横須賀市は、保育園・幼稚園の先生を対象に発達支援コーディネーター研修を実施している。
今回は、その研修のひとつ、横須賀市療育相談センター所長の広瀬宏之先生を講師に招いた講義『発達障害の理解と対応のコツ』を、関係機関の職員まで対象を広げた公開講座として2018.09.12、ヴェルクよこすか6階ホールにて開催したもので、当日会場に集まった保育園・幼稚園・学校・学童クラブ指導員・障害福祉サービス等事業所等の職員がこれを聴講した。
sukasuka-ippoでは、この講演会について主催の横須賀市こども青少年育成部と講師である広瀬先生に許可を得て、ダイジェスト記事にまとめた。
講師紹介|広瀬宏之氏
横須賀市療育相談センター所長
2007(平成19)年10月から横須賀市療育相談センターの立ち上げに準備室長として同センターの立ち上げに関わり、翌2008年に開所した同センターの所長に就き、現在に至る。
平成7年東京大学医学部医学科卒業l同附属病院小児科・千葉徳洲会病院小児科・東京大学大学院博士課程・国立成育医療センター発達心理科・フィラデルフィア小児病院児童精神科などを経て、横須賀市南健康福祉センター、世田谷区総合福祉センターなどで発達障害児の支援を行ってきた。
小児科専門医|小児神経科専門医|臨床神経生理学会専門医|医学博士
[公開講座配布資料参照]
平成30年度 横須賀市発達支援コーディネーター研修
[ 公開講座|基調講演 ] 発達障害の理解と対応のコツ
10人に1人と言われる発達障害
横須賀市では6000人!?地域全体で支援することの意義
人口の1割程度とされる発達障害。人口6万人の横須賀市においては、6000人がその対象となり、これを身近な例に置き換えると、35人の学級においては3-4人の発達障害の児童がいる計算になる。
実際に横須賀市療育相談センターができてから広瀬先生が支援をしてきた発達障害の児童は8年間で約3800人に上る。
しかし、6000人いると推測される対象者すべてを専門機関で診ることは現実的に難しく、これからは、保育園・幼稚園・教育現場を含む地域全体で支援していくことが大切になっていくというところから、広瀬先生の講演はスタートした。
発達の凸凹自体は障害ではない!?
発達障害を考えるうえで大切なのは「不適応」というキーワード
そもそも発達障害は何かというと、ひとつに発達の凸凹が挙げられる。そして、この発達の凸凹というのは、脳機能の発達の遅れや偏りであり、先天的なものであるという。
その程度や様態は、知的な遅れを伴うものからコミュニケーションの苦手まで含めて様々であるが、何年も前のカレンダーの曜日まで覚えている、電車の名前ならすべて覚えているというような特別な能力を含んでいることもある。
ただし、上記のような発達の凸凹自体がすなわち障害というのではない。
発達の凸凹という先天的な特性が、置かれた環境とミスマッチを起こした状態が「発達障害」であると広瀬先生は解説する。
・・・
環境とのミスマッチのわかりやすい例として広瀬先生が挙げたのは、国による文化の違い。
「例えば、列に並んだりすることが苦手な人が規律が重視される環境にいた場合、その特性が周囲とのミスマッチを引き起こしてしまうことがありますが、逆に、のんびりとしたマイペースの人が多い文化の中ではそれほど問題にならないかもしれません。
また、発達の凸凹が先天性のものであるのに対し、不適応というのは後天性のものであり、凸凹と環境の折り合いをつけることが支援のひとつのゴールになります。
そこで、まずは特性と環境の両方について、現時点でどう作用しているかの見立てをし、不適応を生み出している環境的な原因をいかに減らせるかを考えることが支援を考えるうえで大切になります」(広瀬先生)
