもにとってどうなのか?大切にしているのは気づく力!小・中学部の肢体不自由児が通う『横須賀市立養護学校』

幼少の障害児を育てる親もときどき耳にする『いちりつようご』、今回、見学させてもらったのはその『横須賀市立養護学校』です。

こちらの所在地は岩戸になるのですが、同じ岩戸に『岩戸養護学校』があるのでちょっと紛らわしい…。
■『市立養護学校』は市立。肢体不自由児のお子さんが通う小学部・中学部を設置。
■『岩戸養護学校』は県立。肢体不自由と知的障害のお子さんが通う高等部のみ設置。

ということで、今回ご紹介する『市立養護学校』は横須賀市内の肢体不自由のお子さんが通われる学校ということで、設備面はもちろん、今回対応してくださった校長の進藤眞由美先生、教頭の髙野博一先生のお話からも、特別支援学校としての配慮の在り方を知ることができました。

では、学校についてのご紹介、実際に学校見学をした様子をまとめてご紹介したいと思います!
市立養護

始まりは汐入小学校・坂本中学校!?昭和42年に設置された『やまゆり学級』

そう、この横須賀市立養護学校。沿革もまたちょっとややこしいのですが、ざっくりまとめると…

昭和39年(1964年)…中学部の知的障害児を対象として鴨居に『中学部横須賀市立養護学校(のちに廃校)』開校

昭和42年…横須賀市における肢体不自由児向けの特殊学級『やまゆり学級』を汐入小学校、坂本中学校に設置

同年、横須賀市社会福祉会館内(汐入町)に2学級が開級

昭和46年…坂本に新校舎として『市立養護学校分校』を開校[★創立記念日はココ!]

昭和51年…鴨居にあった本校が廃校になったことを受けて、坂本の分校を本校に格上げ!

昭和62年(1987年)…現在の岩戸(当時は長沢)に新築移転!

・・・

つまり、今の校舎ができて、もうすぐ30年になります。

老朽化の問題も出てきている校舎について少しずつ改修を進め、現在はプールの天井の改修をしているので、今年度のプール学習は夏休み明けからになるとのこと。きれいになったプール、楽しみですね!

詳しい沿革はこちらで!(外部リンク)>>横須賀市立養護学校【学校の沿革】

学校が掲げる『一歩』、歩けないのにどうして?

こちらの市立養護学校が掲げる教育目標は『今日をふみしめ 明日へ一歩 ふみだす子』

これは長年変わらず掲げているものですが、実は少し前に職員の中から「歩けない子がいる中で、”一歩踏み出す”という表現はどうなのか」という声が上がったのだとか。

でも、その教育目標に込められているのは「今日という日を大切にしながら、伸びていく可能性を信じ、そこへ向かって、頑張っていく、それを支援していく。そんな学校でありたい」という思い。

「学校の気持ちとしては、"一歩"というのは、今よりも一歩、何かひとつでも成長できること、その可能性を見つけてあげたい、という意味で使ってるよね、ということを再確認して、今年もこれでいこう、となったんですよ」と校長の進藤先生。

今注目の『インクルーシブ(障害のある子とない子が支え教え合う)教育』に独自の解釈

昨今、教育現場で盛んに議論され、導入が進められている『インクルーシブ教育システムの構築』については、こちらの学校でももちろん重点目標として掲げられています。

ただし「障害がある子もない子も共に学べるように」という意味があるこの理念。肢体不自由児に特化したこの学校ではどう取り組むべきかが課題になったそうです。そこで打ち出したのが、地域の方たちとの触れ合いを大事にしたいということ。

例えば、校庭の一部である花壇は、「旬花園」と称して、地域の方たちに開放していて、花を植えてもらっているのだとか。咲いた花を届けてくれたり、子どもたちに会ったら声をかけてくれたり、子どもたちも花を摘みにいったり…。

他にも地域の小中学校との交流や居住地校交流を積極的に行い、市立養護学校のことを知ってもらうことにも取り組んでいます。

そういう自然な形での交流を大事にしていくことが、この市立養護学校におけるインクルーシブ教育なのではという市立養護ならではの解釈のもと、取り組んでいるのだそうです。

市立養護

・・・

その他、やはり医療ケアを必要とする子どもが多く通うなかで、健康面は一番気を付けなければならないこと。併せて、防災についても、熊本地震や3.11をふまえて、『健康と安全・安心を大切にする学校づくり』を重点目標のひとつに据えて、しっかり考えていかなくてはならない、ということでした。

保護者の意見や指摘は時に厳しい!でも、その距離感が大事!

どの学校にも学校評価というのがあります。

保護者の方々からの要望や指摘は、はじめはそれこそ厳しいものが多くて、大変でした。

でもそれは、保護者と学校との距離感が近いからこそ!
保護者の皆さんから子どもたちの様子や学校の様子がよく見えるからこそ!