自閉症→自閉スペクトラム症、学習障害→局限性学習症…など
障害の名称や分類は変化する!?今はまさに過渡期
障害の名称や分類は時代とともに変化しているが、ここ数年でも「自閉症」→「自閉スペクトラム症」、「学習障害」→「局限性学習症」など、診断名の見直しが進むなど、今はまさに過渡期にあるという。
以下の分類は、広瀬先生にご提供いただいた講演資料(2018.09現在)をまとめたものであるが、これまで不器用(ぶきっちょさん)とされてきたもののうち、学習に支障が出るような中枢神経系のものを発達性協調運動障害として支援の対象とするなど、新たな枠組みができていることにも注目したい。
知的発達症(MR)・精神遅滞・知的障害
遅れている領域|知的能力
特徴|
□ 全体的な知能の発達の遅れがある(IQ70以下)
□ 人口の1-3%。
□ IQ70‐85(境界域)にも注意が必要。
運動発達遅延
遅れている領域|運動能力
特徴|
□ 運動能力の発達の遅れがる。
□ 他を伴うことも珍しくない。
自閉スペクトラム症(ASD)・広汎性発達障害
遅れている領域|コミュニケーション能力
特徴|
□ 主な症状は
①コミュニケーションや社会性の発達遅滞。
②興味の偏り・こだわり・感覚過敏(感覚調整障害)。
□ 他に、言葉の遅れ、知的障害、多動・不注意、不器用、てんかん、視覚優位、優れた記憶力などを伴う。
□ 人口の2-3%。
注意欠如・多動症(ADHD)
遅れている領域|注意力・集中力
特徴|
□ 主な症状は、不注意と多動・衝動性。
□ 2種の薬物が効く場合がある。(更に1種類追加され、現在は3種類)
□ 人口の3-10%(この数字については、凸凹の状態を含めると10%となるが、不適応を生じているのは3%程度)
局限性学習症・学習障害(LD)
遅れている領域|狭義の学習能力
特徴|
□ 知的能力は標準化それ以上だが、「読み」「書き」「計算」など学習に必要な機能の一部に障害がある状態。
□「勉強ができない=学習障害」と捉えられがちだが、そうではなく、知的障害や他の発達障害の鑑別が必要。
□ 人口の0.5-2%。
発達性協調運動障害
遅れている領域|複数の運動の協調性
特徴|
□ ただの不器用ではなく、中枢神経系の障害。
□ 学習にも直結するため、的確な評価と支援が必要。
□ 人口の5%。
[広瀬先生作成の講演配布資料をサイト用に再構成|講演時の補足は( )にて追記]
発達障害の多くは「ミックスジュース」
病気の場合は、不調の原因がどこにあるかを考え、例えばインフルエンザならインフルエンザに対する治療、水ぼうそうなら水ぼうそうに対する治療をすることになるが、発達障害はそうではない。
「発達障害というのはそもそも原因が不明のため、検査をしてわかるようなものではありません。また、診察室ではおとなしいけれど、家では落ち着きがないというように、場所や時間によって、状態が変わることがあるので、状態を聞き取り、ゆるやかにざっくりと診断するのが一般的です」(広瀬先生)
また、発達障害の場合、診断がひとつであることは稀(まれ)で、複数の発達障害が絡みあっていることが多いため、「ミックスジュース」に例えられる。
また、その絡み合っている状態の中でも、とりわけトラウマやマルトリートメント(虐待を含む子どもへの不適切な対応)のような悪影響の部分が多く含まれている状態を苦味になぞらえて「青汁」と称されることもあるという。
「発達障害の場合、一度診断したらそれで終わりというものではありません。例えば、未就学児童は学習自体をする年齢にないので、「局限性学習症(学習障害)」のような診断はできませんよね。子どもの成長に合わせて発露する特性もあるので、診断も常にアップデートしていく必要があるんです」(広瀬先生)
診断は先生や周囲の大人にもできる!?
不適応を起こす前に凸凹の状態に気づき、注目することも「診断」
先述のとおり、発達障害は10人に1人の割合で存在するといわれる身近な障害であり、その程度も様々。
「発達の凸凹や偏りはあるけれど、幼少期であったり、ミスマッチが起きない適した環境下にいることで、不適応が生じていないケースもあるでしょう。その場合は、地域生活の中で、周囲が凸凹の状態を察知して、この子はこういう苦手なところ・良いところがあるという見立て(アセスメント)をし、関わり方を工夫することで不適応を起こしにくい環境を維持していくことができます。」(広瀬先生)
発達障害にほぼ必発する逆境体験にも注意が必要
主観的な「つらい」という気持ちに寄り添う
発達障害には、逆境体験がほぼ必発するという広瀬先生。
ここでいう逆境体験は、トラウマやマルトリートメント、虐待などのほか、「つらい」「うまくいかない」と思う主観的な気持ちも含まれるのだそう。
ここで大切なのは、そうした日常にある「うまくいかない」という気持ちにも寄り添うことだと広瀬先生は解説する。
・・・
対応のコツ|01
子どもとのコミュニケーションではキャッチボールが大切
実際に発達の凸凹がある子どもたちに対応するコツがいくつかある。
まず、第一に、子どもとのコミュニケーションについて考えるとき、以下の3つのポイントがある。
- 子どもを観察し、子どもの興味や関心、ペースに合わせる
- 言葉を交わすだけでは不十分。言葉のキャッチボールを意識する
- 言葉の意味以外の要素、つまり、声量やテンポ、間合いなどの語り口を工夫する
「おしゃべりを例にとると、言葉の意味が3割、それ以外の語り口で7割が伝わると言われています。だから、この講義の内容も録音して聞いたらたぶん眠くなってすぐに寝ちゃうはずです。
また、子どもと仲良くなりたかったら、子どもが興味をもっていることを一緒にやってみるのが一番です。例えば、一緒に床の穴をのぞいてみたり、床に貼られたテープをはがしてみたり…。そうすれば、すぐに子どもとお友だちになれるはずです。」(広瀬先生)
対応のコツ|02
発達障害の子は、刺激の重みづけが苦手。刺激は少なめに!
さまざまな刺激に脳も心も反応してしまう発達障害の子どもたち。
例えば、時間割・日直当番・持ち物・宿題・予定など多くの情報が集まる学校の黒板周りも、発達障害の子どもにとっては刺激が多すぎて、混乱してしまうことがあるという。
「発達障害の子どもは刺激の重みづけができないので、刺激はなるべく少なめにするとよいです。刺激が多いときは、メリハリをつけて大切な刺激のありかを明確に示すことも有効です。
例えば、先生が授業の合間に「ここはテストに出ますよ!」と言うと、生徒はパッと注目しますよね。」(広瀬先生)
対応のコツ|03
「ちゃんと」「ちょっと」「あとで」はわかりにくい!?具体的な指示を意識して
「日本語はあいまいな言語なので、例えば「ちょっと待って!」というのも、発達障害の子どもにとっては難しい指示になります。例えば、私たちは日常的に病院の待合室では30分待つことは自然に受け入れられても、銀行で30分待たされたらちょっとイライラしちゃうというように、同じ30分でも感じ方が違いますよね。発達障害の子どもは、その場の状況で「ちょっと」がどのくらいの待ち時間なのかを推測することが苦手です。」(広瀬先生)
その他に、「できるだけ」という曖昧な言い方も、8時までは頑張ろうという時間的な期限や、8割やればよいという達成度を明確な数字で指示をしたほうが伝わるのだという。
また、怒って「どうしてできないの?」と問い詰めてくる相手に、理由を延々並べて、相手の怒りに油を注いでしまうこともある。これは、発達障害の子どもに比喩が通じないために起こるミスマッチの例で、他にも「なんべん言えばわかるの?」というような言い方も、発達障害の子どもにはうまく伝わらないことが多いという。
「こういう場合の対応のコツは、わかりやすく、見通しのよい環境にすることが大切で、言葉だけの指示、耳からの情報だけではなく、目でも見えるようにするなど、指示の仕方を工夫するとよいです。」(広瀬先生)
また失敗に対しては、叱責するよりも、具体的なアドバイスをするとよいと広瀬先生はいう。
「失敗体験をできるだけ減らせるように、『○○しちゃダメでしょ!』ではなく、『○○しないで、こうすると格好良いよ!』というプラスの言葉かけをすることで、成功体験を増やすことができるでしょう。」(広瀬先生)
対応のコツ|04
感覚過敏はわがままではない!?特訓はほぼ有害無益
自閉スペクトラムのお子さんの多くには感覚過敏、あるいは感覚鈍磨が見られ、そのピークは3-5歳と言われている。
感覚過敏の例は
聴覚|ドライヤー・掃除機・ジェットタオルなどの音
味覚|偏食 ・味・温度・歯触り・見た目・軟らかさ
触覚|洋服のタグ・長ズボン・ジーンズ・毛布・手が濡れる・砂を触る・顔に水がかかる・洗髪・散髪
視覚|特定の色・太陽の光をまぶしがる
聴覚|タバコ・香水・食事の匂い・ごみの匂い・体臭
など、多岐にわたる。子どもが何かパニックを起こしているときの対応のコツとして、広瀬先生は以下の3点をあげる。
- まずは感覚過敏を引き起こしている原因が周りにないかを探す。
- そして苦手な感覚は、わがままとは違うので、ここで支援者が怒ってしまわないようにする。
- ほとんどの場合、これらの苦手な感覚は「特訓」で治るものではないので、感覚過敏の原因を遠ざけるなど、環境を整える。
対応のコツ|05
子どものパニックに大人が巻き込まれない!