その意見をひとつひとつ真摯に受け止めて、改善できることはする、そうおっしゃる教頭の高野先生。

「なんでトランポリンばかりやるの??」という保護者からの質問

小・中合わせて9年間、同じこと(トランポリン)をずーっとやってるけど、どうして?という質問があったそうです。

それに対しての学校側の回答はこちら。
「最初は“楽しい”から始まって、次は体幹を維持することを意識してみる。高学年になったら“もっとやりたい”という意思表示、それから音楽に合わせてみんなで活動、など成長にともなっていろんな意味を持つんです」

ささやかな疑問でも、こうしてきちんと学校に問いかけると、ちゃんと回答が返ってくる。まずは保護者がきちんと疑問や不安を口に出す、そこに相互理解や改善の糸口があるのかもしれませんね。

特別支援教育に関わる先生方にとっても、ここは成長の場所!

ここにきて初めて、肢体不自由児の教育に関わるという先生も多いのだそう。

教員の専門性の充実、というのは重点目標のひとつですが、「1年目の先生は、専門知識をたくさん身につけるよりも、子どもとの距離を近づけて、どんどん触れ合って、気づく力を身につけることがいちばんなのかもしれません」と髙野先生。

医療ケア児への対応、保護者と学校の連携が不可欠!

ここは児童生徒数の約1/3が、常時、医療ケア(吸引、注入など)が必要なお子さんというところで、医療と連携していかないと成り立たない学校だと話す高野先生。

療育センターや横浜南養護(こども医療センター隣)との大きな違いは、ドクターがいないこと。
看護師ができることはすべて医師の指示書に基づくため、迅速な判断が必要な場合などの不自由さはどうしてもあるそうです。

そこで必要になるのが、保護者の協力と理解。連絡帳はとても細かく書かれており、少しの体調の変化でもチェックします。

けいれん、チアノーゼ時に必要な時間計測、そのためのストップウォッチは各クラスに置いてあり、救急搬送セットは校内2か所に配置。お子さんに合わせた救急を想定した訓練も定期的に実施しています。

市立養護

頑張るのは先生だけじゃない!みんながスペシャリスト

近年、増えた給食の食形態に対応。栄養士さん・調理員さんがすごい!

今までは3形態でしたが、ミキサー食はおかゆ状のものもあったり、中期食はムース状のものとダイス状のものにわかれていたり、幼児食と合わせるとその数、なんと5形態。これは栄養士さんと調理員さんの理解と努力がなければ実現できないことです。

市立養護学校
▲給食は配膳された状態で運ばれます。

この学校では、用務員さんもスゴイ!

子どもたちの教材だったり、移動用のベッドだったり、いろんなものを作ってくれるのだとか。

その作業室はまるでプロの工房のよう!いろんな工具がそろっていました。

市立養護学校
▲椅子が安定するように作られた下の台は、用務員さんの手作り。

看護師さんだってすごい!遠足や修学旅行にも同行

そして、忘れちゃいけない看護師さん。

今いらっしゃるのは4人だそうですが、普段の学校生活だけでなく、遠足や修学旅行などの行事にも同行します。細かな配慮と判断力が問われる、大変なお仕事です。

いざ学校見学へ!

まず入口で我々を出迎えてくれたのは、壁に掲示された学校の歴史と子どもたちの作品!

市立養護

市立養護

車イスでもスイスイらくらくの保健室

市立養護・保健室

市立養護・保健室
▲車いすごと乗れる体重計。

市立養護・保健室
▲病院でもおなじみ、加湿しながら消毒できる滅菌器。

気管切開をしているお子さんも在籍しているので、病院と同じように潔・不潔という考え方を取り入れ、衛生的な環境を保つことができるよう、配慮しています。
この辺りは職員もじゅうぶん気をつけなければいけないし、保護者の協力・理解が必要。

市立養護・保健室
▲保健室の窓側は、スロープでつながっていて、保護者の方がここまで車で来たり、救急車が乗り入れられるようになっています。

市立養護・救急セット

市立養護・酸素ボンベ
▲保健室出たところある救急用の救急カートと酸素ボンベ。共有のものとして数カ所に配置してあるほか、定期的に、お子さんに合わせた救急を想定した訓練を実施。

体育館と合同学習室、スロープだって広々

市立養護・体育館
▲舞台に行くためのスロープも広々!

体育館では定期的にサーキットを実施。お子さんの状態に合わせて場面設定をするので、ハードル、坂道、トンネルなどがあります。

市立養護学校
▲体育館からつながる合同学習室。ここで入学式や卒業式など、大きな集会などが行われます。

壁面には「はらぺこあおむし」の制作物。小さな作業でも、それを合わせると立派な作品に。

教室だって広々!お子さんひとりひとりに合わせて対応

市立養護
▲小学部の教室

市立養護
▲中学部の教室

市立養護・学習室
▲集中できるようにパーテーションで仕切られた学習室

市立養護
▲手押しの録音機「ステップ バイ ステップ」
連続で複数の音声を入れることができ、手押しで順番に再生することができます。給食のメニューもひとつひとつ録音できる
ので、発語のない子でも当番になれます。

市立養護
▲筒形の道具で視覚の誘導を促せるように工夫した筒状の道具。「見て」と言葉で伝えることができなくても、覗かせることで視線を誘導できる。

市立養護
▲抱っこで乗れる大きなブランコ

いろんなタイプのトイレでお子さんひとりひとりに対応

市立養護・トイレ
▲カーテンで仕切ることもできます。

市立養護
▲女子トイレ

市立養護
▲男子トイレ

もちろんおむつ替えベッドもありました。

朝の歌だって手づくり!?