子どもがパニックを起こしているときに、大人はどうしたらよいだろう。
広瀬先生は、パニックを起こして大声を出している子どもに対して、大人が同じように大声で鎮めようとしている光景を例にとり、これを逆効果としたうえで、子どもを鎮める前にまずは、大人自身が冷静になることが必要だと説く。
有効な対応として
- 原因を取り除く
- 場所を変える
- 気持ちをそらす
- ひたすら待つ
の4つを挙げる。
例えば、子どもが叫んで困るといういうケースでも親御さんに状況をさらに聞いてみると、
- 騒いでいる場所は自室
- 放っておけば10分ほどで収まる
- 隣家を含め、周りの迷惑にはならない
とのこと。広瀬先生は相談者に対して、周囲に迷惑がかからないのであれば、叫ぶという行為で自分の気持ちを自己鎮火していることもひとつの成功体験になるので、そのままで良いのではないかと見解を示したという。
「大事なことは大人の側の気持ちのコントロールと、子どもの行動のシュミレーション、つまり子どもの行動を観察して冷静に対応することです。」(広瀬先生)
重なる部分を丁寧に扱って膨らませていくことが関わりの原則
発達障害の子どもとの関わりのコツとして、広瀬先生はジョージ・ワシントン大学の精神医学・行動科学・小児科部門の臨床教授であるグリーンスパン(Greenspan=Stanley I.)の「フロアタイム」を例に説明した。
フロアタイムの「フロア」は「床」を意味し、大人が以下の方法で、子どもの発達段階と個人差に応じたコミュニケーションや人間関係の可能性を伸ばすアプローチである。
- 子どもの目線で、子どものやりたいことを、子どもと一緒にやる
- 子どもとちゃんと友だちになる
- 子どもに付き合う
オーダーメイドが基本の支援、まずは目標を確認
様々な支援内容や300ぐらいあるといわれている支援技法の中から、ひとりひとりの状況に合わせてオーダーメイドで支援を組み立て、日常生活に生かす取り組みが必要だと広瀬先生は言う。
支援の目標は、いろいろあるが代表的なものは以下の通り。
支援の目標.01|発達の凸凹の解消
これまで治療はできないとされていた自閉スペクトラム症の初の治療薬として臨床試験が進むオキシトシンについて、現時点(2018.09現在)でその効果は限定的であり、発達の凸凹を解消するための研究の成果が期待されている。
支援の目標.02|不適応の改善・生きづらさの改善・穏やかな毎日
どういう発達の凸凹があるかを知り、ミスマッチが起きないように環境を整えたり、対応を工夫することで生きづらさの改善・穏やかな毎日を送れるよう支援する。
支援の目標.03|専門機関からの地域移行・共生社会・インクルージョン
障害者が地域社会の中で生活するための環境を整え、専門機関から地域に移行する取り組み。
支援の目標.04|セルフ・サポート・システムの構築
障害者自身が自分の凸凹とその対処法を身に付けて、環境との不適合を減らしていく。
目標に対する支援のアプローチは大きく分類して以下の3つ
医学モデル|原因を見つけて治療せしめる→専門家にお任せ
療育モデル|障害を見つけて専門機関で訓練する→療育機関にお任せ
生活モデル|日々の生活がスムーズになるようにする→当事者主体の共同作業
そのうち、3つめの『生活モデル』における共同作業について、広瀬先生はさらに解説を続ける。
成功体験を蓄積することで必要な時に自分からSOSを出せるようになる
「本当に必要な時にSOSが出せるようになることが大事」というのは就労支援の先生の多くが言われることのひとつ。SOSを自分から出せるようにするために、以下のようなプロセスがあるという。
01.
周囲の大人が子どものSOSをキャッチして、「共同作業」がスタート
02.
子どもの特性を分析し、適切な支援を開始する。
03.
子どもは支援を受けながら、「できた!」という成功体験を蓄積する[発達の原動力となる]
04.