市立養護
▲中学部の生徒と先生が作詞した歌を、朝の歌としてクラスの先生がギターで伴奏して、みんなで歌っていました。

昇降口からバス乗り場にかけても広々!

市立養護
▲昇降口前には歩行器(電動のおたすけくんがついていて、スイッチで動かせるものもあります)などがズラリ!

市立養護

バスの乗降は本格的なプラットホームで!

市立養護

市立養護
▲スロープがしっかりあり、乗り降りのしやすさ、安全面が徹底されている

家での生活を再現できる『せいかつの部屋』

開校当時からあり、一般的な家庭が再現されています。
学校で収穫したジャガイモやサツマイモを使って調理実習をすることもあります。

市立養護・せいかつの部屋

市立養護

作業療法士(OT)/理学療法士(PT)の先生がクラスの先生をサポート!『からだの部屋』

ひとりひとりにあった指導が受けられる『からだの部屋』は、天井が高く開放感があります。

市立養護・からだの部屋

市立養護
▲足漕ぎ車イスがいっぱい!(ゆかねこ興奮)

いろんなサイズが揃っていて、個人でつくるわけではなく共有しています。
公益社団法人かながわ福祉サービス振興会寄贈とのこと。

市立養護・からだの部屋

横須賀市立養護学校の基本情報

市立養護

〒239-0844 横須賀市岩戸5-6-4
TEL/ 046-849-6465・7368
FAX/ 046-849-6559
児童数/ 小学部32名、中学部10名(2016年度)
学区/ 横須賀市全域
対象/ 肢体不自由児

・看護師4名・理学療法士1名・作業療法士1名が常駐しています。
・スクールバス3台と借り上げタクシー1台が運行しています。

詳しくは学校HPで!(外部リンク)>>市立養護学校

教育相談や学校見学も随時受付!(外部リンク)>>市立養護学校 教育相談

sukasuka-ippo代表・五本木愛の視点

今回、市立養護学校の見学に伺い、校内の様子、お子さん達の様子、そして市立養護学校の方針など細かくお話を聞いてきました。

その中で、いちばん心に残ったのは「気づく力を身につけよう」という、今年の4月に教員の年間目標として掲げられた言葉でした。

市立養護学校は、たくさんの専門性の高い方々のチームワークでできている学校です。その中で「教員の専門性は?」という問いに、細かな専門用語を覚える、スキルを身に付ける、ということももちろん大切ですが、ベテランの先生でも新入の先生でも同じように取り組むことができ、そして最も重要なこと。それが「気づく力を身につけよう」なのだというお話を伺いました。

私はこれを聞いて、これこそ障害児教育、支援の原点であり、ここからのスタートがなければどんなに素晴らしい教育理念を掲げても無意味になってしまう!と強く思いました。

共に同じ時間を過ごす中で、その子の変化に気づき、成長に気づき、それを肌で感じることこそが大切なことなのだと。
それを、ベテランの先生でも新入の先生でも、同じように目標に掲げて子どもたちと向き合える学校。「素晴らしいな」と思いました。

そして、このような学校が市立として存在していることをとても誇らしく思います。是非、市内の小学校との交流や情報交換を活発に行い、多くを共有してもらいたいと心から思います。

ゆかねこの感想メモ

30年という年月を感じさせないほど綺麗で明るい校舎に、お子さんたちの作品や、思い出の写真などの展示物がとても大事に、かつセンス良く飾られていて、歩いていてあちこち目移りしてしまうほどでした。

それぞれの教室を通り、お子さんや先生の様子を見せてもらい、先ほど聞いた「気づき」の大切さを感じました。目と目を合わせたり、手を握ったり、一生懸命話す声に耳を傾けたり。お子さんも、それが伝わるとすごく嬉しそうなんですよね。

どの学校にも、それぞれ魅力があります。
だけど自らそこに近づいていかなければ、見えないことがたくさんあるのだと思います。

「久里浜特別支援教育総合研究所のように、やっていることを発信して、いいポイントをどんどん見えるようにしていけば、保護者からの理解も深まる。それは大事なことだと思います。ただ、子どもに向き合うところに集中して、なかなか発信するまでにいかないんですね」と、髙野先生。

今度の【学校へ行こう週間】では、近隣の高校のブラスバンド部が来て演奏してくれる、やまゆりコンサートも開催するとのこと。皆さん是非この機会に、足を運ばれてみてはいかがでしょうか。

 

取材日/ 2016.07.01
取材・文・写真/ 五本木愛・ゆかねこ・misa
編集/ takeshima satoko
情報監修/ 横須賀市立養護学校

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