セルフエスティーム[自信・自尊心]が上がり、特性を含めた自己理解[例|自分は人参が苦手!]が進む
05.
自己理解に沿った適切な対処行動を自分でもできるようになる[例|キライな人参を避ける]
06.
支援が最小限で済むようになる[支援の自給自足]
07.
本当に必要な時には躊躇なくSOSが出せるようになる
対処行動という視点|どんな行動でも対処の工夫として一理ある。
キーワードは「そんな時、どうしていますか?」
リストカット、自殺企図など、一般的には好ましくない問題行動ととられがちなものもを含め、全ての行動には対処行動という意味合いが含まれている。
行動に対して、支援者と相談者が一緒に問題となることとその対処行動を眺める構図(三項関係)をつくることが大切で、「ああしなさい、こうしなさい」というのではなく、「そんな時、どうしているのか」とその対処行動を聞くことが有効だと広瀬先生は言い、その具体的なやりとりの例を2つ挙げた。
case.01
学生「空気が読めなくてこまっている」
支援者「そんな時、どうしてるの?」
学生「学級委員の○○君を見て同じように行動すると、うまくいく」
case.02
子ども「野菜が食べられない」
先生「じゃあ、どうしてるの?」
子ども「お茶で流し込んだり、鼻をつまんで食べたりしてる」
発達支援にはチームアプローチが必要
対話をしながらお互いに変わりゆくことが他職種連携のコツ
他職種と連携して発達支援を進めていくために、まずは「自分は相手のことを知らない、自分も相手に知られていない」という共通認識をもつことが前提になるという。
- 対話をしながら、チーム全体が変わりゆく
- 地域に何があって、どう使えるかという地域資源のアセスメントも必須
「個人情報についても、連携の目的を当事者に伝えて、上手に許可をとり、当事者も含めた共同作業にすることが理想です。この際、守秘を優先して子どもの生活の問題にタッチできないとなると本末転倒になってしまうので注意が必要です。」(広瀬先生)
障害受容から特性理解へ
良いとこ探しと本人だけでなく、家族、支援者の成功体験の蓄積が大切
発達障害については、育て方に原因があるわけではないという理解は進んできているが、それでも多くの母親が罪悪感を持っているのも事実。そうした心情に寄り添う必要があり、不用意に親の育て方を突くことのないようにと広瀬先生は忠告する。
「障害受容という言葉についても考える必要があって、『障害』という言葉には依然、受容しにくい雰囲気が強く、『受容』という言葉にも『白黒はっきりしなさい』と迫るニュアンスがあります。当事者とその家族、支援者が共同作業で発達支援を進めるためには、受け入れやすい表現やなじみやすい伝え方で話をすることが必要です」
特性理解・自己理解を進めるためには、「良いとこ探し」と「成功体験の蓄積」が不可欠で、特に成功体験については本人のみならず、母親・家族、そして支援者の成功体験も重要になってくるという。
支援で大切なことは「がっかり」を支えること
最後に、広瀬先生は会場に向けて「支援はうまくいかないことが当たり前、その不確実性・がっかりを支えることが我々支援者の仕事です。そして、日々、お子さんと向き合い、うまくいかないことに直面しているお母さんの成功体験を増やしていくことも大事な仕事です。」というメッセージで講演を締めくくった。
・・・
広瀬宏之先生の最新刊|
『うちの子、発達障害かも?と思ったら最初に読む本』
発達支援のコツが満載の一冊
その他、講演の中で紹介された広瀬先生おすすめの書籍はこちら
一般向けの講演のテープを起こしたもの。わかりやすくておすすめ
子どもの行動をどう分類し、どう関わるかをわかりやすく解説
平岩幹男先生の本|自閉症・発達障害をわかりやすく解説
平岩幹男先生の本|ハイタッチをする、うしろからそっと抱きかかえるなど、日常に活かせる関わりのコツを紹介
支援者向け|発達障害の年齢別の症例・事例集
支援者向け|支援の実例集
フロアタイムに代表されるDIR治療プログラムを解説|翻訳は広瀬先生
ADHDの子どもを育む
・・・
2018.09.17
@ヴェルクよこすか
聴講|五本木愛・yoshimi (sukasuka-kidsスタッフ)
取材・写真・文・構成|takeshima satoko

sukasuka-ippo

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